#3 長内 香織
アクション1:
どうもです。
今回のアクションは。
1&2アクション目:パールに行って、水晶の首飾りに付いて調べます。形・形状・紐に至るまで、どんな些細な事でも手がかりを求めます。必要があれば、図書館等を利用して、じっくりと調査を。
3アクション目:柚織に会いに行きます。赤室氏の話をした上で、水晶の首飾りを渡してもらうよう説得します。調査で少しでも判った事があれば、その話もします。水晶の首飾りが単なる「幸運のお守り」ではない事を強調し、こんなものに頼らなくても明日の本番で立派に歌える筈だと訴えます。事の成否に関わらず、明日のコンクールには必ず行く事を約束します。
リアクション1:
【B4区画・パール】
白凰駅から続く地下街「万座殿」の一角、B4区画の奥まった場所に占いショップ「パール」はある。小規模ながらも佇まいに雰囲気のある本格的な占い道具の専門店だ。
招待状に同封されてきた水晶の首飾りについて調べるため、まず馴染みの店員に首飾りを見せ、見覚えがないか尋ねる。店員は首を横に振り、パールで扱っている商品ではないようだ、と応える。革紐(合成皮革)の取り付け方も特に変わったものではなく、類似品を探せば何百点も出てくるだろう。ただ、水晶の形状の歪さは加工していない事の裏づけであり、大量生産品ではないのではないか? 革紐取り付けの材料・工具は市販されているので、ハンドメイドの可能性が高い。
以上が店員からの回答であった。
【白凰市立図書館】
何だか最近良く図書館に立ち寄るな、と自嘲気味に考えながら市立図書館の入口を見上げる。自動ドアを抜けてまず目指すのは、鉱物図鑑のある本棚だ。
分厚い図鑑を閲覧机の上に広げ、左手に首飾りを持ち、右手で図鑑のページをめくる。組成や特徴を記した説明書きは、最初の一文を読んだだけで、あとは無視した。化学的な説明はちんぷんかんぷんだし、そもそも左手に持ったこの水晶の組成などあなたは知らない。一見何の特徴もない透き通った鉱石でありながら、内部で脈打つように淡い光を明滅させる―――そのような特徴のある鉱石が他にもないか? 図鑑に載った鉱石写真と左手の水晶を見比べながら、忙しくページをめくっていく。
やがてパタンと音を立てて5冊目の図鑑が閉じた。右手の親指の指紋が摩滅するかと思うほど何度も何度もページを繰ってみたが、左手で息づく水晶と同じものは見つからなかった。既知の鉱物ではないのか? それとも―――鉱物ですらないのか?
失意に打ちひしがれて図書館を後にする。左手に握ったままの水晶に恨みがましく目を向けると、まるで嘲笑うかのようにそれが明滅して見えた。
【B4区画・パール、再び】
探し人は占いショップ「パール」で見つかった。
薄暗い店内の片隅に設けられたフリースペース。そこの備え付けの木の椅子に、左こめかみから下がる編みこみに手をやりながら、何をするでもなくポツンと座っている少女。行儀良く揃えられた膝の上に置かれた白いベレー帽と聖ジェローナの赤いセーラー服。近づいて声を掛けると、苑原柚織はハッと我に返って「こんばんは」と頭を下げた。
世羅と出会った思い出の場所。柚織にとってパールとはそういう意味を持っている。
「世羅さんが本当に生きているなら、大好きだった占いをもう一度したくなるんじゃないかって・・・」
柚織なりの調査。しかしそれが実を結んだ様子はない。店主や他の常連客に尋ねても、最近世羅を見かけた者はいなかったとの事だった。
あなたは昨夜の赤室翔彦の最期を柚織に伝え、水晶の首飾りを渡してくれるように彼女を説得した。首飾りは幸運のお守りではない、と。あなたの説得に真剣に耳を傾けていた柚織は、しかし、その首をフルフルと横に振った。
「世羅さんがこのお守りをくれてから、私、勇気がもてたんです。不幸にあっても尚、私を勇気付けてくれた世羅さんの水晶(気持ち)を、手放す事なんて出来ません」
柚織は世羅の生存を信じている。彼女に届いた招待状のナンバー「10」が彼女がラッキーナンバーと信じる数字と一致した事が大きく影響しているようだ。
世羅はコンクールの会場には現れないかもしれない。それなら、せめて彼女が贈ってくれたお守りを身に着けて独唱に望みたい。水晶を通して声が世羅に聞こえるように、と。それが柚織の言い分だった。たぶんにロマンチック過ぎる主張だ。しかし「長内さんも占い好きなら、この気持ち分かりますよね?」等と言って小首を傾げられては、これ以上強く出る事は出来なかった。
あなたは諦めの溜め息をつくと、明日のコンクール本番は聴きに行くと約束した。柚織は嬉しそうにニッコリ笑うと、「頑張りますね」と言ってお守りを握り締めた。