「あ、今日はジェットよ。空飛んでる・・・って、えっ?」
「おい、まさかっ」

朝の情報番組を揃って見ていたジョーとフランソワーズは、今日はジェットと知るや凝固した。
なにしろ彼は、画面のなかで空を飛んできたのだから。
そしていま、目の前で着地しようとしている。

「おいちょっと待て」

いいのか?

朝の番組だぞ!
全国的にマッパ(注・真っ裸の略です)で飛ぶ姿を晒すのか!?


「いやん、ジョー」

ジョーの膝の上で彼にしがみつき目をそらすフランソワーズ。
その肩を無意識に抱き寄せながら、ジョーは見た。

事の成り行きを。


『今日も一日、元気に飛び回ろうぜ!』

さわやかに言った笑顔のジェット。

下半身は画面の外であった。
全国的に晒されたのは、彼の見事な胸筋である。

 

「・・・やだなぁ」

ぼそりとジョーが言った。


「もう終わった?」
「ああ」

フランソワーズが体を離すと、そこには顔をしかめたジョーがいた。

「なあに、どうしたの」
「ジェットだよ。あんな風にこれみよがしに筋肉を晒されたんじゃあ・・・」

また奴の人気があがるだろ、と膨れた。
長身の金髪碧眼、そして鍛えあげられた筋肉。日本女性のハートを鷲掴みだろう。

「あら、ジョーだって負けてないわ」
「負けてるよ」
「・・・そんなに人気者になりたいの?」
「そういうわけじゃないけど」

でもいちおう主役だし、と続ける。

「そう。・・・私だけじゃ不満?」
「えっ」
「私にとっていつでもジョーは一番なんだけど?」

朝からそんなことを言われたら、ぎゅうっとせずにはいられない。

「ん、ジョー、ごはんが冷めちゃう」
「後でいいよ」