境界上に建つ館

1

探索者集合

キーパー:皆さんは鵜堂という名前の弁護士に、彼の所属する弁護士事務所の会議室に呼び集められました。当然、警備員の二人は顔見知りですが、それ以外の方たちは初対面です。しかし、意図が分からない、統一性のない五人が集められたような印象を受けます。神父服を着ていたり(川上神父)、白衣を着ていたり(照葉)、警備会社の制服を着ていたり(佐川&田中)、イーゼルとキャンバスを抱えたりしている(間之原)五人組です。
間之原:いや、普段はそんなもの抱えていないよ(笑)
キーパー:会議室には皆さんを呼び出した鵜堂弁護士と、今回のクライアントである成嶋倫子がいます。(鵜堂弁護士)「さて、このたび皆さんに集まっていただいたのは他でもありません。こちらにいらっしゃる成嶋倫子さんのお屋敷にて、ただ今、とある問題が発生しています。そこで皆さんに、その問題の解決を図っていただきたいのです」
間之原:なるほど、倫子さんもいるのね。
キーパー:「どうぞ、よろしくお願いいたします」と最初の挨拶をすると、倫子は「後はよろしくお願いいたします」的に椅子を引いて後ろに下がります。彼女はちょっと憔悴した様子が見受けられますね。
照葉:なるほど。
キーパー:「現在、成嶋邸にて奇妙なことが起こっています」と言って、鵜堂弁護士が状況を説明します。

 成嶋倫子は莫大な財産を相続した未亡人です。
 数ヶ月前まで夫の成嶋邦洋と共に静岡県に住んでいましたが、邦洋の亡くなった叔母(この病死した叔母の死因に疑わしい点はありません)が残した莫大な遺産を、彼が相続することになりました。相続財産は不動産、証券類、現金と形はさまざまですが、総額は約十四億円にもなります。相続財産の中には亡くなった叔母が住んでいた洋館「風見館」が含まれていました。邦洋は静岡県の建設会社で役員を務めていましたが、これを期に先祖代々の本籍地へ戻り、相続した風見館で悠々自適に暮らすことにしました。
 しかし相続手続、退職、転居の準備中に邦洋は交通事故で亡くなります(この事故に関してもまったく事件性はありません)。遺産は状況変化についていけずに呆然とする倫子が相続することになりました。突然夫を失い、また莫大な財産を相続することになった倫子は弁護士や計理士の言うがままに手続きを進め、亡き夫が望んでいたとおりに洋館で暮らすために白凰市へやって来ました。リフォーム業者に少し手直しさせて、倫子は風見館で生活を始めます。

成嶋倫子

 一人暮らしにはやや広すぎる風見館での生活に倫子がややうんざりし始めた頃、事件が起こります。深夜に目を覚ますと、何者かが館の中を徘徊する気配がするのです。密やかな足音や、聞き取りにくい声での会話のようなものが聞こえました。自室に閉じこもって朝を迎えた倫子は館内を調べましたが、盗まれたものはなく、何者かが押し入ったような形跡もありませんでした。気のせいと思い込もうとした倫子でしたが、正体不明の気配はそれからも続き、ある夜には光る二つの目が外から倫子の寝室を覗き込んでいるのに気づいて(倫子の寝室は洋館の二階にあるにもかかわらずです!)、恐怖に気を失いました。
 倫子は警察に相談して館内の捜査をしてもらったり夜間の館周辺の巡回を強化してもらったりしましたが、異常は発見されませんでした。やがて「確たる証拠が見つかればもう一度捜査します」と言い捨てて、警察は捜査を打ち切ってしまいます。その後も倫子は何者かの気配を感じ、精神的に追い詰められていきます。

キーパー:そこで、皆さんに声がかかりました。四鴛警備保障の二人に関して言うと、単純です。要するにその不審者を捕まえてもらいたいということです。「成嶋氏はセレブなので、彼女に恩を売っておけば信頼できる警備会社として評判になり、販路拡大につながる」と会社から説明を受けています。しかも、通常の料金に加えて成功報酬が別途支払われることになっています。さらに、これは会社には伝えていませんが、事件を解決すれば、あなたたちに個人的にボーナスを支給してくれるそうです。
佐川田中:おお!
キーパー:これは依頼人である成嶋倫子の前で、弁護士の鵜堂が言っているので間違いないでしょう。(鵜堂弁護士)「解決していただければ、その分の実入りはあると信じていただいて結構です」
田中:「気張っていきます」
佐川:「これで消費者金融からの借金もチャラにできる!」
一同:(笑)

テンプレート:警備員(二人)

 君たちは四鴛警備保障株式会社に勤務する警備員だ。今回、成嶋倫子氏の住宅の警備を担当することになった。
 君たちがやらなくてはならないことは成嶋邸の周辺に出没する不審者(複数)を取り押さえ、成嶋邸の安全を確保することだ。
 成嶋氏の目の前で不審者を取り押さえ、警察に引き渡すこと。

君たちの使命:不審者を取り押さえ、成嶋邸の安全を確保する。

田中浩

田中 浩、男性、26歳

 四鴛警備保障株式会社勤務。大学院卒。
 今回の派遣先での警備責任者的役割を担う。真面目で仕事熱心。
 所持CCC:【一撃必殺】、【危機一髪】
 プレイヤー:ずずず

佐川ヒロシ

佐川 ヒロシ、男性、24歳

 四鴛警備保障株式会社勤務。高校中退。
 同僚・先輩でもある上記の田中浩とは反対に、あまりマジメとは言えない性格。
 警備員二人はセットで「W(ダブル)ヒロシ」。
 所持CCC:【臨機応変】、【一撃必殺】
 プレイヤー:山野田


キーパー:さて、神父様。先ほどの説明にあった「二階の窓の外から覗き込んでいた光る眼」に関して、どうやら倫子は心霊現象を疑っているようで、その解決というか、判断のためにあなたは呼ばれました。この件を解決すると、例えば老朽化した礼拝堂の建て直しへの寄付が期待できます。
川上神父:なんのかんの言ってもお金は必要になりますからな。頑張りましょう。
キーパー:(鵜堂弁護士)「正直申しまして、私個人としては心霊現象はないと考えています。神父様には本件が心霊現象“ではない”ということを証明していただきたいのです。万が一、心霊現象であるのならば……その時は、それを祓っていただきたい」
一同:(笑)
キーパー:心霊現象であろうとなかろうと、成功報酬は払われます。Wヒロシや神父様に限ったことではありませんが、要するに、このチームで力を合わせて事件を解決すれば、平等に報酬とボーナスが与えられます。

テンプレート:聖職者

 君は聖職者だ。今回、成嶋倫子氏の弁護士よりお祓い(それに類する行為)の依頼を受けた。
 成嶋倫子氏の相続した住宅に不審者が出没しており、成嶋氏はそれが幽霊かもしれないと懸念している。君がやらなくてはならないことは、成嶋邸に出没する幽霊を払い、成嶋邸の安寧を確保することだ。
 なお、本件が心霊現象とは無関係である場合、その証拠を成嶋氏に提供することでも君の使命は完了となる。

君の使命:成嶋邸の心霊現象の原因を突き止め、現象を終息させる。

川上始

川上 始、男性、35歳

 宗教家(神父)。
 『Tactics誌 50号』に掲載されたヴァリアント「超能力」の《超感覚》を使用できる(成功率52%)。
 所持CCC:【名誉挽回】、【危機一髪】
 プレイヤー:whity


キーパー:カウンセラーは倫子とはどういう間柄になりますか?
照葉:親しい関係で良いんですよね? 幼馴染みってことにします。
キーパー:それでは不安を覚えた倫子から、かねてより相談されていたことにしましょう。あなたにとってのメリットは、もし独立するとなった時に援助が期待できることです。(鵜堂弁護士)「このような不安な状況にありますので、梶原さんには是非とも成嶋さんの精神的なケアをお願いします」
照葉:なんせ幼馴染みですのでね。「全力を尽くします」
キーパー:(鵜堂弁護士)「手の空いている時間があれば、他の方たちの手伝いもしていただければ」

テンプレート:カウンセラー

 君は病院の心療内科に勤務する心理カウンセラーだ。
 君の知人であり、相談者でもある成嶋倫子氏のカウンセリングのために、成嶋家の顧問弁護士から特別に呼び出しを受けた。
 成嶋邸周辺に不審者が出没するため、成嶋氏は精神的に疲労している。今回、専門家を集めてこの事件の解決を図ることとなった。君がやらなくてはならないことは成嶋氏の精神安定を図ることだ。もちろん、それには事件解決が一番であるため、それにも協力すること。

君の使命:成嶋倫子の精神安定を図る。

梶原照葉

梶原 照葉、女性、30歳

 國史院大学附属病院に勤務する心理カウンセラー。
 成嶋倫子とは幼馴染み。
 所持CCC:【千載一遇】、【叱咤激励】
 プレイヤー:へむれん


キーパー:成嶋邸である風見館には、館の最初の持ち主であった有名画家、風見飄衛の描いた絵が飾ってあります。風見館の先々代の持ち主は、模写したいという学生たちにその絵を快く公開してくれていました。そうした学生の内の一人が、間之原君になります。
間之原:ふむ。
キーパー:この伝統は館の持ち主が倫子になってからも続いていました。しかし今回の事件が発生してからは、倫子の体調が優れないので模写に訪れても断られることが増えてきました。そんな時に今日のような会合が持たれるということになり、「それならば、君もバイトがてら参加してみるかい?」ということになりました。
間之原:このままだと研究が続けられなくなっちゃうからね。

テンプレート:画家(美大生)

 君は画家の卵だ。郷里の有名画家、風見飄衛を研究している。
 君は先々代の成嶋邸の持ち主、成嶋芳江氏の好意の下、成嶋邸に飾られている風見飄衛の絵を模写させてもらっていた。芳江氏が亡くなった後は、成嶋邸を相続した倫子氏からも同様の許可をもらっている。
 しかし、成嶋邸周辺で発生している不審者出没事件により倫子氏が精神的に疲労し、模写に訪れても断られることが多くなってきた。
 君がやらなくてはならないことは、研究を続けるために事件解決を手助けすることだ。

君の使命:事件解決の手助けをして、研究を続ける。

間之原義治

間之原 義治、男性、21歳

 美大生。
 白凰市出身の画家、風見飄衛を研究テーマにしている。
 所持CCC:【乾坤一擲】、【形勢逆転】
 プレイヤー:"Junnkie"


キーパー:可能であれば成嶋邸に泊まり込みで調査をしてもらいたいそうです。今は午後二時くらいです。(鵜堂弁護士)「では、調査は何時から始めていただけますか?」
照葉:「皆さんに差し支えがなければ、今日これからでどうでしょうか?」
田中:「我々二人は今日からこの仕事が100%アサインされていますので、問題ありません」
佐川:「三食昼寝付きでやれば良いなら楽なもんだ」
間之原:昼寝すんな(笑)
田中:「昼は寝ていてくれて構わんが、夜はちゃんと起きていてくれよ」
キーパー:(鵜堂弁護士)「今から始めて頂けるということで良いですね?」
川上神父:「うむ」
キーパー:「それでは、本日からどうぞよろしくお願いいたします」と倫子は深々とお辞儀をします。では、風見館へ向かいましょう。皆さん、それぞれ自動車に分乗して出発ということで。


前へ 表紙へ戻る 次へ