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「誕生日の翌朝」
新ゼロです。
フランソワーズ誕生日2014「ふつうの誕生日」の続きです。

 

 

 

夢を見た。

フランソワーズと繋がっている夢だ。

ああ、いやだな。
昨夜の我慢が祟っているのだろうか。
ティーンエイジャーじゃあるまいし。
これはつまり、あれだ。成人男子の健康の証の朝のアレ。トイレに行けば元通りの。
……とはいえ。
それ関連でこういう夢を見るなんて、やっぱり欲求不満なのだろうなぁ。
僕は半分覚醒しつつそんなことを考えていた。
そのせいか、硬さはますます増すばかりで萎えることはない。

おかしいな。
いくらなんでもそんなには。

しかし。

なんだかいつもと様子が違う。
なんていうか、そう……ちょっといい感じなのだ。
何かに包まれているようななんとも言えない感じ。
いや、包まれているのは下着になんだけど。そのはずなんだけど。

おっかしいな。

と、少し腰を捻ったら、何故か軽く締めあげられ不覚にも声が出てしまった。

いったい、なんだ?

いまやすっかり覚醒した僕は警戒しつつ目を開けた。


「あ。おはよう、ジョー」
「う。お、はよう、フランソワーズ……何してるんだい?」
「うふ。みつかっちゃった」

うふ、じゃないだろ。

フランソワーズは朝から上機嫌だった。
頬を染めて恥ずかしそうにこちらを見ている。

「ね。ちょっと動いてもいい?」
「……そりゃ、まあ……」

フランソワーズはおずおずと動き出す。が、かなりじれったい。
しかし、

「ジョーは動いちゃだめ」

はいはい。

いや、それにしても。
この前、これで怒っていたのはどこの誰だったっけ?

忘れてるのかな。

ならば、いま一度言おう。

 

勝手に挿れるなんて、酷いよフランソワーズ。

 

 

***

***

 

 

その日の朝、私は幸せだった。

お誕生日のプレゼントにジョーにねだった彼の腕まくら。
ジョーは、そんなのでいいのって不思議そうな顔をしていたけれど、私はとても嬉しかった。
大事そうに彼の腕に抱かれて眠った誕生日。
それはまるで――産まれたての赤ん坊の時に両親に大切に抱かれた時と同じだったろう。もちろん、その時の記憶はないけれど。
でも私は確信に似たものを感じていた。きっと、そうだったに違いないと。
そのくらいジョーの腕のなかは安心できたし、私は本当に何も不安に思う事無く幸せな眠りについたのだ。

そして、その幸せな気持ちは目が覚めてからも続いていた。

大好きなジョーがここにいる。しっかりと私を抱いて。大切なものを守るみたいに腕を回して。
もちろんそれは、私がそうして欲しいってお願いしたからなのだけれど。
でもジョーは、一晩中律儀にそれを守ってくれた。
ジョーはお父さんでもお兄さんでもない、私の恋人。だから、一緒に眠ったら――どうなってもおかしくないのだ。本当は。
だけどジョーは、そういう自分の愛情を抑えてじっと傍らにいてくれた。それが、彼の大きな愛情以外のなんだというのだろう。

大好きな大好きなジョー。

私はそっとジョーの顔を覗きこんだ。
ぐっすり眠っている端正な顔。
本人はそういう自覚がまったくないけれど、でも――整っている、と思う。
特に好きなのはこの睫毛。男の人なのに長くて綺麗でうらやましくなる。
でも、もっともっと好きなのはジョーの瞳。今は眠っているから見えないのがちょっと残念。

私はジョーの胸に手をついてじっと彼の顔を眺めた。
たぶん、一生こうしていても飽きないだろう。

そっと頬を指先でなぞってみる。

でも、起きない。

そのまま指を滑らせて首筋をなぞる。
いつもなら、くすぐったがるのだけど今は何にも反応がない。
どうしてそんなにぐっすり眠っているのかしら。
もしかして――眠ったふり?
ううん、まさかね。
ジョーにそんな器用なことができるわけないし、できたとしても私にはすぐばれるに決まってる。
だからやっぱり眠っているのだろう。

困ったな。

だって。

なんだか、今……とっても愛おしくて、愛して欲しくなっちゃってるのに。

起こす?

でも……こんなにぐっすり眠っているのに。

どうしよう。

どうし――あ。

ヤダ、ジョーったら。
ああでも、これってもしかしたらジョーからのプレゼントなのかもしれない(そんなわけないけれど)
僕を好きに愛していいよ、っていう(ほんとにそんなわけないけれど!)

私はそっとジョーの下着を下ろすと、慎重に腰を沈めた。
ちょっと不安になったけれど、なんとか――ジョーと繋がることができた。
いつもと状況が違うから、ほんの少し痛かったけれど、でもすぐになじんだ。
というのは、痛かったから腰を少し浮かせたり角度を変えたり微調整していたら、それが刺激になったのか
ジョーの硬さが増してすんなり入ったのだ。深く繋がって、ほっとひといきついた。ちょっとこのままでいたい。
私のなかにジョーがいる。
私はジョーを自分のなかに取り込み包んでいる。
いま、私たちは繋がっている。

それは、なんて幸せなのだろう。

快楽ももちろん大事だけれど、でも――今はそういう気分じゃない。
ただ――ジョーと一緒になっている。その事実がとても嬉しくて幸せなのだ。

体の奥が熱くなってくる。
それに反応したのか、私のなかでジョーの体積が増したような気がした。
もう私たちの間に隙間は無い。

「……ふふっ」

ジョーは眠っている。
でも、いま睫毛が揺れた。もうすぐ目を覚ますかもしれない。

ねぇ、ジョー。
目を覚ましたら、最初になんて言うかしら?

「う……ん」

呻くみたいなジョーの声。
寝ているから寝言?
でも、かすれていてとてもセクシーな声。
やだわ、もう。そんな声を出されたら、私――

ジョーが呻いて、ぱっと目を開けた。
びっくりしている。

「え。フランソワーズ?」
「おはよう、ジョー」

まじまじと見つめられるとなんだか妙に恥ずかしい。

「え、と。いったい……」
「ジョーは動いちゃダメ」

そういうと、ちょっと不満そうに黙った。

そうね。

ほんのちょっとだけでいいの。あともう少しだけ。
もう少し、私のペースで私の幸せな時間を味わわせて欲しいの。
そして、じゅうぶん経ったらあとは……任せるから。

「ジョー?」
「え。なに?」

 

大好きよ。

 

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