#4 鈴原 志郎





アクション1:
1アクション目
 二冊の書籍についての調査。
 『ヤディスからの幻視』(Vision from Yaddith)、『ジーン・モーガンの幻視』(Jean Morgan’s Vision)の二冊について、書名も分かったのでこちらでも出来る限り調べてみることに。と言ってもネットが精一杯ですが、海外のサイトで学術系(医学関連)とオカルト系のサイトで、本の内容と評価について調べてみることにします。

2・3アクション目については長内香織と同行しての行動になります。

2アクション目
 コンクール会場の白凰文化ホールに行って、コンクール開始まで会場内を巧美を探して回ることにします。
 ヤディスやクィス=アズ、ムトゥーラについて調べていること、前日柚織が世羅に誘い出されかけていたことなどを話したうえで、巧美が何者で何を知っているのか、クィス=アズの召喚にどう関わっているのか聞いてみたいです。

3アクション目
 香織と合唱コンクールを見に。ここで、香織が柚織の歌を阻止するなりするようなら、行動をともにすることになります。



リアクション1:
【鈴原志郎・成否判定結果】
 ロールに1回失敗しています。
 「幸運のお守り」を使って1回の失敗を成功に変える事が出来ます。
 「幸運のお守り」を使うかを決めて申請してください。



アクション2:
 使用します。




リアクション2:
【ネットで検索・二冊の書物】

 『ヤディスからの幻視』(Vision from Yaddith)、『ジーン・モーガンの幻視』(Jean Morgan’s Vision)について、自前のPCで検索をかけてみることにする。今は少しでも情報が欲しい。神にも祈る思いでキーボードを叩く。

 膨大な数のリンクを辿った先に、ようやく少量ながらも有益そうな情報を見つけることが出来た。
 『ジーン・モーガンの幻視』は精神医学の研究書として刊行されたものの、今では絶版になっている。8000部が印刷されたとされているが、正体不明の機関によって極秘裏に回収が行われ、現存部数は100部を超えないと言われている。これがクィス=アズに関する記述を発端として行われた回収だとすれば・・・かなり暗示的だ。
 『ヤディスからの幻視』は上記の書物より更に希少価値が高くなっている。ロンドンのカーネルハウス出版が限定本として出版したが(現在は絶版)、とある裕福な一族が執拗なまでにこの本を買い漁り、破棄したと言われている。一説によると、この一族こそは『ヤディスからの幻視』の作者であるアリエル・プレスコットの親族であるとの事だ。
 そのような経緯もあり、両著ともその内容の詳細は語られていない。希少価値を下げたくない好事家たちが門外不出としているのか、それとも開示が出来ないほど危険な内容なのか。それを窺い知る事は出来ない。
(ロールに1回成功しています)


【白凰文化ホール】
 あなたはコーラスコンクール会場となる文化ホールへと足を運び、そこで長内香織と苑原柚織の二人に合流した。合流早々だが、リハーサルもあり、柚織はここで別れてコーラス部のメンバーと合流するという。手を振って関係者用入口へと柚織は駆けていった。
 柚織の背中を見送るあなたは、目の端に帯刀祐二の姿を捉える。祐二は柚織へと接触を図るために彼女に近付いて行くが、柚織の方はまだ彼に気付いていないらしい。

【出題】
 祐二と柚織に対して何か行動を起こすのであれば申請してください。このまま巧美を探しても構いません。



アクション3:
 香織とともに祐二と柚織の間に割ってはいる形で駆け寄ります。
 この際、周囲の様子にも気を配っておきます。
 具体的には英東児や世羅が出てきても対応できるように、と言う感じで。




リアクション3:
【柚織の決断】

 祐二の様子に只ならぬものを感じたあなたと香織は、すかさず柚織を追いかけ、二人の間に割って入った。柚織にしか目が行っていなかったのか、不意を突かれた様子で祐二が立ち止まる。B13区画、誘うあの化け物の前で別れてから、初めての邂逅。
「逃げたの? それとも、あんたも誘いを受けたの?」
 語気鋭く、香織が祐二に確認の言葉を放つ。しかし、祐二はあなたたちには視線を向けることさえせずに、柚織だけを見てその右腕を差し伸ばした。
「苑原さん、一緒に行こう。世羅さんが待ってる」
 ビクリと身を竦ませる柚織。
「あんたたちは、この娘を歌わせたいの? 邪魔したいの?」
 香織が放った第二の問いかけにも、祐二は返答を返さなかった。まるであなたや香織がいないかのように柚織だけを見つめ、彼女の気持ちをグラ付かせている。
「これは君のためなんだ。結晶化したくはないだろ? 僕はもう人があんな風に死ぬのを見るのが嫌なだけなんだ」
 俯く柚織。最悪、力尽くでも柚織を引き止めるつもりだった。しかし、柚織はそこまで弱くもなければ愚かでもなかった。顔を上げるとはっきりと首を横に振る。それが柚織の決断だった。
「行かない。もうあそこには行かない。本物の世羅さんはコンクール本番には必ず来てくれるって言っていたもの。ソロに選ばれたら、花束持って聞きに来てくれるって。だから私は待ちます。ここで、歌を歌いながら」
 柚織の決断の言葉を聞くと、祐二は初めてあなたと香織に視線を送り、次いで少し肩を竦めるとクルリと踵を返して人混みの中へと歩み去った。


【コーラスコンクール】
 満天の星空。
 青い月明かりに照らされて黒々と浮かび上がる白凰文化ホールで、合唱のコンクールが行われている。全国から集められた選りすぐりのグループが参加するとあって、客の入りは上々だ。しかし、来場者の大半が、あるコーラスグループの合唱を目当てに足を運んでいた。文化ホール前に設えられた看板にも一際大きく目立つ文字で書かれた、そのコーラスグループ。
 聖ジェローナ女学院・コーラス部。
 全国、いや、国際的にも高く評価されている臙脂のセーラー服の少女たちの歌声が、今夜のメインイベントとしてプログラムされている。

 本番前の少しの空き時間を利用してあなたたちは再び苑原柚織と集合した。いつもの臙脂のセーラー服に白いベレー帽という出で立ちの柚織が、他のコーラスメンバーから離れてあなたたちの元へとやって来る。
 香織が自分の水晶を差し出して、それを柚織の水晶を交換するように申し出たが、やはり柚織は首を横に振った。
「お守りは肌身離さず持っているからこそ持ち主を守ってくれるんです。おうちの机の引き出しの奥にしまってあるお守りの効力が、その持ち主に及ばないのと同じ理屈です」
 柚織は首から下がった水晶の首飾りに手をやって目を閉じる。柚織の癖は左のこめかみから下がる編み込みに手をやることだったが、それが今や水晶に手をやることに置き換わっている。今でも尚、柚織は水晶のお守りの贈り主に好意を寄せ、その力を信じているのだ。
「もし良かったら聞いていってください。世羅さんにも届くように、精一杯歌ってきます」
 柚織は飛び切りの笑顔を見せると、仲間のコーラスメンバーが待つ控え室へと戻っていく。

【出題】
 これからコンクールの本番に臨む柚織に対する行動があれば申請してください。ただ柚織の背中を見送るだけでも構いません。



アクション4:
 あそこまで、言い切られたら、もう彼女を止めることはできません。
 黙って成行きを見守るだけです。




リアクション4:
【最後の“雲を呼ぶ声”】

 コンクールは盛況の中執り行われていった。日頃の練習の成果を発揮すべく、老若男女様々なグループが舞台に登場し、喝采を浴びていた。レベルの高い歌声の競演に、甲乙は付けがたいと思われた。聖ジェローナのコーラス部が登場するまでは。
 一曲目を歌い始めると、会場は水を打ったように静まり返った。そして曲の終了とともに万雷の拍手。言葉は要らなかった。それほどまでに、聖ジェローナは圧倒的だった。そして二曲目を前にして、整列していた合唱隊の中から一人の少女が歩み出る。特徴的な左こめかみの編み込みが遠目からも分かる。苑原柚織だ。
 二曲目の合唱が始まり、再び静まり返る会場。そして前奏を歌い上げた仲間の少女たちの歌声に続いて、柚織のソロパートが始まる。胸の前で合わされた彼女の両の手には、陵世羅から贈られたあの水晶が握り込まれているのだろう。会場のどこかに世羅がいる事を信じて、彼女は歌い始めた。声の限り、魂を込めて。
 それは衝撃だった。
 素晴らしいという言葉では明らかに役不足だった。その上を行く賞辞があったとしても、役目を十分には果たせなかっただろう。そのはるか上を行くレベルで聞く者全てを震わせ、魅了する。それが苑原柚織の歌声だった。
 会場の誰もが固唾を飲んだ。自分の息つく音、心臓の鼓動さえもが柚織の声を妨げるものとして邪魔に感じられる。感覚は聴覚にのみ先鋭化し、思考はただ空白。会場は柚織の歌声のみに満たされた。

 白凰市気象台のレーダーに不思議な雲が現れたのは、聖ジェローナ女学院の二曲目が始まって間もなくだった。
 星晴れの夜空を塗り潰すかのようにして、突如レーダーに雲の影が発生し、白凰市上空を埋め尽くした。レーダーの異常に気付いた職員が詳細な計測の準備にかかったが、それは間に合わなかった。忽然と、レーダーから雲の影が消えていたからだ。
 計器異常として早急な検査が行われたが故障は見当たらず、気象台の職員たちは顔を見合わせて首を傾げた。
 柚織の歌声を聴いた“地球”が証に雲を集めた事など、気象台の職員たちに分かるはずもなかった。

 ギィィィィン!
 柚織の歌声に惹き付けられていたあなたを目覚めさせたのは、幸運のお守りについている水晶の立てた高い共振音だった。狂ったように光を明滅させた水晶が、振動として感じられるほどに震えている。水晶は何かと共鳴しているのだ。それはおそらく、舞台上で歌う少女が両手で握りしめる、あの水晶と・・・。

 曲は終わり、少女たちの歌声も止んだ。
 再び万雷の拍手。
 白凰文化ホールに詰めかけた聴衆は、惜しむ事無く舞台上の少女たちに拍手と賛辞を贈った。耳を聾するほどの拍手を受けて、戸惑いながらも素直に喜ぶ聖ジェローナ女学院のコーラス部員たち。
 その時、まるでテレビカメラで拡大ズームされるかのように、柚織の笑顔があなたの脳に直接映像として流れ込んできた。
 柚織は他の部員と同じく笑顔を浮かべて拍手を身に浴びていた。その表情から独唱が会心の出来であった事が読み取れる。彼女の背後に整列していたコーラス部の僚友たちからも賛辞が贈られる。その声に応えるべく、柚織は振り向こうとした。
 キン・・・ッ! と小さな音を立て、一瞬にして柚織は水晶化した。振り向こうとしていた慣性で柚織の形をした水晶像はくるりと一回転し、ゴトリと音を立てて無様に舞台上に横たわった。
 止まる拍手と歓声。凍りつく会場。
 脳に流れ込んでいた映像がプツリと切れる。悔しさに涙を浮かべる香織の横で、あなたは無言で天を仰ぎ、小さく両の拳を震わせた。

 これが苑原柚織の最期である。
(ロールに1回成功しています)