ここは南国の地である。

休暇を利用して博士を除く009と003、001、007は遊びにやって来ていた。
006も当初は行く予定だったのだが、店に宴会の予定が入ってしまい泣く泣く断念した。

今日は午前中に海で遊び、今は001と007はお昼寝中である。

昼下がりの気だるい空気が漂う。

開け放した窓からは潮風の香り。


スリーは窓際のラタンの椅子に腰掛けて手紙を書いていたところだった。

「ねえ、ジョーもお昼寝するんじゃなかったの?」

昼食後、僕も寝るよと大あくびをしていたナインであった。

「うん。まぁ、そのつもりだったけど」

スリーの対面に腰掛ける。

「気が変わった」

スリーは小さく首を傾げると、だったらちょっと出かけましょうと立ち上がった。

「出かける?」

ナインが眉を寄せる。
なんだか悪い予感がする。最近のナインの予感は当たるのだ。

「ええ。ボードウォークにお店が並んでいたの。ちょっと覗いたりしたいわ。ね。つきあって」
「ふうん・・・いいけど」
「良かった」

スリーは満面の笑みで、さあ早く着替えてとナインの手を引いた。

「ちょっと待て。着替える、って何に」
「水着に決まってるでしょ」
「買い物だろ?このままでいいじゃないか」
「あら、駄目よ。海で遊ぶのも込みなんだから」
「込みって・・・買ったものはどうするんだ」
「そんなの、ジョーが持つのに決まってるでしょ」
「なんだそれ」
「いいから、早く」

スリーが甘えるようにナインの腕に巻きついた。
しかし、ナインの渋面は崩れない。

「僕はいいよ。きみ一人で行ってくれ。ああ、なんだか急に眠くなった」

大きく欠伸をしてみせる。
何しろ、「みんなと一緒」だったから、あの水着を着ても耐えられたのだ。二人っきりで同じ水着など着てみせるなんて到底、無理な話である。
お揃いの、しかもピンクの花柄の水着なぞ――僕たちはバカップルですと宣伝しているようなものだ。
自分たちはバカップルなどではない。
ふつうの、ちょっと仲良しのカップルなのだ。
あくまでもそれだけなのだ。
ちょっと仲良しのふつうのカップルは、お揃いのピンクの花柄の水着なんて着たりはしない。
だから、自分たちも着ないのだ。

「もう・・・ジョーったら」

断固として行く気のないナインにスリーは頬を膨らませた。
しかし、ナインはスリーの頬をつつくよりこの場を動かないほうを優先した。

「・・・ジョーは私と一緒にいくのが嫌なのね」
「ああ、嫌だね」

断固としていくものか。

「私はジョーと一緒がいいのに」

聞こえない、聞こえない。

「ジョーと一緒にいきたいのに」

聞こえ・・・

「・・・えっ?」

思わずスリーの顔を見てしまった。

「一緒にいくのがいい、って言ったのはジョーでしょう?」
「そ・・・」

それはこういう意味じゃない。断じて違う!

「一緒にいってくれないの?」
「う・・・」

しかし。

意味が違う、使い方が違う、と思ってはいるものの、つい――

「い・・・一緒がいいに決まってるだろ」

そう言ってしまった自分が悲しいナインだった。