「新年の誓い」
「――よし、出来た!」
みんなはリビングで飲んだり食べたり喋ったり――がひと段落して、今は思い思いに過ごしていた。 そして。 その目標に対する参考意見をこれから聞きに行こうというのである。
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「――あら、ジョー。どうしたの」
「え、と、あのぅ」 同じ003とはいってもひとの003だと妙に緊張してしまう。 「ちょっと伺いたいことがあって」 003が手を止めてこちらを向く。 「あ、あの」 思い切って言ったのに、目の前の003はぽかんとこちらを見つめるばかり。 「…ジョーが堂々としてる…」 ぽつりと言うと003はころころと笑いだした。 「いやだわ、そう見えるの」 超銀ジョーさんはかっこいいじゃないですか。 口早にそう言ったけれど、超銀フランソワーズは更に笑い続けた。 「――ああ、おかしかった」 目尻の涙を拭って、超銀フランソワーズは目の前でちょっと憮然としている平ゼロジョーを見た。 「ごめんなさいね。でもあまりにも誤解しているから」 そこでちょっと声をひそめた。内緒話をするみたいに。 「実はいくじなしの弱虫さんなのよ」 まさか。 「だってね。『僕もパリに行こうかな』って言ったりするのよ」 それが? 「それって一緒に行こうって意味なのよ!一緒に行くって言えないからそんな遠回りな言い方するの。私がイヤって言ったらどうしようって顔色窺ってびくびくしながら言うのよ。おかしいでしょう」 平ゼロジョーは手にしていた半紙を握り締めた。 「あら、それはなあに?」 超銀フランソワーズはじっとそれを見つめ、ああ、だからジョーのことを聞きたかったのねと思案顔で言った。 「うーん。これは別のひとに聞いたほうがいいわ。誰かを参考にするならね」 そこで超銀フランソワーズはにっこり笑った。 「あなたのフランソワーズと一緒に考えるのが一番いいと思うわ」
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笑顔でキッチンを追い出され、平ゼロジョーはリビングへ向かうことにした。が、その途中の廊下で平ゼロフランソワーズに出会った。 「フランソワーズ。何してるの」 フランソワーズは廊下の壁に寄りかかってそこにいた。別段、何をしている風でもない。 「別に。なんでもないわ」 でも誰かを待っているような顔だなと思いながら、ジョーが通り過ぎようとしたら。 「…超銀フランソワーズさんと何を話してたの」 険を含んだ声で聞かれて驚いた。 「えっ」
「フランソワーズ?」 どうかした? と顔を覗きこむとふいっと目を逸らされた。 「別になんでもないわ。行けば?」
「フランソワーズ」 精一杯、凛とした声――のつもり――で言ってみる。 「僕はフランソワーズと一緒の方が楽しいよ。だから一緒に行こう?」 そう言ってフランソワーズの手を取った。フランソワーズはどうするだろうかとドキドキしながらだったけれど、フランソワーズはあっさりとジョーの手を握り返して素直に一緒に歩いてくれた。 ――なんだ。意外と簡単じゃないか。 でもその一歩のための言葉が今までは出なかった。
それは。
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「誰がいくじなしの弱虫だって?」
「もうっ、急になあに?驚くでしょう」 いつになく絡む超銀ジョーにフランソワーズは眉間に皺を寄せた。 「お酒くさいし、そろそろお茶にしたほうがいいんじゃない?」 キッチンで片付けの途中だったから、フランソワーズは背後にぴったりくっついているジョーを鬱陶しそうに肩を揺すった。が、009は離れる気は全くないようでますます身体を密着させてきた。 「ちょっとジョー」 歯切れが悪く言い淀んだ後、ジョーはフランソワーズの首筋に鼻を寄せた。甘えるように。 「……だってさ、……いつの間にかいないから」 フランソワーズが体を捻ってジョーに向き合おうとしたが、ジョーの強靭な腕がそれを阻む。 「ちょっとジョー?いったいどうしたっていうの?」 フランソワーズは大きくため息をついた。 まったくもう。酔ってるのね? 「ジョー」 そう言うと、強靭なはずの009の腕による戒めをあっさりと外し、フランソワーズはジョーに向き合うと有無を言わせず彼の頭を引き寄せその頬にキスをした。 「でもそんな弱虫でいくじなしなところも好きよ?」
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