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「ジョーの悩み」
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 ―1― 
 最近、ジョーの様子がおかしい。 ぼーっと空を見つめていたり、そうかと思うとこちらを怖い顔で見ていたり。 
 
 「それは今に始まったことじゃないだろう」 冷たく言われた。 「もうっ。だって何か悩んでいるみたいなんだもの。男同士のほうがいいんじゃないか、って」 ピュンマが言う。 「フランソワーズは訊いてみたのか、ジョーに」 ジェットの言葉に全員が頷いてこの話は終わった。 
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 ―2― 
 今日もジョーの様子がおかしい。 シーツを干していても。 洗い物をしていても。 いい加減、気になってくる。 「ねえ、ジョー。いったいなんなの、この間から」 眉間に皺を寄せる。 「うん。結構、悩んでいるかな」 なんだかタダゴトじゃないみたい。 「ねぇ、ジョー。良かったら話してくれない?・・・頼りないかもしれないけど」 そうしてジョーが話し始めたことは想像を絶していた。 
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  ―3―   「えっ?」 私は数回瞬きした。 「それは・・・」 頬が熱くなってくる。 ジョーは心を決めたのか、淀みなく話し続ける。 「だから、どうしてなんだろうって思わないかい?地球上の半分は女性なのに、どうして僕はフランソワーズしか駄目なんだろうって。きみは魔法使いじゃないだろう?」 思わず首を横に振る。 「だよなぁ。そうすると、なにか他に要素があるに決まってる。それがなんなんだろうかってずっと考えていた」 ジョーが顔を上げて私をまっすぐ見る。 「ねえ、どうしてだと思うフランソワーズ?」     ―4―   「それは・・・」 「・・・それは」 私はジョーの前に立つと、彼の頭を撫でた。 「私もおんなじ疑問を持っているっていったら驚く?」 傷ついたような顔をするから、笑ってしまった。 「でも、そんなジョーがいいの。他のひとじゃ駄目。これって不思議よね?」     ―5―   「めんどくせーなぁ。アイツら」 「毎年、同じこと悩んでないか?」 「しっ。それを言うな、って」  
   
       
          
   
         「何、って・・・・」
         「顔が可愛いからかなって思ったけど、それだけだったら芸能人にごまんといるし。笑顔が可愛いのだってそうだし。じゃあ泣き顔かなって思ったけど、・・・うん、確かにこれは合っていると思うんだけど絶対にそれだけじゃない自信があるし。やっぱり性格かなぁ。可愛いし、優しいし、怖いし、甘えんぼのわりに意地っ張りだし、でもヤッパリ凄く可愛いいし。そうすると残るは外見だけど、足が綺麗とかスタイルがいいとかそれだって芸能人にごまんといるし。うーん、やっぱりどうしてなんだろう。例えば、同じ顔で同じ声で話すフランソワーズっぽいひとが他にいても、僕はきみじゃなきゃ駄目なんだし」
         
   
       
          
   
         私はジョーを見た。
         真剣な瞳でこちらを見ている。答えを待っている。
         「えっ?」
         「どうして私もジョーじゃないと駄目なのかしら?こんなにメンドクサイひとなのに」
         「うん」
         「どうしてなのかしら」
         「さあ。・・・どうしてなんだろう」
         そうしてふたりで笑った。
   
       
          
   
         そうして兄達は、そうっと部屋を出た。
