![]() 【一日目:発端、最初の犠牲者】キーパー:織本さんは新三回生の蕪くん(注:水木しげる画)と一緒に新入生勧誘の出店にいたんですけど、入会希望者が三人来たので、彼らをBOX(※=部室)に連れてきたという所です。出店の方は蕪くんにお任せしたという事で。 村瀬:我々はBOX待機組なわけですね。 キーパー: 三人いるので、村瀬とチェと織本さんで一人ずつ応対しようということになります。BOXには他にも現役の会員が三人います。一人は鷺山絵美さんという女性会員で、形而上学部の二回生です。もう一人は男性で、医学部四回生の小林伸寿さんです。あと鷲羽さん。 入会希望者は二人が男性で、一人が女性です。村瀬の前に座っているのが形而上学部の一回生となる立花勉くんで、好きなSF作品は『遊星よりの物体]』(原題:『影が行く』、ジョン・W・キャンベル Jr.著)です。 織本:カーペンターじゃない方ね(笑)。 キーパー:チェの前に座ったのは医学部一回生の天草威くんです。彼の好きな作品は『光の王』(ロジャー・ゼラズニイ著)です。 織本:マニアックだな! キーパー:(天草)「『地獄のハイウェイ』も良いんですけどね」とか言っている所を見ると、ゼラズニイであれば内容は広範囲に渡って好きみたいです。 一同:(笑)。 キーパー:そして織本さんの前に座っているのが佐野鈴子さん、理学部の一回生です。黒木メイサ似で、もちろん好きな作品は『宇宙戦艦ヤマト』です。 一同:おおー! キーパー:でも、実写映画はあまり好きではないらしく、どちらかと言うとアニメ派だそうです。父親の影響で見始めたそうです。 チェ:しかも一番好きなのは「復活篇」です、みたいな? 織本:マニアすぎるだろ!(笑) キーパー:「何でも実写化すれば良いってもんじゃない」と舌鋒鋭く実写版を批評しています。 織本:全肯定します。「そうだよね〜。うんうん、そうだよね〜。復活篇だよね〜、やっぱり」。 一同:(笑)。 キーパー:そんなこんなで新入生の相手をしています。さて、皆さん<アイデア>ロールをしてみてください。(村瀬と鷲羽が成功)ロールに成功した二人は、現役生の小林さんの様子がおかしい事に気付きます。ついさっきまで椅子に座って普通にしていると思ったら、気付けば放心状態になっています。 村瀬:立花くんの応対を鷺山さんにバトンタッチして小林さんの様子を見てみます。「先輩? せんぱ〜い?」。 キーパー:まったく呼びかけに応じません。 村瀬:目の前で手を振ってみますが、手の動きを目が追う様子はありますか? キーパー:まったくないです。 チェ:「どうしたんだ?」。 村瀬:「いえ、小林先輩が……」。 キーパー:などとやっていると、彼はワナワナと震え始めます。そして見る見るうちに顔が引き攣っていきます。 チェ:何かの発作か? 「オイオイ!?」。肩を掴んで揺すります。 鷲羽:「誰か応急手当とかしてやった方が良いんじゃないか!?」。 キーパー:チェに揺さぶられていた彼は小さく「ひっ……!」と悲鳴を上げると、椅子から転げ落ちます。まるでそのことにも気付いていないかのように、立ち上がろうともしません。床に寝転んだままガタガタ震えています。 チェ:「おい! 大丈夫か!?」。 鷲羽:「とりあえず、校医を連れて来い! 行け、村瀬!」。 村瀬:行きます。 キーパー:一番近くにいる千重本さんには分かりますが、とりあえず目に見える勢いで顔から血の気が引いていっています。そして、なぜか肌がカサカサになっているような気がします。 鷲羽:手近にあるミネラル・ウォーターのペットボトルを口元に持っていってやりましょう。応急手当的な処置を試みます。 キーパー:口の中に水を入れてやっても自発的に飲むような様子はありません。一応入っていってはいるようですが。 チェ:「ヤバイんじゃないのか!?」。 キーパー:では校医を呼びに行った村瀬は<幸運>ロールを。 村瀬:(コロコロ)成功しました。 キーパー:幸運にも校医はいました。では新入生も何事かと見守る中、校医がやって来ました。しかし医者も手をこまねいている状態です。呼びかけにも一切応えません。ただし脈拍などは正常だそうです。 鷲羽:こうなると、もはや我々にはできることはないので病院に連れて行くしかないかと。 チェ:そうだよね。 キーパー:この場ではこれ以上分かる事はないので、病院で調べてもらうために校医が救急車を手配します。もう何を応急手当したら良いのか分からない様子です。すぐに救急車が来て担架が運び込まれてきました。誰か付き添いますか? 鷲羽:付き添いましょう。 キーパー:もう一人くらい付いていけますよ。 鷲羽:「では、鷺山さん、一緒に……」。 織本:ここでNPCはないだろ(笑)。 チェ:「俺も行きましょう」。小林くんとは同回生ですからね。 キーパー:入会希望生には鷺山さんが「今日は取り込んじゃったけど、良かったら、また来て」といってフォローしてくれます。 織本:佐野さんとは凄く盛り上がったので、赤外線通信で携帯の電話番号を交換します。「ぜひ、また来てね」。 キーパー:佐野さんは「また来ます!」と言っています。この事件にもまったく引く様子はありません(笑)。では鷲羽さんと千重本さんが付き添っていくということで。 チェ:「最初は血の気が失せて、肌がカサカサになって……」と救急隊員に説明をします。 キーパー:小林くんは小康状態を保っているようです。救急車に乗せられてからは「点滴の必要があるか?」などと隊員の人たちがバタバタしている中、ぼんやりと目を開けていた小林くんの目がカッと大きく見開かれて、「ヒィィィィィッ!」という笛のようなか細い悲鳴を上げると、急速に体が干からびて行きます。 鷲羽&チェ:「おわぁ!?」。 キーパー:そして干からびながら、身体から光を放ちます。 チェ:光!? 鷲羽:何色の? キーパー:まばゆい光です。そしてあっという間にミイラ化しました。ミイラ化してからもぼんやりと光を放ち続けています。肌の露出した部分では、何かが蠢いています。身体の表面を、おぼろげな光を放つ斑の何かが這っているような感じです。 チェ:それは皮膚の内部ではなくて外側を? 鷲羽:光って動く刺青みたいな感じ? キーパー:そうですね。そして救急車内の心電図が「ピーーーーー」という感じで。 チェ:瞬間的に死んでしまった、と。 キーパー:ではSANチェックをお願いします。(二人とも成功)成功すれば喪失はないです。 鷲羽:「……何か細菌とかじゃないだろうな?」。 キーパー:救急隊員も「こんな症状は聞いたこともない」と言うので、病院に着くと遺体は隔離され、付き添いの二人も一時隔離されて検査されます。 チェ:怪しい伝染病かもしれないっていう話だもんね。何かの細菌だったら、BOXにいた人間全員が危なくなるよね。 鷲羽:他の人にも連絡はしておきます。不安がらせます。 一同:(笑)。 村瀬:小林先輩って医学部の四回生ですよね? それならゼミの方にも連絡して……。 鷲羽:それよりも学校に連絡すれば早いだろ。……医学部なら、何か病原菌を運んできたという可能性もあるよね。「斑肌ピカピカ病」とか。 村瀬:ゼミ関連で罹患しましたとかなると、凄く嫌な話になりますよね。 鷲羽:小林くんが細菌学とか研究していたらヤダな(笑)。 チェ:調べれば所属ゼミとかは分かるでしょ。 キーパー:確かに、まぁ、すぐに分かりますよ。小林先輩が研究していたのは、今流行のiPS細胞に関する事なので、とりあえず細菌学とは関係ありません。まぁ、ゼミ生が亡くなったということで家族への連絡とか通夜の連絡などはゼミと学校の方に任せられるでしょう。 チェ:我々の検査はどんな感じでしょうか? キーパー:徹底的に検査されますが、特に何も出てきません。小林くんの遺体は司法解剖に回されます。家族の同意とか、その辺を得てからの話になりますけど。変死扱いになるので警察もやって来て話を聞かれます。まだ死因も特定されていないので「何かありましたら連絡しますので」ということで解放されます。 その夜、鷲羽さんの電話に病院から電話がかかってきます。護封のコネで病院が詳細を伝えてくれます。「司法解剖をしてみたんですが、結局死因は特定できないみたいです。直接の死亡原因は体液を失った事によるショック死のようですが、どうしてそのような事になったのかは不明です。当然、光り輝く斑模様についても原因は不明です」。 「深淵より」トップへ戻る |