「ジョーォ。おーきーて」


フランソワーズの声がして、体が揺すられた。
が、ジョーはううんと唸って声のするのと反対側へ寝返りをうった。


「ジョーったら」


今度は随分近い声だ。と思ったら鼻をつつかれた。


「うう」


ジョーが眉間に皺を寄せ、シーツに潜り込むと


「もう、ジョーったら!」


少し怒ったような声とともにフランソワーズが降ってきた。

「ぐっ」
「起きてって言ってるでしょ」
「フランソワーズ。重い」
「そんなはずないでしょ。最強のサイボーグなんだから」
「それは、加速限定の話で、ちからもちは005……っ」
「いいから、起きて。今日は勢揃いのZIPコールなんだから」
「いいよ別に。見なくて」
「見ましょうよ」
「興味ない」
「あら、私は見たいわ」
「じゃあ一人でドウゾ」

僕は寝る。

そう断固として目をつむったジョーに、フランソワーズは更に体重をのせた。

「だから重いって、フランソワーズ」
「目が覚めたでしょ?」
「……ぐう」
「もうっ、ジョー?――まったく、004に起こしてもらわないとダメかしら」

彼の目覚ましはかなり強力である。なにしろ命の危険が伴うのだから。

「ジョーォ」
「……眠いんだって」
「だって、一緒に見たいんだもの。今日でZIPコールは最後だし」
「……」

ジョーはむっつりと体を起こした。
フランソワーズにそう言われると弱いのだ。

「わかったよ。……だから、ちょっと退いて」

ジョーが体を起こしても、フランソワーズは相変わらずジョーに体重を預けたままである。
今や首に腕を回し甘えモード全開だった。

「嫌よ」
「嫌って……」

しょうがないなぁとどこか嬉しそうに呟くと、ジョーはそのままフランソワーズを抱き上げリビングへ向かった。時刻はちょうどもうすぐZIPコールだ。

「お。始まった」

しかし。

「あれ?」

今日は全員でのコールである。
撮影も全員で行った。
だがしかし、画面に映ったのは009と003の二人だった。

「えっ、どういうこと?」

これではまるで、

「やだわ、私たちカップルみたいじゃない」

いやカップルだろう、とジョーが言い返そうとしたところで、カメラが引かれ、メンバー全員が映し出された。

「あ……なんだ」
「びっくりしたわ」

監督の演出なのか、カメラマンのアドリブなのか、はたまたメンバー全員の悪ふざけなのか。
おそらく後者だなとジョーはあたりをつけた。

「うふ。ジョー、かっこいい」
「あのさぁ。画面じゃなくここに実物がいるんだけど?」
「いいじゃない。ジョーってカメラ映りいいわよねぇ」
「……見惚れるならこっちだろ」
「カメラを通したジョーが素敵なのよ」
「……」
「あら、怒ったの?」
「……」
「やあね、もう。自分にやきもち妬かないの」

フランソワーズはジョーの耳元に唇を寄せると、

「テレビのジョーは素敵で、こっちのジョーは大好きなの」
「……!」

とりあえず――ジョーはフランソワーズを抱き上げたまま、さっきいた場所へ戻ることにした。


『今日も一日、元気にいこう!』


「もうっ……そういう意味じゃないでしょう?」
「……」

無言で微笑むジョー。

「えっ、そういう意味!?」

 

真偽は謎に包まれたままであった。