こちらはオトナ部屋です!!
御注意ください!
「バレンタインな夜」
「ジョー、大丈夫よ…自分で脱ぐわ」 ……え。 そっと肩を押され、ナインが鼻先を埋めていた彼女の首筋から離れるとスリーは自分からニットを脱ごうとしているところだった。 「う…うん」 珍しい。が、まあそういうのもそろそろあってもおかしくはないと自分に言い聞かせ、ナインは自分のシャツを脱ぎ捨てた。 が、しかし。 いまひとつ釈然としない。 ナインは訝しみながら、そっとスリーを観察しつつ己のアンダーシャツを脱ぎ上半身裸になった。 で、スリーはというと… ニットの下に着ていたキャミソールは既に肩から滑らせ、真っ白いレースに縁取られたブラジャーが露わになっている。 が、しかし。 後ろに手を回しいままさにホックを外そうとしている…のは、想定外もいいところだった。 「ちょ、ちょっと待った」 そう言っている間に背中のホックが外れたのか、ブラジャーの紐が肩から滑り落ちそうに緩む。 うわわわわ。 「ちょ、ちょっと待てって!」 ナインは思わずスリーの両胸をホールドし、下着が外れて露わになるのを阻止した。 「ジョー?」 どうかしただって!? 「フランソワーズ、きみは…っ」 すると、ずっと俯いていたスリーが顔を上げた。 「だ、だって…バレンタインだし、…だから私…」 ** それは電車内の誰かの会話だったか、あるいはテレビドラマの台詞だったか。記憶は定かではない。 ――自分から積極的に脱ぐとか、たまにはしなくちゃね。 飽きられる。 ナインと肌を合わせるのはいつになっても恥ずかしくて、何をどうしたらいいのかも未だによくわからない。 ――たまには自分から… たまには自分から… ** いつかスリーがもっと積極的になってくれたらなあ。 そう思わないこともなかった。 が、しかし。 それが現実になって嬉しいのかどうか…というと、それは別問題だった。 ** 「フランソワーズ」 ナインは最初、いったいどうしたんだ何があったと問い詰めるつもりだった。 「フランソワーズ。その…あの、さ」 彼女の胸を覆っているものがずれないようにしながら、ナインは言葉を選ぶ。 「うん。その。あまり、僕の楽しみを奪わないでくれる?」 真からびっくりしたようなスリーの瞳。既に悲壮な決意は無い。あるのは素直でまっすぐないつもの瞳である。 「そうなんだ。今まで恥ずかしいから言わなかったけど」 スリーが恥ずかしそうに呟き、同時に頬が染まった。 「うん。嬉しいよ」 そう言うとナインはスリーにくちづけた。 そう、自分から服を脱ぐスリーなんて見たくない。 そんなスリーなんて知らない。 知りたくない。 積極的なスリーだったらいい。が、それはあくまでも幻想でいい。 それはおそらく、彼女を支配していたいという非常に自分勝手な支配欲だろう。 ナインの頭をそんな思いがよぎった。 が、 彼女の胸に唇を這わせた時、小さく声を上げた彼女が愛しくてどうでもよくなった。 自分勝手な愛情。支配欲。 いいじゃないか、それで。 なぜなら彼女は自分しか知らない。未来永劫。 ずっとずっと僕しか知らないで生きていくのだから―― ** ** 「あのね、ジョー」 ナインの腕のなかで丸くなっていたスリーが小さく言った。 「うん?」 そんなの。
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そう、確かに互いに自分の衣服を脱げば時間の短縮になるし、何よりらくちんだ。
「え、おい」
ちょっと待て。
それはいい、想定内だ。
「…なに?」
「なにって、…」
「…っ!!」
「どうかしたの?」
どうかしたのかって、それはそっちのほうじゃないかっ。
が、内容だけは克明に覚えている。ショックだったからだ。
――やあね、なんでも彼任せにしているお人形状態なんて、すぐ飽きられちゃうわよ。
彼任せのお人形状態。
心当たりがあった。
だから、いつだって彼任せだったし、それでいいよと優しく言われてもいた。
だがしかし。
それはナインの優しい嘘だったとしたら?
もうとっくにそういう彼任せのお人形に彼が飽きていたとしたら?
そう、そうだ。
それは事実である。
ナインが好きなスリーは、いつだって恥ずかしそうでいつまでたってもこういう行為に慣れてくれないスリーなのだ。
否、確かにそれは幻想だ。
どんなに清楚で可憐な乙女であっても、いつかは慣れてゆく。それが普通だろう。
だが、いつかそういう風になっていくとしても、今日の今のような感じではないだろう。
よくわからないけれど、ともかく違うということはわかった。
もしも自ら脱ぐようになったとしても、それはもっとお互いに楽しくてわくわくする雰囲気のはずで
…こんな悲壮な決意の瞳のはずはない。
だが。
スリーの顔を見て、力が抜けた。
ひとつ息をつくと、そのままそうっとスリーを押し倒した。
「え…?」
「ええと、その。つまり。こういう時、一枚ずつ脱がせていくのは楽しいというか…」
「えっ?そうなの?」
「え…じゃあ、ジョーはいま凄く残念なの?」
「うん。そうなるね。こうして殆んど脱いじゃってるし」
「やだ、どうしよう。私そんなつもりじゃなくて…ごめんなさい、ジョー」
「うん。わかってくれたらいいよ。でも、もうあとは僕にやらせてもらえるかな」
「ん…ジョーが嬉しいなら…」
そのまま、首筋から肩に唇を滑らせ、胸元に顔を埋めた。
こういう行為に積極的になるスリーなど、たぶん自分は受け入れられない。
その支配欲を彼女が知った時、どう思われるだろうか。
誰かと比べられたりしない、比べさせない。
「ひとつお願いがあるんだけど…」
「なに?」
「あのね、その…私もジョーを脱がせるの、やってみたいの」
「…うん?」
「ジョーがしてるの楽しそうだったから、私もやってみたいな、って…だめかしら」
フランソワーズが僕の服を脱がす?
「いいよ。この次な」
なんだか凄く楽しそうだ。
スリーの積極性がこういう感じなら大歓迎なナインだった。
ただし、この次というのがいったいいつなのか…は未定である。