こちらはオトナ部屋です!!
御注意ください!
「いい?今日はほんっとうに何にもしちゃ駄目よ?ジョーの誕生日なんだから」 ベッドの上で正座して――なんと二人ともだ――ナインの唇にひとさしゆびをつきつけスリーが確認をした。 「う、うん――わかった」 ナインの声音を真似して言うスリーにナインはしぶしぶ頷いた。 「わかったよ。僕からは何もしない」 嬉しそうに言うスリーはしみじみと可愛いのだけれど、ナインは一抹の不安を隠せなかった。 いったいスリーは何をどうするつもりなのか。 ナインはそっと考察してみた。 フランソワーズが上に乗ってたな。 未遂ではあるが、ともかくそういう思惑だったようだ。 いや。違ったかも。 ……? しかし確信はなかった。 で? いや覚えていない。 ナインは内心腕組みした。 そう、おそらくスリーはそれを不満に思っていて…今夜は自分が主導権を握るとそういうことなのだろう。 ならば、 好きにさせるさ。どうせ途中でわけがわからなくなって困って頓挫するだろう。 そう楽観的な結論に達し、心理的に余裕に構えていたナインだった。 *** 「え、ちょ…フランソワーズ?」 スリーは一生懸命であった。 が、 手加減というものがあるだろう……っ? スリーは一生懸命なのである。それは物凄く熱心であり物凄くストレートであり。 そう――ナインが思う「普通の流れ」ならばこうだ。 恋人が彼のものを攻めた場合、それは互いにコミュニケーションを取りながら、我慢の限界を探り、良い頃合に繋がるというもの。 がしかし。 今ナインが受けているものは、まさに拷問に等しかった。 おそらくスリーの頭にあるのは、ナインを気持ちよくさせたいという一点なのだから。 「えっと……こう…かな?」 「っ!」 ナインは喉の奥で変な音を立てた。が、スリーには届いていないようで「こうかな?」が続いている。 だ、駄目だ…これ以上は… ナインが観念し理性を手放すかと泣き笑いな気持ちで思った時、妙にのほほんとした声がかけられた。 「ねえジョー。何か出てるんだけど」 だいじょうぶじゃないっ 言葉にならない声がナインから発せられる。 それは先走りと言ってだな――って、ああ、教えてなかった……っ 悔やんでも後の祭りである。 が。 そこでナインに少し意地悪な気持ちが生まれた。 「実は大丈夫じゃないんだよフランソワーズ」 スリーがはっとしたようにこちらを見つめる。 「く……そうなんだ……」 スリーの視線がそちらに戻る。 「どうしたらいいの?」 いや、言ったらなんだか変態ぽくないか? 一瞬冷静になるナインである。 が、 「これをどうしたらいいの?」 と先走りを躊躇なく指先で掬い取るスリーに彼の限界は近かった。 「――舐めてもらうと治るんだ」 静寂が訪れた。 ナインは激しく後悔した。 無言の時間が怖い。 そしてその無言無反応の時間はほんの数秒だろうけれど、今のナインにとって気持ちが挫けるには十分すぎる時間であった。 「いや、やっぱり」 何でもない、今のは嘘で――と言おうとした瞬間だった。 「――は……っ」 ナインは温かな口腔内に迎えられていたのだった。 *** 二度目の責め苦到来。 「くっ、ふ、フランソワーズっ、ちょ、……っ」 待ってくれ。 いったいなんだそれ。きみ、初めてだよな? 初めてだよね? いや、初めてに決まってるんだけど! まるでキスするみたいに絡みつくスリーの舌がナインの限界を教えていた。 なんだこれ。初めてなのにまさかの上手かっ ここでもう出してしまおうか。 「ジョー、どうかしら?これで治りそう?」 ふっと彼を解放しスリーがこちらを向いたのだった。 「いや、まだだけど――待って」 もう限界だから。 じゅうぶん気持ちよくなったから。 だから―― ナインはスリーを抱き締めると彼女の膝の間に身体を割り込ませていた。
2016/12/30up(5/16初出)
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「本当に?3月9日みたいに途中から、僕もう無理とか言うのはナシよ?」
「うふ。絶対よ」
「……」
じっと前髪の奥から探るようにスリーを見る。
いったい彼女が何を画策し実行に移そうとしているのかは知る由もないのであるが――現時点では不安しかない。
もちろん、誕生日ディナーを振舞われ、食後にケーキも食べた二人っきりのバースデーはとても楽しく満足のいくものであったが
その後のこの状況は果たしてこれから何が起ころうとしているのか。
否、当然ナインにはわかっている――というより、男性ならばわかるだろう。
何しろここはナインの部屋であるしナインの寝室なのだから。
深夜であり、ベッドの上に恋人と二人でいるのだ。それも誕生日の夜に。とくれば、答えはひとつしかないだろう。
――が。
嬉しいけれど不安なのである。
彼女も言及していたが、どうやら3月9日のやり直し――のようなのである。
そして3月9日の夜に何があったのかといえば。
確か服を脱がされて――
覚えているのはいつものように自分がリードして事が終わったということだった。
そしてその時は、僕のバースデーなんだから僕の好きにさせてもらうよと言ってしまえばいい。
「しーっ、黙って」
「しかしっ……くっ」
そう。それは認めよう。
それがナインにとってはとてつもない責め苦であるということに気付いていない。
なにしろ、ちらともこちらを見ない。自分の手元に意識を集中しているのだ。
何度ナインは「ギブっ」とシーツを叩きたくなったことか。あるいは何度、九九を暗誦したことか。
ちょっとでも気を抜くと大変なことになってしまう。そんな失態を彼女に見せるわけにはいかなかった。
否、見せてもいいはずである。普通なら。
それならば互いに気持ちよくなり我慢するなどという恋人同士においてはありえない状況を作りはしないだろう。
しかも当のスリーには悪意のかけらもないのだから性質が悪い。
「っえ!?」
「ぬるぬるしてるんだけど、これ…大丈夫?」
当然それは「意地悪」な範疇ではないのだが、スリーにとっては「意地悪」になるであろう。
しかしここまで耐えたのだ。このくらいのご褒美は貰ってもいいだろう。何しろ今日は誕生日なのだから。
「えっ、そうなの?」
その瞳に見られるとますますナインは張り詰めた。
「具合悪そうよ、大丈夫?」
「うん…少し。いや…だいぶ具合が悪いんだ」
「え、気持ちよくない?」
「いや、そんなことはない。気持ちはいいよ。大丈夫だ」
「良かった。私にできることなら何でも言って」
「そうだな。ひとつだけ僕を助けることができるのだが」
「ええ、なあに、ジョー」
「しかし君にできるかどうか」
「難しいことなの?」
「うむ……」
「平気よ。ジョーの具合がよくなるのなら。それに今日はジョーの誕生日なんだし」
「そうだな。いま、何か出ているだろう?」
「ええ」
「それを」
「それを?」
やはり思っているのと言ってみるのは違う。
声にすると変態行為を強要しているようにしか聞こえないのはどうしてだろうか。
そしてそんな変態行為をしろと言う彼氏を彼女はどう思っただろうか。
嫌よ変態気持ち悪い――と思っただろうか。
ナインがそんなことを要求するなんてと思い切り退いてしまっただろうか。
まあやらないだろうと思って意地悪な気持ちで放った言葉だった。
しかしすんなり素直に従ったスリーは、今度は先程よりいっそう研究熱心にナインを攻めている。
もちろん彼女にそんな意識はなかっただろう。
スリーはいつだって一生懸命なのだ。初めてのことなら尚更に。
いやしかし。さすがにいきなりそれは――とナインが殆どやけくそになってきたその時