陽勝香炉


十


キーパー:上空にわだかまっていた靄が人の形を取り始めます。今度は、いわゆる才槌頭で、長い髭をたくわえて、白い衣をまとった、すべてが白い老人が形作られていきます。閉じていた目をカッと見開くと、すべてが白です。今度も、皆さん全員から、その姿が正面として見えます。視界の中で、近づいたり遠のいたりを繰り返しているように見えます。〈正気度〉ロールです。
宇乃:失敗! 2ポイント失いました。
山田:失敗! 3ポイント失いました。
泰野教授佐山:成功(※1ポイントの喪失)
終南真人・白キーパー:白い終南真人は、皆さんに向かって、手で差し招く動きを見せます。歓喜の表情を浮かべたまま北始成武は上昇しているのですが……ここで再びINTロールになります(全員成功)。会場の天井に向かって上昇する成武の足先から、煙の中に溶け出すように、体が消えていっていることに気がつきます。見守っていると、上昇していく速度よりも、消えていく速度の方が速くなっていきます。
宇乃:「会長! 身体が……!?」
キーパー:腰のあたりまで消えたところで「ああっ!?」と声を上げ、成武は明らかに狼狽しています。「身体が! 儂の身体がっ!! こんな……こんな……!!」胸のあたりまで消えた成武は腕をバタバタさせますが、上昇は止まりません。
佐山:なるほど。終南派が滅んだのはこれが原因か。
キーパー:(北始成武)「終南真人、お助けを! 儂の身体が……!」と助けを求めますけども、(終南真人)「何をいまさら。これが汝の望んだことではないか」と答えます。
山田:白い終南真人が語りかけて来るのか。
キーパー:(北始成武)「な!? 違う! 儂が望んだのは不老不死!」すると終南真人が「然り。天地と齢を共にする不老にして不死。それを叶えるのに、肉体は不要。精神を遍く天地と同一にする。さすれば天地と齢は等しくなろう。老いて死ぬことはない故、老病死苦を脱することもできよう」
宇乃:「じゃあ、会長の自我は消えちゃうってこと!?」
キーパー:球体も白い靄となって上空にわだかまっていたのですが、その中からひときわ高い「ケーン!」という鳥の鳴き声が聞こえます。白い靄が鳥のようなフォルムになります。それは白い雑なモザイクのような見た目をしていますが、長いくちばしを持っているので鶴かもしれません。というわけで、〈正気度〉ロールです(全員成功して正気度喪失はありませんでした)
一同:ふう~。
キーパー:鶴は成武の周りを旋回し始めます。すると香の煙と同化している成武の身体がどんどん拡散していきます。「いやぁぁぁぁぁっ!」と最後の絶叫時には、もはや目玉だけしか残っていない状況です。その目も、鶴の羽ばたきによって、あっという間に煙と同化して消えていきます。同時に香炉から放たれていた光も絶えて、煙も消えていきます。
山田:うん。
キーパー:(終南真人)「これにて、北始成武の昇仙の儀は滞りなく完了した。残る定命の者ども、老病死苦を克服したくば、怠らず精進せよ。我はいつでも招きに応じるであろう」そう言うと、鶴とともに天井に溶け込むように消えていきます。最後まで見届けた方は〈正気度〉ロールをお願いします(宇乃が2ポイント、その他の3人が1ポイントの正気度を失いました)

ライン

キーパー:これで予定されていた儀礼は終了しました。
山田:頭陀袋の中身は見なければならんでしょう。
キーパー:開けると、喉と腹部を食い破られた持田副社長の遺体が出てきます(※〈正気度〉ロールをして、山田が3ポイント、泰野教授が2ポイントの正気度を失いました)
泰野教授:抱きかかえるようにして香炉を回収します。
宇乃:とりあえず、状況をある程度理解してくれる武納警視に来てもらった方が良いじゃないの?
山田:秘書の2人はどうしていますか?
キーパー:放心状態です。
泰野教授:う~ん、結局“人胆”のレシピは回収できなかったなぁ。
キーパー:少なくとも、『鵷鶵文書』に含まれる物品の1つの詳細は分かりました。
泰野教授:使い道はね(笑)

 その後、探索者たちの通報によって武納警視が警官隊を率いてやってきます。秘書の2人(多賀と増井)と広瀬社長は持田副社長殺害の疑いで逮捕されます。
 探索者たちは事情聴取され、香炉も一旦証拠品として警察に押収されます。一部始終を記録していた宇乃の映像が提供されますが、警察はそれを証拠として採用せず、北始成武失踪については迷宮入りとなりそうです。