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「ただの島村ジョー」

 

 

 

今日はただの島村ジョー。


ナインが自らをそう呼ぶのは珍しい。
彼はいつだって、自他共に認める正義の戦士ゼロゼロナインなのだから。
彼のなかでそれは普通のことであり、従って、彼の毎日には自身に費やす時間などないのかもしれない。
あったとしても、それはレースくらいだろうし、その時の彼の名はハリケーンジョーなのだ。
島村ジョーではない。


けれども今は島村ジョーである。
それ以上でも以下でもない。

スリーは延々とそれについて考えていた。
彼が最もシンプルな「島村ジョー」である時。
それはいったいどんな時なのだろうか。

もちろん、こうして一緒にいるときに決まっている。

スリーにとって、自分がフランソワーズであるのと同じように、彼がジョーであるのはとても大切なことであった。
特に、こうして繋がっている時は。


ナインの律動はいつも優しい。
スリーの様子に気を付けながら合わせてくれる。
だから、スリーは安心して身を委ねているのだけれど。

ふと、思った。

いま「正義の戦士ゼロゼロナイン」に戻ったらどうなるのかしら…と。

そんなことを考えるような余裕が出てきたのは、慣れてきたからなのだろうか。
あるいは、もの足りないからなのだろうか。
スリーは気付いていない。
気付いていないまま、あっけらかんと疑問を口にした。

「ねぇ、ジョー」
「なんだ」
「いま加速装置をうっかり噛んだら大変よね?」
「…………え?」

ナインの動きが止まる。

「私、どうなっちゃうのかしら」
「どう、って……」

知らない。

が、良くないことが起こるだろう。たぶん。

「噛まないよ」
「そうよね」

ほっとしたようにスリーは言ったけれど、ナインの胸には疑問が残った。
いったい何故、彼女はこんなことを口にしたのか。

いまこの状況で。


と。


ナインの体が熱くなった。

こんなんじゃ満足できないという意味か!?
ゆっくり過ぎると。
足りないと。

揺らすのを依然としてやめたまま、ナインはじっとスリーを見た。

頬が紅潮しているし、さっきから可愛い声をあげている。
いつもと何も変わらない。
ように見える。

が、

あるいは……?

ナインはぐっと体を沈めた。
本気を出せばこんなもんじゃない。
が、しかし。
まだ早いと判断していたし、実際、いまもそう思っている。

が。

もしも本当にスリーが「足りない」と思っているのだとしたら?

「……くっ」

どうする。

考えあぐねている間に無意識に腰を引いていた。
そしてすぐに沈める。

リズムが変わった。


「あ、いや……ん、ジョー、まっ……て」

体を震わせ、驚いたように目を開き目尻に涙の粒が盛り上がるスリー。

「あ、……すまない」

「ううん……平気……」

いや、だめだろう。
スリーはまだそんなつもりじゃなかったのだ。
加速装置云々は、なんだかよくわからないが全く関係ない話題だったのだろう。

「いや……ごめん」

額にキスをし、ナインは己を抑えた。

ゆっくりいこう。


「ただの島村ジョー」でいる時間は、短くはない。
フランソワーズと一緒にいる限り。

 

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