午前6時30分。 フランソワーズは溜め息をつくと立ち上がった。 目のちからを使う気にもなれず、あっさりとドアを開けた。
弾む息。 くしゃくしゃの髪。
しかしその笑顔はすぐに渋面に変わった。 「不用心だな、フランソワーズ。今、確認しなかっただろ」 簡単ではない。優に数十メートルは離れている。それに、そんな風に入ろうとするのはアナタしかいないわとフランソワーズは思ったのだが、黙っていた。 「――電話じゃなかったの?」 靴を脱ぎながらジョーが言う。 でも、だったら。 彼の言うところの『おはようくらい毎朝言ってやる』は、どういう意味だったのだろうか。 首を傾げながらリビングへ行くと、ちょうど006のZIPコールだった。
ジョーは小さく頷くと、フランソワーズを振り返った。 「あのさ。こんな危険なマンションじゃなく、セキュリティのしっかりしたところへ移らないか?」
……ヒルズはジョーの住むマンションである。
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