#4 帯刀 祐二
アクション1:
呪文の対象 苑原 柚織
1アクション目 クサカベ本社に行き日下部矢尋に遇い、2冊の本を借り受けるよう説得します。清虎氏の代理できたとでも言いましょう。
2アクション目 白凰文化ホールに行きます。今日は苑原柚織のコンサートのはずですが時間が判らないのでやまかんで(^^ゞ 苑原嬢に会い、もう一度世羅さんと会って話をするよう説得します。
3アクション目 國史院大学・地質学研究室に行きます。英氏とかぶりますが我ら世羅さんの犬みたいなもんですからw
リアクション1:
【K3ビル】
様々な施設が立ち並ぶ新駅前でも際立つその威容。光を反射するミラーガラスによって、あたかも自身から光を放っているかのように見える高層ビルが、新駅前のシンボル、株式会社クサカベの本社ビル「K3ビル」である。
エントランスホールの受付には、案内役の女性が2人座っており、愛想良く訪問客を担当部署へと誘導している。忙しく上下する3つのエレベーターはそれぞれが一人ずつのエレベーターガールによって運用されており、来訪客を効率よく目的の階へと運ぶ見事な手際と連携を見せている。紺色の制服を来たガードマンが入り口の両脇に立っており、3人目のガードマンはホールを巡回しながら訪問客の対応をしている。
受付嬢に名前と目的を告げると、にこりと微笑みながら手振りを交えてエレベーターへと誘導してくれる。続いてエレベーターガールに行き先の階を告げると、教育の行き届いた応対と迅速な手際であなたを目的の階へと送ってくれた。
40階のフロア一面を使ったオフィス。だだっ広いそこは、しかし、ほとんど人気がない。万座殿の第13期開発計画を担うB13区画開発チームの中枢は、今回の崩落事故を受けて完全凍結されていた。
フロアの一番奥の窓を背にしたデスクにたった一人座って、黙々と書類に目を通している人物がいる。閑散としたフロアにあって、それでも上等なスーツを隙なく着込んだヤング・エグゼクティブ。内線で連絡を受けていたのだろう。日下部矢尋は立ち上がってあなたを出迎えた。
あなたは出羽清虎の代理で二冊の書物を借り受けに来たと矢尋に告げる。赤室翔彦が命を賭してあなたたちに伝えた危機がその二冊の書物から導き出された結論であるなら、それらが矢尋の手元にあるのはあなたにとって、そして陵世羅にとって危険な事になる。
あなたの要請を聞いた矢尋は眉を顰める。そして彼のデスクの上に重ねられている件の二冊の書物を強奪されまいとするように、その上に左手を置いた。
「出羽君には本の内容やその性質を全て話したはずだが・・・。彼も納得してくれたはずだが、今更何故そんな事を言うんだい?」
矢尋の表情は疑惑から確信へと変化する。あなたにとっては、悪い方向へと。
「出羽君に頼まれたというのは嘘だな? 出羽君はついさっき本の内容を聞いて帰ったばかりだ。その彼がすぐに翻意して、しかも君を使いに遣すわけは無い」
どうやら清虎の名前を出したことは裏目に出たらしい。しかも、彼が少し前までこのフロアにいたと言う事実が、矢尋の警戒感を一層強める助けになっている。
「英さんは世羅―――と名乗る何者か―――の側に加担すると公言(情報開示)したそうだが・・・まさか君もそうなのか?」
矢尋の顔がこわばる。メガネの奥の瞳が強い警戒の色を湛え、油断なくあなたの挙動を観察している。俊敏性にものを言わせて二冊の書物を奪取することは不可能では無いかもしれない。しかし、それを持ってK3ビルから脱出することは不可能だ。
あなたは踵を返すと40階の出口へと歩き出す。明確な答えを返しさえしなければ、矢尋も強硬な手段には出られない。エレベータを使ってエントランスまで戻り、正面玄関からK3ビルを出る。
予想通り矢尋は手を出してこなかった。しかし、二冊の書物の入手も失敗に終わった。
【白凰文化ホール】
新駅前の一角にある黒い石タイルの貼られた円筒形の特徴的な建物が、白凰文化ホールである。1階に大ホールが1つ、2階に小ホールが2つあり、その他にも会議室として使える部屋が多数完備されている。
今夜に予定されているコーラスのコンクールの大看板が一際目を引く。会場は・・・まだのようだ。
空振りかと帰りかけたあなたが、目の端に臙脂色のセーラー服姿の少女を捉えたのは僥倖としか言いようがない。コンクール出場者用の特別入場口に向けて走って行くのは、間違いなく苑原柚織だった。
入口へと向かう彼女に接触すべく、あなたは歩き出す。
柚織まであと少しという所で、あなたの前に立ちはだかった者たちがいる。B13区画で世羅に抱擁を受けた瞬間に袂を分かったかつての協力者。長内香織と鈴原志郎が険しい表情であなたを睨付けている。香織と志郎が走りこんで来た事でようやくあなたに気がついた柚織は、驚いた表情を浮かべて二人の背中の陰に隠れた。
「逃げたの? それとも、あんたも誘いを受けたの?」
語気鋭い香織の声。英東児に続いて、あなたも「向こう側」へ回ったのかと詰問してくる。
「あんたたちは、この娘を歌わせたいの? 邪魔したいの?」
背中に柚織を庇いながら、香織の質問が続いて飛んだ。
(ロールに1回失敗しています)
【出題】
香織の二つの問いかけに対してどのように反応するか申請してください。
アクション2:
取りあえず香織の問いかけは無視して苑原柚織に声を掛けます。
「苑原さん、一緒に行こう。世羅さんが待ってる。」
「これは君のためなんだ、結晶化したくはないだろ? 僕はもう人があんな風に死ぬのを見るのは嫌なんだ。」
「僕が今も『生きている』ことが証拠だと信じてもらうしかないけどね。」
こんな感じで。
リアクション2:
【柚織の決断】
ビクリと身体を震わせ、あなたを見返す柚織。彼女もこれで悟っただろう。あなたが「あれからどうした」か、を。
しばらく顔を俯かせて考えていた柚織であったが、再び顔を上げるとはっきりと首を横に振った。それが柚織の決断だった。
「行かない。もうあそこには行かない。本物の世羅さんはコンクール本番には必ず来てくれるって言っていたもの。ソロに選ばれたら、花束持って聞きに来てくれるって。だから私は待ちます。ここで、歌を歌いながら」
この人込みの中、香織と志郎を向こうに回しつつ、強引に柚織を連れ出すことは不可能だろう。あなたは諦めの笑みを柚織に見せると、彼女に背を向けた。立ち去る背に柚織からの声はかからなかったが、決意に満ちた視線が注がれていることだけは感じ取れた。
【國史院大学・地質学研究室】
「今晩は」
待ち合わせをした友人に声を掛けるかのような気安さで、あなたと英東児の前に陵世羅は現れた。待ち合わせとして指定されたのは國史院大学の研究施設エリアの正門前。既に深夜であるにもかかわらず正門には煌々とした明かりがついており、無数の研究室が入った研究棟にも、未だ消えない蛍光灯の明かりが漏れる窓がいくつも見て取れる。まだ多くの研究員たちがいる気配がする。
現れた世羅の服装は、いつもの地味な「杏里の衣装」ではなかった。グレーのブラウスに黒のベスト、濃紺のパンツの組み合わせの、地味と言うよりは闇に溶けそうな出で立ちは、彼女がこれから起こす行動が隠密性に富んだものである事を物語る。
「じゃあ、行きましょ」
にこりと笑って、世羅は研究棟に向かって歩き出した。特に人目を気にする風もない、何気ない足取りで。
背後にあなたたちを従えた世羅は、迷うことなく歩を進めて目的地に到った。既に明かりの消えている一室。扉の横には「第1地質学研究室」と書かれたプレートが掲げられており、その下に研究員の名前と思しき複数のネームプレートがいくつも並んでいる。目敏いあなたはそのネームプレートの中に「巳堂英一」の名前を見つける。
無人となった研究室の扉は、当然のように施錠されている。ドアノブを握って鍵がかかっていることを確認した世羅は、しかし微塵の落胆も見せなかった。無表情のままドアノブを握り続ける世羅の右腕の袖から、幽光を放つ蔓が一本ニュルリと現れ、ドアノブに巻きついたかと思うといとも容易くそれを捻じ切った。阻む物のなくなった扉は力無く内側へと開き、3人の侵入者を招き入れた。
窓から入り込む微かな月明かりを頼りに、しかし確信に満ちた足取りで世羅は研究室を横切っていく。その歩みは、やがて奥まった一室の前で止まった。
「この中にある装置を壊して頂戴」
世羅はあなたたちの方を見ようともせずに、そう命令した。
(ロールに1回成功しています)
【出題】
世羅の言葉に従って部屋に入って命令を遂行するか、命令を拒否するか決めて申請してください。
アクション3:
命令を遂行します。破壊せよ、ハカイセヨ
リアクション3:
【装置破壊】
扉を開けて、東児とともに研究室の更に奥の一室へ足を踏み入れる。
雑多な機器や積み重ねられた資料の山に埋もれるようにして、家庭用のミシン大の、用途不明な装置が目に入る。計器やケーブルが剥き出しになったその外観から、これがハンドメイドの機器であることがうかがえる。
「それよ」
入り口の方から抑えられた世羅の声がかかる。この不思議な装置の破壊が世羅の目的らしい。しかし超自然の力を持つ彼女であれば、このさほど丈夫とは思えない装置を捻り潰す事など赤子の手を捻るようなものと思えるのだが、世羅は決して装置に近寄ろうとはしないのであった。
あなたは手近地あったパイプ状の部品を握ると、突き刺すように装置へと振り下ろした。果たしてパイプは難なく装置を貫通し、それを破壊した。念には念を入れて10回ほどパイプを突き入れ、装置を完膚なきまでにガラクタへと変える。
部屋から出たあなたたち二人を、世羅は満面の笑みと抱擁で迎えた。たおやかな腕が背に回され、白磁の頬が胸に埋められる。吐息には安堵が感じられた。
幸い見咎められる事も無く、あなたたちは研究棟を後にする。世羅は右腕をあなたの左腕に、左腕を東児の右腕に絡め、満面に喜色を浮かべて上機嫌で歩いている。
「これでお父さまも、お喜びになるわ」
障害は全て取り除かれた。
いよいよ“その時”が来る。