「寝てください!」

 

 

ジョーの寝起きは最悪だ。
それは万人が知るところ。

実は寝付きも最悪だっていうのを知っているのは、たぶん私だけ。
彼は巧妙に隠しているから誰も知らない。

ミッションの時はさっさと寝る。それこそ、ワンツースリーで。
遠征の時はどうなのか知らないけれど、でもきっとちゃんと寝るのだろう。

どうして私と一緒の時だけ、寝付きが悪いの!

まさか隣にいるのが落ち着かない・・・というわけじゃないわよね?
だって迎えに来るもの。「寝る時間だよ」って、わざわざ。
だから違うはず。

だったら逆かしら。
隣にいると目が冴えて眠れない・・・とか。

・・・そんなウブな理由かしら。

だって、さんざんこれでもかって言うくらい甘えた後なのよ。
後は本当に眠るだけなのに。

 

「ん・・・フランソワーズっ」

 

ほらきた。

 

甘えるように鼻にかかった声。
寝返りを打ってこちらを向くと、いつものように私の首筋に鼻先を押し付ける。

「・・・眠れない」

「寝てください」

「でも眠れないんだ」

「いいこと教えてあげる。まっすぐ上を向いて目をつむって静かにしていること。そうすれば眠れるわ」

ジョーは私を抱いた腕を離そうかどうしようかちょっと悩んで。
でも、すぐに私の胸元に頭を載せて甘えてくる。

「そんなのやったって、どうせ眠れないよ」

 

困ったわね。

 

私は欠伸をひとつ。

ジョーを胸元に抱えながら。

眠いくせに、眠るのに手順が必要なんて、赤ちゃんみたい。
眠いのに眠り方がわからない、大きな赤ちゃん。

だからって毎回付き合わされるこちらの身にもなって欲しい。

私に甘えながらじゃないと眠れないなんて、本当は嘘なんでしょう?

 

 

・・・でも、しょうがないからそういう事にしておくわ。

甘えんぼのジョーくん。

 

 

2009/3/22upCopyright(C)2007-2009 usausa all rights Reserved.