キーパー:さて、日本の格闘技ブームは去り、出版不況から作家も厳しいというご時世にあり、夢を追いかけていたお二方は内定ゼロという追い詰められた状態にあります。
チェ「……俺たち、人生舐めてたかもね」(←格闘家志望)
西崎「まったくね……」(←作家志望)
キーパー:格闘家と作家を目指していたとか、世間舐めすぎですよね(笑)。もう少し早く気がつけよって感じですが。
チェCONも5だしね。
西崎(笑)
キーパー:DEXも7ですからな。アスリートを目指しているのがそもそも間違いでしょ。
チェSIZの18しか有利な点がない(笑)
西崎でくの坊ですな(笑)
鷲羽先輩キーパー:「内定でないねぇ」などと溜め息をつきながらBOX(※=部室)にいると、鷲羽先輩が入ってきます。「内定、出ていないんだって?」
チェ「マジでヤバイっすよ」
キーパー:(鷲羽)「そんな内定の出ていないお前たちを助けるために……」
チェ「お!?」
西崎「バイトの紹介ですか!?」って、この期におよんでバイトとかしている場合じゃないよ(笑)
キーパー:確かに(笑)。そんな事している暇があったら一つでも多く説明会に行けって話です。
チェ「コネですか!? コネですかぁッ!?」
キーパー:(鷲羽)「実は外資系のFOST石油という会社の採用担当にコネがあるから、良かったら受けてみるか?」
西崎「おおっ!?」……まったく門外漢ですが(笑)
チェ石油会社か。「ガソリンの入れかたなら任せてください!」
キーパー:(笑)。まずそこ(現場)を目指しているのはもうダメでしょ。幹部候補生を目指しましょう。現場で窓を拭くところを最初に目指してはダメです(笑)。そこはバイトがやるところです。
チェ「面接を受けることができるってわけですか?」
キーパー:(鷲羽)「受ける気があるなら紹介してやっても良いし、小説家と格闘家を目指すのなら、ソレはソレで良いし」
チェ「喜んで面接を受けさせてください!」
西崎「お願いします!」
キーパー:(鷲羽)「じゃあ、明後日に面接の予定を入れてもらうから、ちゃんとした服装で来いよ」ということで、明後日にこのBOXに朝8時集合ということになります。鷲羽先輩が引率してくれるそうです。
西崎「よしよし!」
キーパー:「やったね!」と言って、BOXにいた内定の出ていないもう一人の四回生もこの話に乗ることになりました。
チェん?
キーパー:万理村直道(まりむら・なおみち)君という、理学部の学生です。「これで僕たちも就職できるかもしれないね」
チェ良かった、良かった! シナリオ的にも化学系が来てくれてよかった(笑)
キーパー:そうですね。彼は<化学>80%以外には<乗馬>60%しか持っていないので、それ以外のところはPCがよろしくお願いします。
チェ時間もあることだし、そのFOST石油という会社のことを調べておきます。
西崎今にもつぶれそうな会社だったらどうしよう(笑)
チェいや、ぜいたく言ってられないだろ。
キーパー:FOST石油は最近、南太平洋の深海に新しい油田を発見して新聞に載りました。本社はアメリカです。特に事件性のある報道はありません。規模も大企業と言えますね。



車【面接】
キーパー:では明後日の朝8時になりました。
チェ一着しかないスーツを着て行きます。スーツを着てますけど、リングシューズで行きます。「自分を良く知ってもらおうと思って!」と学生の間違った自己アピールをします。
キーパー:(笑)。鷲羽先輩もいつものラフな格好ではなくてネクタイを締めてきます。TPOをわきまえた格好をできるのが本当のセレブですからな。
西崎確かに。
キーパー:万理村君も含めて皆さんは白凰市にあるFOST石油の支社の入ったビルに行って、会議室のような場所に通されます。いるのは皆さんだけで、完全にコネの面接です。後は面接官に向かってファイティングポーズを取るなどの行動をしなければ、合格する所まで来ています。
二人:「ありがたい!」
キーパー:しばらく待っていると会議室の扉がガチャッと開いて、セーム・シュルトみたいな面接官が入ってきます。(面接官)「人事課長の瀬武主流斗(せむ・しゅると)です」
二人:「デカイ!」(笑)
キーパー:鷲羽先輩が「この三人なので、よろしくお願いします」と瀬武課長に紹介してくれます。あまり堅苦しくない雰囲気で「最近の石油業界についてどうお考えですか?」みたいな型通りの質問を順番にされます。まぁ、コネの面接なので。
 面接は和気藹々と進みますが、しばらくすると「コンコン」と扉が叩かれて、社員らしき男性が入ってきます。「失礼します。課長、ちょっとよろしいですか?」と言って瀬武課長を部屋の隅に連れて行ってなにやらコソコソと話をしています。それから「ちょっと失礼するよ」と言って課長は会議室から出て行って、なにやら外で激論を交わしている様子です。
二人:んん〜?
キーパー:瀬武課長は戻ってくると、「すまないね、ちょっと立て込んでしまって……」と言いかけて、皆さん三人を見渡して、ハッと何かを思いついた顔をします。それから「鷲羽さん、ちょっと……」と同席していた鷲羽先輩を部屋の隅へ連れて行って、コソコソと何かを話し始めました。
チェ内定、決まったか!?
西崎頼む!
キーパー:すると瀬武課長だけが再び会議室から出て行きます。そして鷲羽先輩が「良かったな。内定、決まりだって」と言います。
二人:「よっしゃーーー!」
キーパー:(鷲羽)「さっそく研修に入ってもらうってさ」
二人:「ええーーーっ!?」
キーパー:(鷲羽)「じゃ、オレはこれで。良かったな。ガンバレよ」と言って、鷲羽先輩は会議室から出て行きました。
チェ「あざーーーす!」
西崎「お疲れ様でした!」
キーパー:入れ替わりに瀬武課長がなにやら書類を持って戻ってきます。「うん。内定おめでとう。さっそくですが、研修に入りたいと思います」
西崎「……今からですか?」
キーパー:(瀬武)「今からです。ではこの書類を読んでサインと拇印を押してください」
二人:何ですか?
キーパー:要するに「これから研修を始めるに当たって、知りえた情報などは外へ漏らさないこと」みたいな誓約書です。裏の一番下に小さな文字で「死んでも文句言いません」と書かれています。
西崎(笑)
キーパー:書類を回収すると瀬武課長は「ここからは我が社の規定に従って行動してもらうのでそのつもりで。情報を外へ漏らさないように。ブログとかやってないだろうね!?」
チェ(スマホをいじる仕草)「内定なう。人事課長、超デカイ」
西崎いやいやいや(笑)
キーパー:(瀬武課長)「新聞等で知っているかとは思うが、我が社は南太平洋で新しい油田を発見した。そこから汲み出された原油から精製された新しいガソリンが三種類、テストのために日本に持ち込まれた。つまり環境テストをしているというわけだ」
チェ「なるほど」
キーパー:そのガソリンですが、FOSTに関係ある研究者や社員に日常生活の中で使ってもらうという実施テストを行なっています。検査員を社内で募って、市街地、海辺、山といった気候や条件の違った場所で使ってみて、燃費がどうなのかとか、そういう側面を試験している現状です。まだ非公式の試験ですが。
西崎「ふむ」
キーパー:(瀬武課長)「公道での燃料の有用性を試験しているといった状況なのだが――問題が起こった」
二人:「問題?」
キーパー:(瀬武課長)「ガソリンが日本に持ち込まれたのが10日くらい前。選抜した三人の検査員がガソリンを使い始めたのが一週間くらい前からだ。で、まぁ、要するに、その三人の検査員と連絡が取れなくなってしまった」
西崎「へ?」
キーパー:その試作ガソリンにはコードネームが付けられていて、それぞれ「オレンジ」、「パープル」、「グリーン」と呼ばれています。それぞれ品質が異なっていて、最低品質がオレンジ、中間品質がパープル、最高品質がグリーンです。それを一人に一種類ずつ渡して、試験をしてもらっていたそうです。
チェ一週間前からか……。
キーパー:検査員は連絡をしてこないし、FOSTからの連絡にも応答しないんですが、自動車を運転している所を目撃されています。つまり、どこか知らない場所へ失踪してしまったとか、死んでしまったとかいうことはないみたいです。ただ、試験をしているからには、定期的に報告があってもおかしくはないですし、そのような取り決めであったにも関わらず、連絡は取れなくなってしまいました。(瀬武課長)「そこで君たち、時間のある君たちに、研修期間として彼らの行方を調べてほしいのだ」
チェ「なるほど」
キーパー:(瀬武課長)「これが新しいガソリンの資料だ」ということで資料を渡されます。資料に目を通すと、そこに書いてあるのは何ガロン取れましたというようなことではありません。新しいガソリンの原油は例の南太平洋にある新しい油田から油井掘削機で掘削されて汲み出されているんですけど、その現場で働いている作業員たちの健康状態について書かれています。
二人:
キーパー:掘削現場で石油の蒸気に短い間晒された後、1ダースの作業員が肺炎とマラリアに似た病状になり、それとは別の10人くらいが石油の近くで働いた数日間の内に精神的な緊張により働けなくなりました。石油が油井掘削機から運び出された途端、彼らの症状はすぐに軽減しました。石油が研究されたり、空気中に晒されたりした場所で、他の散発的なストレスの徴候(睡眠障害と食欲不振)がゆっくりと報告されました。
チェということは、何か有害な成分が発散されているってことか?
キーパー:(瀬武課長)「そう、もしかしたらその可能性もある。実際、持ち込まれた石油の成分分析などをしていた研究員たちにも同じような症状が見られたそうだ」
西崎ふむ。
チェだとしたら、公道で試験なんかしている場合じゃないんじゃないか? と思いつつも、そんなこと言ったら内定取り消されるんじゃないかと思って黙っています。
西崎(笑)
キーパー:実際、燃費は驚くほど良いので、このガソリンが市場に出回れば、革命的な売れ行きになることは間違いないとFOSTは踏んでいます。1リットルで60キロ以上走るそうですから。
二人:凄いな!!
チェ良く分からないけど、何か良くない成分が含まれているのなら、それを除去した上で売り出せば良いわけだからね。
西崎そうだねぇ。
チェ「分かりました。とりあえず、その連絡が取れない検査員の方とお会いして、話を聞いてくれば良いというわけですね?」
キーパー:(瀬武課長)「そういうことだ。つまりFOSTとして怖れているのは、有害なガスによって検査員が精神的な病気になってしまったのではないのか、ということなのだ。そういうわけなので、内密に事に当たってほしい」
西崎「分かりました」
キーパー:(瀬武課長)「実はここにオレンジの検査員から数日前にかかってきた電話の録音記録がある。聴いてくれ」。なお、オレンジの検査員は橙美川秀太(とみかわ・しゅうた)という社員です。

 トゥルルル。「……もしもし……橙美川だ……(口ごもる)……橙美川秀太だ……聞いてくれ――ガソリンを市場に出すなと、それだけが言いたくて電話をしている。彼らに伝えてくれ――俺の――忠告を……良いか?……(弱々しく)あれは俺たちが考えているより恐ろしいものだ……(さらに弱々しく)……あれがどんなものか、FOSTは本当に理解しているのか……(さらに弱々しく)海の下に……(若干鮮明に)今はいつも運転をしている……(大声で鮮明に)だからガソリンを売っては駄目だ、分かるか?……ここから出て行かなくてはならない……何かが起こっていて、俺は行かなければならない……良いか? だから車から離れなければならない、そう思う……できる……多分できるさ……だから君に会おうと思う……良いか……あれを売ってはいけないということが分かったか?……良いか……それじゃ……」。ガチャ。

二人:「ふ〜む」
西崎なんとも要領を得ない、肝心なことを言わない電話ですなぁ。
チェ声が弱々しくなったり、大きくなったりしていることからすると、やっぱり精神的に安定していないみたいだね。
キーパー:録音記録を聞いた二人は<聞き耳>ロールをしてください。
チェ(コロコロ、失敗)……。
西崎(コロコロ……20)成功。
キーパー:録音記録の間中、ずっと自動車のエンジン音が聞こえます。
チェつまり自動車の中から電話をした?
キーパー:あるいは自動車のすぐ近くからかもしれません。
チェ目撃情報は必ず車に乗っている姿なんだよね? 車から離れられなくなっているっていうことか?
キーパー:(瀬武課長)「我々もなかなか人は割けないので、君たちにお願いする次第だ。君たちに探してほしいのはオレンジの試験官「橙美川」、パープルの「紫垣(しがき)」、グリーンの「緑野(みなの)」の三人だ。この三人を見つけて、会社としてはその車を回収したい。専用の直通電話を渡すので、検査員か自動車が確保できたら、すぐに連絡してくれ。そうすれば専門の回収班を向かわせる」
チェ三人の住所を聞いて家へ行ってみましょう。検査員の家族にはどこまで話して良いものですか?
キーパー:会社、というかガソリンは失踪事件とは無関係というのがFOSTのスタンスです。家族から警察に捜索願は出されているでしょう。
西崎最新の目撃情報は市内ですか?
キーパー:そうですね。橙美川が市内で車に乗っているのを目撃されていますから、まずはここから当たってみるのが良いのではないでしょうか?(瀬武課長)「では調査に当たってもらえるということで、良いね?」
西崎「分かりました」
チェ「お任せください」
キーパー:すると、まず法人カードを渡されます。必要経費はここから、ということらしいです。
チェなるほど。
キーパー:車が必要ならば貸してくれます。軽自動車ですけど。車種はミラです。誰か<自動車運転>って持っていますか?
二人:ない!
キーパー:まぁ、普通免許くらい持っていても不自然じゃないですよね。では5%ずつ差し上げましょう。
二人:おお〜!
キーパー:(瀬武課長)「では一応、件の石油がどんなものであるか、見てもらうことにしよう」課長の案内で研究室のような場所へ向かいます。これを着るように、ということでバイオハザード作業員の着るような防護服を渡されます。「では、入ろう」と言ってから、瀬武課長は振り向いてこう付け加えます。「覚悟しておいた方が良い」
二人:「……ゴクリ」
キーパー:隔壁を通り抜けると、そこはガラス張りの研究室になっています。中の研究員たちも全員が防護服を着用しています。完全防備をしていても、今まで嗅いだことのある最悪の悪臭の50倍は不快な臭いをぼんやりと感じ取ります。
チェそんなにか……。
西崎どんだけだ。
キーパー:ガソリンもかなり臭気がありますけど、それとは別種の悪臭です。有機物が腐って発酵したような悪臭です。
チェこれは原油の臭い? もしそうなら、ガソリンの臭いも手がかりになるんじゃない?
西崎そうですな。
キーパー:万理村君も顔をしかめています。
チェそうか、いたんだっけ(笑)
西崎(笑)
キーパー:ガラス越しに原油が見えるんですが、それは青灰色がかった気味の悪い暗緑色で、かすかに蛍光色を放ち、黄褐色の光雲で周囲の空気を染めます。ここで<目星>をお願いします。
チェ(コロコロ)よっしゃ! 00!!
西崎(コロコロ)30。成功。
キーパー:では西崎さんには分かったんですけど、正確に指摘することはできませんが、物質の中のどこかでぼんやりとした揺らめく発光に気付きます。
西崎ふふ〜ん(笑)。不吉な。
キーパー:精製されたガソリンは不健康そうなピンクがかった灰色で、かすかに発泡していて、泡は透明というよりも緑色です。おそらくはより揮発性が高いにもかかわらず、ここでも同様の発光が認められます。(瀬武課長)「不可解というか、恐ろしいことなのだが、この原油は今までに発見されているどの原油とも違う性質を持つことが分かっている。この物質は動物と植物の両方の組織を兼ね備え、この状態でさえ何らかの固有の新陳代謝プロセスを維持している」
チェ「んん〜? 成分が変わっていくということですか?」
キーパー:(瀬武課長)「そう、まるでこの石油が何らかの生命体であるかのように……」そう言った瀬武課長の表情は、ヘルメット越しにはうかがえません。
チェやばいな。そりゃ、やばいな。
キーパー:ということで、信じ難い事実を知らされた皆さんは正気度判定をしてください。
チェ「……生きた石油?」(喪失なし)
西崎「そんな馬鹿なっ!」(1ポイント喪失)
キーパー:万理村君も含めて、皆さんはどうやらとんでもない事件に巻き込まれつつあるようです。



戻る トップへ戻る 進む