こちらはオトナ部屋です!!
御注意ください!

私だけが知っている彼

 

 

寝起きの顔。

お腹空いた、って少し拗ねてじゃれてくる時の指先。

泣き顔。

「しょうがないなぁ」って抱き締めてくれる時の腕。

それから、それから・・・・

 

「私だけが知ってる彼」って、こんなにたくさん思い浮かぶのに。
別に、こういう事だけを言っていたわけじゃないのよ、ジョー。

なのに、ジョーはそれしか思い浮かばなかったみたいで
「きみしか知らない僕って、つまり・・・」
と、耳元で甘く囁いてくれたりして。

それって誘ってるの?

そう訊いても、褐色の瞳は優しく私を見つめるだけで。

もうっ・・・ジョーのばか。

 

***

 

「・・・こんなの、きみしか知らないよ?」
「そうかしら」
「そうかしらってどういう意味」
「・・・だって」

あなたと昔、こういう風にしていた子たち全部が知ってるはずだから。

もちろん、ちゃんとわかってる。
どれも本当のあなたではなくて、私と一緒にいる時しか見せないあなたがいるんだってこと。

だけど、あなたの過去を思うと途端にヤキモチやきになってしまう。
悲しくはならないけれど、それでもやっぱり気になるの。

ねぇ、ジョー。
ほかの女の子にもこういう風にしていたの?
その子はどんな風だったの?
私よりも・・・綺麗?可愛い?色っぽい?
それとも、私にはしない事とか・・・あったのかしら?
だとしたら、その時のあなたって私の知らないあなたなの?

「・・・フランソワーズ。何か考え事してる?」
「あら。ばれた?」
「ん・・・わかるよ。集中してない」

拗ねた顔して耳を噛んでくるジョーを持て余す。
最近、耳を噛むのがお気に入りね?

「・・・フランソワーズ。ちゃんと僕を見て」
「見てるわよ?」
「違う。そうじゃなくて、・・・目で見るんじゃなくて」

そうしてじっと見つめてくる瞳は、私の大好きな色を湛えている。

目で見るのでは、見えないこと。
ただ現実を見るだけなら、誰にでも出来る。
具象化されたものしか見ないなら、それしかわからない。

「・・・ちゃんと見てるわ、よ?」

ほかの女の子たちには、絶対に見えないあなた。
彼女たちがどんなに可愛くても、綺麗でも、色っぽくても。
私にはしない事があっても。
その時のあなたは、私の知らないあなたかもしれなくても。

それでも、いい。

だって、私はちゃんとあなたを見ているから。
わかってる?ジョー。

私 は ち ゃ ん と あ な た を 見 て る

あなたの孤独も。
あなたの飢えも。
あなたの渇望するものも。
そして、それらをどう向ければいいのかわからず戸惑うあなたも。

全部、ちゃんとわかっているから。

愛情を注ぎたくても、誰も受け取ってくれなかった。
だから、それをどうすれば受け止めて貰えるのか知らずにいたあなた。

大丈夫。

ちゃんと全部受け止めるから。

だから、
わかりにくい愛情でも
戸惑いながらの気持ちでも
あなたの全部を受け止めるから、

だから安心してね。

「・・・フランソワーズ?」

そんなに不安そうに、見つめないで。
怖がらなくていいの。
どんなまっすぐな愛情でも、屈折した愛情でも、・・・歪んだ愛情でも。
私は逃げないわ。

ずっとあなたのそばにいる。

「・・・ジョーはばかね」

そうして唇を寄せる。
あなたの頭を胸に抱き締める。

愛情を示したら、逃げてしまうかもしれない・・・って本気で思っているあなた。
それをちゃんと知っているのは、私しかいないから。

 

 

ジョーが小さく息をつく。

「・・・窒息するほどナイのが悲しい」

ばか。

 

 

 

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