スズメバチの巣・1

導入――目録作りのアルバイト

キーパー:季節は9月です。ちょうど夏休みが終わる頃です。皆さんがSF研のBOX(※=部室)にいると鷲羽先輩が来ます。(鷲羽)「いよう、貧乏人ども!」
一同:(笑)
キーパー:ガリガリ君を食べながら入ってきます。(鷲羽)「暇人のお前たちに、バイトの話を持ってきてやったぞ」
村瀬「割りは良いんですか?」
キーパー:(鷲羽)「割りは、まぁ、それなりに良いんじゃないの?」
村瀬「じゃあ話を聞きましょう」
キーパー:(鷲羽)「オレの知り合いに本の収集家がいるから、その蔵書の虫干しと、目録作りを手伝ってやって欲しい」
チェ「目録作りのような細かい仕事は俺向きですな」
西崎「いやいやいや」
キーパー:チェは本を運ぶ係です(笑)
チェでも15分くらいで疲れちゃうんだよ、俺(笑)(※CON 5)
西崎「ま、いいや。受けましょう」
キーパー:(鷲羽)「じゃあ、明後日、駅前に集合ということで」
西崎「分かりました」
キーパー:「じゃあな」と言って鷲羽先輩はガリガリ君を食べながらBOXを出て行きました。ガロローンという凄い車のエンジン音が遠ざかっていきます。車はレヴェントンに代えたそうです。
一同:(苦笑)

翠川 小枝キーパー:明後日になりました。では3人揃って駅前に来ました。そこには鷲羽先輩が待っていて、2人の女の子を連れています。女の子は皆さんの知り合いです。SF研仲間の穂積っていう子と、翠川さんという子です。鷲羽先輩によると「貧乏人に声をかけたらこの5人が集まった」ということだそうです。穂積はもう大学院に行くことが決まっています。
チェ先輩だ。
キーパー:翠川さんの方はというと2回生、二十歳と言うことで。
村瀬私と同回生ですね。
チェ「鷲羽先輩、駅に集合ということは、電車で行くんですか?」
キーパー:(鷲羽)「いや、ここからバスが出ているから、お前らはバスで行けよ。オレは自分の車で行くから」
チェ先輩の車は、ちょっと、窮屈なんだよね(笑)。場所は聞いたんだよね?
キーパー:降りる停留所は教えてくれます。元白凰区の、郊外へ向かう路線に乗って行くことになります。ちょっと田舎の方ということになりますね。
チェ本屋さんじゃなくて、個人の収集家なんだよね?
キーパー:そうですね。皆さん5人がバスに乗り込むのを見届けると、鷲羽先輩は自分の車に乗ってあっという間に見えなくなってしまいました。公道で本気出しちゃった、みたいなスピードで消えていきます(笑)。教えられた停留所でバスを降りると、先輩が待っています。
村瀬「お待たせしまいた」
キーパー:「こっちだぜ」と言う先輩に案内されていくと、土蔵が立ち並ぶ旧家の敷地に案内されます。見渡す限り土蔵です(笑)。
村瀬ちなみに表札にはなんて書いてあります?
キーパー:「鴻」です。鷲羽先輩は「で、どこをやりたい?」と聞いてきます。
チェ「どこって……」
キーパー:(鷲羽)「全部の土蔵を終わらせろとは言わないから」
村瀬「じゃあ、適当に右から6番目」
西崎「それでいいや」
キーパー:前回作成した目録を渡されて、「この書式で」みたいに言われます。
村瀬持ってきたパソコンで書式を作って準備します。
チェ「これだけ本があれば、俺の圧倒的な<図書館>技能が火を吹くぜ!」(※25%=初期値)
一同:(笑)
キーパー:「じゃあ、これで飴玉でも買って頑張ってくれ」と言って1万円札をおいて鷲羽先輩は立ち去ります。目録作りは皆さんと穂積さんと翠川さんの5人でやる事になります。

 鷲羽先輩から貰った1万円で飲み物などを買い揃えてから、5人は目録作りを開始します。



スズメバチの異常発生

キーパー:皆さんが黙々と作業を続けていると、「さっきからしばらく姿を見かけないな〜」と思っていた穂積の声が土蔵の裏手辺りから聞こえてきます。(穂積)「皆、ちょっと集まって〜」
チェサボってたな!?
村瀬「何ですか、穂積先輩?」
西崎「ミミズでも出ました?」
キーパー:穂積は皆さんが来ると、土蔵の屋根のひさしの辺りを指差します。そこにはスズメバチのデカイ巣があります。一抱えくらいありそうな大きさです。
チェ「ほぉ〜」
村瀬「ああ〜」
西崎「ふむ」
村瀬スズメバチの巣って売れるんだっけ?
キーパー:綺麗に採取すれば売れるでしょう。うろこ状の、古ぼけた下駄みたいな色をした立派なものです。
チェこれは……まぁ、ここには近づかないようにするしかないな。蜂は飛んでますか?
キーパー:巣の中から「ブーーン……」という音はします。ただ、周りには飛んではいないようです。ここで<知識>ロールを。(チェのみ失敗)ではスポーツ新聞しか読んでいないチェはともかく、他の二人は知っています。新聞記事によると、最近、白凰市ではスズメバチが異常発生しているそうです。
西崎「気をつけないとねぇ」
村瀬異常発生しているくらいなら、行政に連絡すれば慣れたもんで、何か手配してくれるかもしれない。
チェ特に手強いもんじゃないしね、スズメバチの巣は。
村瀬「保健所に電話してみようか? 今日だけでバイト終わるか分からないし」
チェ「まず家主さんだろ」
村瀬じゃあ、一番年上の穂積先輩にお任せしますか。
キーパー:穂積は「とりあえず行ってくるわ」ということで家主の元へ向かいます。「その間に目録作りを進めておくように」と言い残して。なお、土蔵の床下に3本ほどペットボトルが押し込まれています(笑)
チェ「体の良いサボりですか!?」
村瀬まぁ、気をつけて作業を進めるしかないですね。
キーパー:翠川さんが苦笑いをしながら「作業を続けましょう」と言って土蔵の中に入ります。
西崎なるべく土蔵の裏には近づかないということで。

キーパー:しばらくすると穂積が帰ってくるんですが、家主から保健所に連絡してもらったら、どうやら保健所もこの異常発生のために人手が足らなくてすぐには駆除に来られないとのことです。民間の駆除業者を紹介されたそうなんですが、そこもきっと手一杯でしょう。(穂積)「ちょっと来てもらうのは難しいんじゃないかしら?」
チェ家主さん的には気をつけて作業を続けてくれってことか。
村瀬それしか言いようがないからなぁ。
チェ「俺たちで駆除すれば……」
キーパー:まぁ、帰りは4人になっちゃいますけどね。
一同:ハハ……(乾いた笑い)
チェちなみに、この大量発生で被害者は出ているの?
キーパー:もちろん、刺された人はいます。そのため、市の広報などで「むやみに近づかないこと!」と注意喚起されています。
チェ「……見たことないなぁ」(※<知識>失敗)
キーパー:スポーツ欄とテレビ欄しか見てませんからね。しかも、テレビ欄は深夜しか見ていませんから。
チェ(笑)
キーパー:しばらく作業を続けていると、また穂積の姿が見えなくなります。
チェ「またかよ!?」(笑)
村瀬「まあまあ」(笑)
キーパー:そして「ちょっと、みんな来て〜」と言う声がまた裏手から(笑)
西崎「まただよ」
村瀬「またですか」
チェ行きます。ペットボトルが何個あるか確認に。
キーパー:既にペットボトルは土蔵の床下に蹴り込まれて見当たりませんが、穂積が再び蜂の巣を指差してこう指摘します。(穂積)「何か、ポタポタ落ちてきているみたい」
西崎「何だ?」
キーパー:ぶくぶくと泡立つ茶色の泥のようなものが巣から滴り落ちてきています。
チェ? こんなもの出てくるんだっけ?
西崎知らない。<生物学>とか無いからねぇ。
キーパー:滴り落ちた泥のようなものが地面に溜まっているんですが、その中に何か蠢くものがあります。
チェ「ん?」
キーパー:生きているスズメバチが、泥の中で2匹、もつれ合っています。
西崎「へぇ〜」
村瀬「ん〜?」。何だろう。蜂の巣の中から、蜂が絡まって出てくるのもおかしな気がするけど。
チェ蜂ごと落ちてきたってこと?
キーパー:そうでしょうね。よく見てみると、頭上の巣にばかり気を取られて気がつかなかったんですが、地面のあちこちに蜂の死骸が落ちています。スズメバチの成虫の死骸です。
チェつまり、蜂が巣から落ちてきているってことか。
キーパー:巣の真下ばかりではないですが、その周辺に死骸が散らばっています。ここで皆さん、<目星>ロールを。(村瀬のみ成功)落ちてきた泥の中には2匹の蜂がいたんだけど、片方の蜂の方が、もう片方の蜂よりも明らかに大きいのが分かります。
村瀬ほう。
キーパー:要するに、大きい方のスズメバチに、小さい方のスズメバチの巣が襲われたんでしょう。散らばっている死骸は小さい方のスズメバチのようです。
一同:なるほど。
村瀬巣の中で殺戮された小さい方のスズメバチの体液等が腐って落ちてきたのかもしれないな。うわぁ……。
キーパー:で、村瀬には分かるんだけど、大きい方の蜂が、七色の光を放っている。もうそろそろあたりも暗くなってきた所なので、その輝きに気付いたといった所だね。当然、周りに散らばる死骸からはまったくそのような光は見えない。
村瀬七色って……。写メで撮れそうですかね?
キーパー:やってみることはもちろん可能だよ。
村瀬撮ってみます……。カシャリ。画像には七色の光は写っていますか?
キーパー:いや、そんなものは写っていないね。でも、未だに肉眼では確認できる。何らかの、変なスペクトルなのかもしれない。
村瀬あちゃ〜、写真じゃダメなのか。角度を変えながら「光ってるよなぁ……」と言って確認します。
チェ挙動不審だ(笑)。「何やってんだ?」
村瀬「……コレ、光ってませんか?」
キーパー:しかし、幸い<目星>に失敗した2人には分からないのであった。しかしその指摘を受けて(……コロコロ)穂積がそれに気付いたようだ(※<目星>成功)。「ホントだ! 光ってる、光ってる!」
西崎「またまた〜」
村瀬「いや、またまた、じゃなくて」
キーパー:などとやっていると、背後で「きゃっ!」という悲鳴が上がります。
西崎「ん!?」
キーパー:翠川さんが、腕を痛そうに押さえています。
チェ! もしかして!?
キーパー:蜂に刺されたようです。
チェ刺した蜂は見えますか!?
キーパー:そうですねぇ、ではここでまた<目星>を。(再び村瀬のみ成功)では「ブーンッ!」という羽音を立てて、大型のスズメバチが翠川さんから離れて飛んでいる事に気付く。既に気付いている君には見えるけど、そいつは七色に光っているようだ。
村瀬「ああ! あああああああああ!」(指差す仕草)
キーパー:穂積は「大丈夫、翠川さん!?」と言って駆け寄ります。
チェ「蜂がいるなら警告してくれ!」
村瀬「そこ、そこ! とりあえず、いったんここから離れよう!」
西崎とりあえず手当てをしないと。
チェスズメバチに刺されると命に関わる事がありますからな。発作とか起こしてないよね?
キーパー:とりあえず、大丈夫のようです。でも、凄く痛がっています。つーか、凄く痛いです。オレ、刺されたことあるんで知っているんですけど(笑)(※実話)
村瀬<応急手当><応急手当>。(コロコロ……)成功。
西崎救急車でも呼びますか?
村瀬いや、救急車はちょっと大げさでは……。
西崎では病院へ。
キーパー:そうですね。騒ぎを聞きつけた鴻家の人がやって来て、事情を聞くと「では車で病院まで送りましょう」と言ってくれます。
村瀬ありがたい。
キーパー:穂積が「私が付き添いで一緒に行くから、あなたたちは後から病院に来てちょうだい」と言って翠川さんに続いて車に乗り込みます。
村瀬そこはお任せしましょう。今日はバイトもここまでですかね。
チェそうだね。
キーパー:では、皆さんはバスに乗って市内の病院まで向かう事になります。


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