今日のジョーは珍しく早起きだった。
なにしろ、フランソワーズより早く起きたのだから(!)

そのフランソワーズは、手を伸ばして隣にジョーがいないことを知った。
いつもなら、びくとも動かず機能停止しているのではと不審に思うくらい熟睡しているはずなのに。

「・・・?」

ぼんやり体を起こし、明るいリビングに向かった。

果たしてジョーはそこにいた。
パジャマ姿ではあるものの、目はぱっちり開いておりテレビの前に陣取っている。


「おはよう、フランソワーズ」

「おはよう・・・早起きね、ジョー」


どうしたのと目で問うと、ジョーはにっこり笑った。


「だって今日はきみの番だろう」
「何が?」
「しっかり録画しないと」
「何を?」
「だから、フランソワーズの」

と、説明している間にジョーの目がちらとテレビ画面を確認し、瞬間、緊張が走った。
ジョーの指が録画ボタンを押したのと、画面にヘッドギアを装置したフランソワーズが映るのが同時だった。


『おはようございます』


画面のフランソワーズが言う。


「おはよう、フランソワーズ」


ジョーが答える。フランソワーズはちょっと顔をしかめた。


『間違いないわ』

「うん、そうだね」

『今日もきっと一日ハッピーよ』

「そうだね、フランソワーズ」

ZIPポーズ。


ジョーが録画を止めた。


「いやあ、可愛かったなあ、フランソワーズ!」
「・・・それはどうもありがとう」
「うん?何か怒ってる?」
「怒ってないわ。ただ」

呆れているだけよ。
とは言わず、フランソワーズはジョーの隣に座った。


まったく。
テレビ画面の私と会話するなんて。
これって喜ぶこと?それとも悲しむこと?


「今日も一日ハッピーだって」
「・・・そうね」
「きみが言うんだから、間違いない」
「・・・」


そうかしら。


「まぁ、僕はいつでもハッピーだけどね」

隣にフランソワーズがいるんだからさ、とジョーは素早くフランソワーズを抱き寄せた。

「もう、ジョーったら」


ジョーの胸に顔を埋めながら、フランソワーズは考えていた。
いま彼が録画したこの映像はいったい何に使うのだろうかと。

 

後に
フランソワーズがいない朝、この映像を見てから彼が出かけるのを彼女は知らない。