こちらはオトナ部屋です!!
御注意ください!

 

「絡めた指」 超銀です。

 


指と指が絡まる。

ジョーの指と私の指。
しっかり組み合わさって、もう絶対に離れない――そんなふうに思うのは願望があるからだろうか。
もう離れたくないという。

 

***

 

エロいことをする時にする手の繋ぎ方なんだよ。

そう言った舌の根が乾くまもなく速やかに実行に移した彼。
そのへんの素早さはある意味感動してしまう。
チャンスを決して逃さないというか。
いつも考えすぎてチャンスを逃してしまう私とは大違い。
こうやってジョーは常に自分の望むものを手に入れてきたに違いない。
ちょっとうらやましく思う。

……。

………………。

片手はまさに「エロつなぎ」をしたままの私たち。
だから、自由になるのはもう片手しかないわけで。
その…私が言うのも何だけど、不便…じゃないのかしら。
ちょっと心配になってしまう。

あっ、ううん。不満とかそういうんじゃないの。
だってジョーはそんなの関係ないみたいに、その、…………
やだ私ったら何言ってるのかしら。

それに、――そうね。
いまこの繋いだ手を離したら、きっと寂しくなってしまう。
手を離しただけで心まで離れてしまうような気がしてならない。
だから、私は絡めた指に力をこめた。
一瞬だけ。

「――ん?どうしたフランソワーズ」

ジョーが顔を上げて私の目を覗き込む。
真上にあるジョーの両目。
こういう体勢でジョーの両目を見られるのは特権よね。
――たぶん、私ひとりだけ…というわけではないだろうことが残念だけど。

「ううん。片手だけって不便じゃないかしらって思ったの」
「不便じゃないよ。…なに?不満?何か足りない?」
「う、ううん。そんなことないわ」
「そう?」
「ええ」

こういう時、ジョーはいつもちょっとだけ強気になって、ふふんと鼻を鳴らす。
そのココロは、このくらいのことでこの俺様がきみを不満にさせるわけがないだろう、と――
かなりの俺様になってしまうジョー。
でも実はそんな彼がイヤじゃなくて、そういうトコロも好きって思ってしまう私。
だから今日もそんな言葉を心待ちにしていたのだけど。

ジョーは何も言わなかった。
言わない――というより、少しだけ目つきが怖くなった。
睨むみたいな。
怒っているみたいな。

私――何か彼の気に障るようなことを言ったかしら?

「……フランソワーズ」
「はい」
「僕はイヤだからな」
「?何が?」
「いくら君が不満だとしても、絶対にイヤだ。そこは我慢して欲しい」
「…あの、」

いったい何のこと?

私が首を傾げると、ジョーは私の耳を噛むみたいに唇を寄せた。

「今日は絶対に手を離さないってことさ」
「手……?」
「もちろん僕はそのくらいのことで君を不満にさせたりなんかしないつもりだ。
でも、もしも僕の力が足りなくて君が納得のいくような終わり方をしなかったとしてもそれでも今日は片手しか使わない。
悪いけど、今日はわがままを通させてもらうよ」

そう口早に言うと、ジョーは本当に耳を噛んだ。

――私は。

私は別に彼が片手しか使わないって決めようがどうしようが全然構わないのだけど。
構わない――というか、それはジョーの自由だし。
それにジョーに満足させられないなんてこと、ない…し。

でも不思議だった。
どうして今日に限ってわざわざそんな宣言をしたのだろう。
それともこれって、これからこういうルールを作っていこうねってことなのかしら。
それだったらちょっとイヤかも――だって増えそうだもの。
今日は何々をしないで何々をする日。みたいなのが。

そんなことをつらつら考えていたら、ジョーが怒ったように耳元で囁いた。

「なんだか上の空だねフランソワーズ。何を考えている?」
「あ、ううん。別に何も――」

と言ってもジョーは納得しないから。

「――じゃなくて、ジョーのことを考えていたの」
「ふん」

どうだかアヤシイな、と冷たく言うジョー。
でも大丈夫。
こういう声でこういう言い方をする時は、嬉しくて照れている時だから。
だから、冷たく言うジョーのことも好きだったりする私。
ああもう、私っていったいどれだけジョーのことが好きなんだろう。
こうしてこういうことをしている時も――しているからかもしれないけれど――どんどんジョーが好きになってゆく。
まるで限界がないみたいに。

「どうして手を離さないのかって思ってるんだろう?」

ジョーが言う。
私は肯定も否定もしない。ただジョーが話すのを聞く。いつもそう。

「――手を離すとなんだか、その」

繋いだ手。絡めた指。
ジョーの手にちからが入ってぎゅっと握られる。

「…気持ちが離れるような気がしてイヤなんだ」

私は思わずジョーの手を握り返していた。
だって。

だってだって。

同じこと思っていたのよ?

「フランソワーズ?」
「ジョー。あのね……」

私もそう思っていたの。

そう言うのは簡単。
でもちょっと簡単すぎるから。

「……手を繋いでいるのは好き」

ジョーが絡めた指に力をこめた。

 

 

2010/12/29upCopyright(C)2007-2010 usausa all rights Reserved.