「私の次に好きなのってパンケーキなの?」
「うん」
スリーはまじまじとナインを見た。
このひとの基準は一体なんなのだろうと思いながら。
「好き」とか「嫌い」とかのカテゴリーはもうちょっと細かく分かれているものではなかろうか。
ナインのように人物や食べ物が同じように並ぶというのはいかがなものだろう。
「じゃあ、コーヒーは何番目?」
「――前に言っただろ」
確かに。
しかし、だとすれば彼の中でスリーとコーヒーは確か同列だったはず――
「……私とコーヒーとどちらが好き?」
「えっ?」
ナインが驚いてスリーを見る。見返すスリーの瞳は真剣だ。
いきなり二者択一を求められ、ナインは黙り込んだ。
そんな風に悩むことなのかと思うと、スリーは落胆した。所詮、彼にとって自分の存在などそんな程度であると知らされるのは辛かった。
ナインが毎朝ギルモア邸にコーヒーを飲みにくるのは、スリーの淹れたコーヒーが好きだから。
ただそれだけなのだと知っていたけれど、もしかしたらそれだけの理由ではないかもしれないとちょっぴり期待もしていたのだ。
が、それは見果てぬ夢だとわかってしまった。自分はコーヒーに負けたのだ。
「僕の中で、フランソワーズの淹れたコーヒーとコーヒーを淹れるフランソワーズはセットだから決められないな」
――ん?
意味を図りかね、スリーがナインをきょとんと見ると、何故かナインの頬が少し染まった。
「だから、――ああもう」
いい加減、わかれよ――と言う代わりに、ナインはスリーを抱き締めた。
そういう鈍さもまた格別なのだけれど、それは秘密。