「夏だったね」
たぶん、夏だったと思う。
私もあなたも半袖の服を着ていたから。
それに……そう、スイカなんて食べたりして。
だからきっと、夏だった。
***
まるで以前と変わらないあなた。
見た目もそうだし、中身もそう。
ちょっとした癖だっておんなじだったし、私がじっと見ているのに気付いて「なんだい?」って優しく言うのも同じだった。
だから、あなたはちゃんとこちら側に戻ってきたのだと言ってもいいのだろう。
現にみんなはそう思っているし。
不審そうなひともいない。
ジョーはいつもの、今まで通りのジョーだと。
……でも。
「フランソワーズ、いったいどうしたんだい?」
いっこうに減らない私のスイカを見て笑う。
「スイカ、嫌いだったっけ」
「…そんなことないわ」
「…………そう」
即答しない。数秒かかる。
まるで新しいデータを処理するみたいに。
まるで、――サイボーグみたいに。
今まではそんな風に思わなかったから、これはきっと彼が改造手術を受けた後遺症なのだろうと思う。
まだ各部分がしっくりいっていないだけ。
ジョーはジョーよ。
なにも変わらないわ。
そう思ってみるものの、……違和感はなかなか消えてくれなかった。
あなたは本当にジョーなの?
本当は――もういないのに、ジョーのようにふるまうようプログラムされただけの機械じゃないの?
何度も思った。
「フランソワーズ。いったいどうしたんだい?僕はもう、どこにも行かないよ」
「えっ?…ええ。そうね」
戦いは終わったのだし。
……でも。
ジョーは困ったように私を見ると、しょうがないなあと小さく笑った。
それは。
困った時のジョーの口癖。
私に対してどうしたらいいのか困った時に出てしまう彼の定番。
「ジョー」
私は彼の手を握った。
…温かかった。
知っている温かさだった。
やっと、あなたはちゃんと還ってきたのだと信じた。
***
時々、ふと思い出す。
今では笑い話にしかならないけれど。
私は、あなたをジョーだと信じたから。
積極的に信じることにしたから。
だから、これから先何があろうとあなたはジョーで、ほかの何者でもないと思っている。
思うことにした。