#3 鈴原 志郎





アクション1:
 鍵をもらった際に、矢尋に昨晩の事件はどう処理されたのか聞いておきたいです。世間的には、赤室は失踪ってことになるんでしょうかね。
 あと、話振りからすでに矢尋は部屋を捜索しているかのようですが、その辺も確認しておきます。

1アクション目
 まず、帯刀君に世羅の部屋の鍵を渡すように待ち合わせることに。
 それから赤室の部屋へ行きます。ところで、赤室は独り暮らしですか? 今更ですが。
 目的は二つ。
 彼が世羅の部屋から持ち出したとされる二冊の本。
 彼の10日の行動についての手がかりとなるもの。
 前者については、本棚や机回り、後者については、手帳や電話横のメモ、それにパソコンのデータなど調べてみたいです。

2アクション目
 日下部マテリアルにクサカベ在籍時の知り合いがいるということで、そいつに会って、赤室のここ最近の様子(特に10日)について聞いてみます。

3アクション目
 オーゼイユ街、エーリッヒ等について調べる。
 ネットなどで検索してみます。あとクサナギの海外部門の同僚に心当たりがないか聞いてみます。



リアクション1:
【鈴原志郎・成否判定結果】
 ロールに2回成功、1回失敗しています。
 「幸運のお守り」を使って1回の失敗を成功に変える事が出来ます。
 「幸運のお守り」を使うかを決めて申請してください。



アクション2:
 使用します。




リアクション2:
【赤室翔彦のマンション】
 赤室翔彦はクサカベ・グループで借り上げたマンションの一室に住んでいた。茶色いレンガ風の外装の6階建てマンションの最上階の一室に「赤室」という簡素なプレートが出されている。
 日下部矢尋の話では、翔彦は単身赴任でこの白凰市にやって来ていたらしい。N県に妻と子供がいるのだという。翔彦の死は既に家族に連絡済であるが、その死因は巧妙に偽装してある、と矢尋は語った。「結晶化して砕け散りました」などと話せば、たとえそれが真実であっても、問題が生じる。矢尋の判断どおり、「真実」を「事実」とする必要はない。翔彦が死んだ「事実」は家族に伝えられべきものだが、その死にまつわる「真実」は伝えられるべきものではない。少なくとも、現段階では。

 矢尋から預かった合鍵で翔彦の部屋へと入る。
 狭い玄関には靴が一揃え。先客でもいるかと思って足音を忍ばせてリビングへと進む。明かりが漏れ、人の気配がするリビングを覗き込むと、そこには確かに先客がいた。ソファに座って書物に目を落としているのは、日下部矢尋である。
 矢尋はあなたの来訪に気付き、書物から目を上げる。そして自分の向かいのソファに腰掛けるように目配せすると、読んできた書物をあなたに見えるようにテーブルに置いた。そして更にもう一冊、横のソファの上に置いていた別の書物もテーブルの上に移動させる。
「私が来た時には、既にこのテーブルの上にあった物です。どちらにも國史院大学の蔵書印が捺してありますね」
 矢尋によるとどちらも英語で書かれた本で、一冊は詩集、もう一冊は医学書であるという。どういう経路かは不明だが、どちらも國史院大学から持ち出された物のようだ。
「少し気になるので、持ち帰って読んでみるつもりです」 

 この後、矢尋は所用があるらしく、2冊の英書を抱えて翔彦の部屋から出て行った。矢尋が去って閑寂さを取り戻したリビングを、改めて見回してみる。
 男の一人暮らしにしては、部屋は片付いている。妻が通ってきて掃除をしていたのかもしれない。もしくは、翔彦自身が綺麗好きだった可能性もある。
 リビングにあるサイドボードには、翔彦が家族と一緒に写った写真がスタンドに入れて飾ってあった。やさしく微笑む髪の長い妻と、小学校低学年くらいの娘と一緒に写る、笑顔の翔彦。粉々に砕け散った翔彦は、再び妻子に笑顔を見せる事はおろか、亡骸すら家族のもとへと帰る事はない。
 昨日の翔彦の足取りの分かるものはないかと、部屋の中を捜し歩く。これでは喫茶店の店主ではなく探偵だ。テレビで見たり本で読んだりした探偵の真似事をして部屋のあちこちを見て回る。
 電話の脇に備えられたメモ帳を調べるのは探偵モノでは良くあるシーンだ。そして、それがあながち作り事ではないことを身をもって知る。
 「國史院大学医学部」。一番上のメモ紙に走り書きされていた文字。それに続いて書かれているのは電話番号だろう。医学部に翔彦の知人がいると、普段ならそう考えたかもしれない。しかし、矢尋が持ち去った本の一冊が医学書であったことを知るあなたには、他の可能性も見えてくる。翔彦は何らかの理由で、蔵書状況を医学部に確認したがっていた?
 後で確認できるように電話番号を書き写す。しかし、確かめるまでもなくこの番号は國史院大学医学部に通じるだろう。

 フラリと入った寝室。そのベッド横のライトスタンドに見つけたものに、あなたは酷く狼狽した。
 まず写真立て。リビングにあったものとまったく同じデザインのそれに入っていた、その写真。おどけた様な笑顔で互いに抱き合う赤室翔彦と陵世羅の写真。
 そしてイヤリング。大粒の水晶のはまった人目を引く派手なデザインの、それ。リビングで見た翔彦の妻と思しき女性のイメージには合わない、それ。陵世羅に似合いそうな、それ。
 二つの小物が雄弁に語る事。翔彦と世羅の関係。
 何かがせり上がってくる。嘔吐感にも似た何か。―――リビングは誰によって整頓されていたのか?

 得体の知れない何かに急かされるようにして、あなたはリビングを突っ切り、翔彦の部屋を出た。主と、通う者とていなくなったその部屋の扉が、まるで遠慮するかのように音もなく、そっと閉まった。
(ロールに1回成功しています)

【幕間・日下部矢尋からの電話】
 どうも。日下部です。
 赤室さんと陵さんの部屋の鍵の事ですが、第三者の方に貸してしまわれたそうですね? あなたを信頼の置ける方と思って鍵をお渡ししたのですが・・・。人を見る目の無い自分に腹を立てている所です。
 赤室さんと陵さんの部屋の鍵は業者に言って変えさせました。お渡しした鍵では、もう開けられません。お手もとの鍵は処分してしまってください。
 それと、もう私には連絡して来ないでいただきたい。正直言って、あなたを見損ないました。
 では。
(これ以後「召集」を除き、あなたから日下部矢尋に連絡を取る事は出来ません)

【知り合いの話】
 クサカベ在職時に親しくなった日下部マテリアル勤務の知り合いに連絡を取る。電話で久しぶりに話がしたい旨を伝えると、彼が「すずや」まで足を運んでくれる事になった。その彼が、今カウンターに座ってコーヒーを飲んでいる。
 取り留めのない世間話を2、3交わした後、何気な風を装って赤室翔彦の話題を向ける。彼はあなたが翔彦の知り合いである事に意外な顔をしたが、そこを訝しみはしなかった。
「赤室主任、交通事故らしい。突然なんで驚いたよ」
 日下部矢尋は翔彦の死因を「交通事故」というありきたりなものとして公表したらしい。真実とは異なるが、話の落とし方としては無難な線だ。あなたたちの巻き込まれた超自然の状況を知らない者たちを納得させるには、この程度の説得力で十分なのだ。
「B13区画の事故で陵さんが亡くなってから、赤室主任も気を落としてしまってさ。仕事に支障を出さないのは流石だが、以前と比べると精彩を欠いていたのも確かだな。足繁く事故現場にも足を運んでいたようだ。まだ崩落の危険があるから止められてはいたようだがね」
 翔彦が事故の事をそこまで気に病んでいたとは知らなかった。そんな翔彦にとって見れば「招待状」は渡りに船だったのだろう。招待状の真贋はともかく、彼の中で何かのけじめをつけるために必要だったのかもしれない。
「昨日、赤室主任は会社を休んだらしい。しかも無断欠勤。珍しい事もあるもんだって話題になっていたんだが、まさかこんな事になっているとは・・・」
 知り合いはそこで言葉を切ると、少しぬるくなったコーヒーを飲み干した。

 ふと何かを言いかけようとして思いとどまり、顔を伏せた彼の様子を見逃さなかった。洗い終わったカップを拭きながら、無言で彼に続きを促す。ふぅっと一息吐いて、彼は小声でこう続けた。
「以前から赤室主任と陵さんの仲がアヤシイっていう噂があってな。陵さんに続いて赤室主任もこういう事になった今となっては確かめる術もないんだが、なんだかやりきれんよ」
 立て続けに同僚を失えば気が沈むのも理解できる。しかも、その裏には理解不能な悪意が渦巻いているかもしれないのだ。店内の沈鬱な空気を入れ替えるように、あなたは挽きたてのコーヒーを空になった彼のカップに注いだ。


【調査・3】
 長内香織から聞いた「オーゼイユ街」「エーリッヒ」という単語を調べる事にする。
 まずネットで検索をかけてみるが、「オーゼイユ街」についてはまったくヒットがなかった。「エーリッヒ」については膨大な人名がヒットするが、その内のどれも今回の騒動に関連しているものとは思えない。
 元同僚に電話をかけて心当たりがないか尋ねてみるが、以下の通りの収穫とはいえない返答があっただけだ。
「オーゼイユ街? ・・・響きからしてフランスあたりの街か? 聞いた事はないなぁ。もちろんオレもフランスの街区全てを知っているわけじゃないけどな。
 エーリッヒ? それだけじゃ分からんな。エーリッヒ・ハルトマンならドイツ軍の撃墜王だけど、お前、戦史に興味なんかあったっけ?」