スズメバチの巣・2

病院にて その1

キーパー:國史院大学の付属病院にやってきたということで。待合室で穂積が皆さんを待っています。(穂積)「こっち、こっち」。ここは「虫刺され科」(笑)の待合室なんですが、結構人が来ています。
チェああ〜。そんなに混むくらい被害が酷いんだ。
西崎う〜む。
キーパー:「異常発生しているな〜」ということが如実に分かります。しばらくすると治療を終えて翠川さんが診察室から出てきます。対応してくれたのは三津多士郎という名の医師です。40代後半の眼鏡をかけたでっぷり太った男性です。(三津多医師)「付き添いの方ですか?」
村瀬「はあ、そうです」
キーパー:(三津多医師)「一応安静にしていただいて、何らかの症状が出たらすぐにお知らせください」
チェ「はい」
キーパー:(三津多医師)「刺された場所が酷く腫れているものの、今のところ特に何があるわけでもないのですが、蜂毒に対する過敏症を持つ方に吐き気、悪寒、発熱、じんま疹などの症状が出る可能性がありますので、何日か様子を見てください。脅すわけではありませんが、呼吸困難で死に至るケースもありますので」
チェ実際に年間何人か亡くなっているしねぇ。「ところで、待合室にいる患者さんは皆、スズメバチに刺されたのですか?」
キーパー:(三津多医師)「全部ではありませんが、スズメバチに刺された患者さんも多く来ています」
チェ「なにやらでっかいスズメバチに刺されたみたいなんですが、他の患者さんもそのような事を言っていませんでしたか?」
村瀬「コレなんですけど」と言って写メを見せる。
キーパー:(三津多医師)「私はスズメバチには詳しくないのでなんともいえませんが、確かに片方が大きいようですな」

 スズメバチの巣にむやみに近づかないようにと忠告を受けて、國史院大学付属病院を後にする一行。

千重本満チェじゃあ、今晩は穂積先輩に翠川さんには付いていてもらおう。
キーパー:そこは穂積先輩が了解です。「もし、明日になって翠川さんの具合が悪いようだったら、土蔵の方には行けないけど」とのことです。
西崎「分かりました」
キーパー:翠川さんは顔色は悪いものの、とりあえず大事はないようです。「ゴメンね」と言って手を振って穂積と一緒にタクシーに乗って去って行きます。皆さんはどうしますか? 鷲羽先輩が置いていったお金はまだ結構残っていますが。
チェ確かに、すぐに帰っても何なので、飲みにでも行きますか。
村瀬食事くらいはしていきますか。
キーパー:では「熱烈ホルモン」という安い焼肉屋に入りました。
チェ「安い! 学生の味方だよ!!」みたいな(笑)
一同:(笑)
キーパー:「熱烈ホルモン」店内のどのブースでも「最近、スズメバチの被害が……」みたいな話題で持ちきりです(笑)
チェそこまで!(笑) 知らないの俺だけかよ。
西崎スポーツ面しか見ていませんからな(笑)
キーパー:店員さんも「スズメバチに刺されたりしていませんか?」と言いながらおしぼりを持ってきてくれます。
チェ時候の挨拶にまで(笑)
キーパー:それくらい大発生しているみたいですね。今、日本で一番危険な都市と言われています、白凰市は(笑)
チェなんで、俺、気がついてないんだよ(笑)
キーパー:ではお通しが来て、肉が来て、皆さんが乾杯をしたところで、電話が鳴ります。
村瀬(電話に出る仕草)「はい?」
キーパー:(穂積)「穂積ですけど。ちょっと、翠川さんの傷口の様子がおかしいの」
村瀬「は? はぁ。じゃあ、そちらに行きましょうか? と言っても、私は翠川さんの家の場所を知らないんですが」
キーパー:(穂積)「じゃあ、病院の救急窓口で落ち合いましょ」
村瀬「分かりました(ガチャ:電話を切る仕草)。そういうことなんで、病院の方へ行きましょうか」
西崎「行こう」
キーパー:ではガツ刺しだけ食って店を出る羽目になりました。



病院にて その2

キーパー:病院に着くと、またしても穂積が「こっち、こっち」と。翠川さんもその横にいます。
西崎「傷口って、どんな具合なんですか?」
キーパー:翠川さんは左の二の腕辺りを刺されたんですが、指された部分の周囲の肉がグズグズに、溶け崩れているような感じだそうです。なんて言いますか、柘榴みたいな感じです。
チェ……え〜?
西崎うわ〜。
村瀬うわ〜。
チェ「それって、蜂に刺されたとかのレベルじゃないんじゃ……」
村瀬「強烈なアレルギーかなんかですかね?」
西崎「お医者さんはなんて言ってんの?」
キーパー:先生によると、「体質のせいだろう」ということでステロイドを塗布されて、治療は終わっているそうです。
一同:う〜む。
チェ「……こういった症状が出ている患者って、他にもいるのかね?」
キーパー:他にもいるそうです。
チェじゃあ、翠川さんが初めての患者ではないのか。
キーパー:「最近の若者は蜂毒に対する抵抗性が……」みたいな、当たり障りのない事を言われたそうです。翠川さんは「すごく、痒い」と言ってはいますが、のた打ち回るほど痛いといった症状はないそうです。蜂毒に対する過敏症は、幸い出ていないそうです。痒い以外は、まぁ、元気です。
チェ「こういう症状が出た患者は他にもいるって言っていましたけど、その方たちは傷口は治ったのでしょうか?」
キーパー:(医師)「いやぁ……治ったと言って病院に来た人はいないねぇ。患者さんは治ったら病院に来なくなっちゃうものだから」
チェ「逆に、酷くなったと言って来た人とかは?」
キーパー:(医師)「そういう人はいないねぇ」
西崎放っておけば治るって事かねぇ?
村瀬う〜む。
キーパー:そうしていると、昼間に翠川さんを診察してくれた三津多医師が姿を見せます。他の患者を診察していたようです。
チェ「こんばんは」と言って、こんな状態でもう一度来ました、と話をしてみよう。
キーパー:(三津多医師)「う〜ん、なんとも言えないところですな。明日まで様子を見ていただくとしか……」
チェ「本人も痛がっているわけではないので、安心してはいるんですが」
キーパー:三津多先生もちょっと、こう、腑に落ちなさそうに首を傾げています。「もしかしたら、何らかの、新種の毒をもつ蜂なのかもしれませんな」
西崎あの光る蜂をペットボトルか何かに入れて持って来られたら良かったねぇ。
チェペットボトルは一杯ありましたからな(笑)
キーパー:「ではお大事に」と言って三津多先生は立ち去ります。
チェ我々も、今晩はもう帰るしかないですね。
西崎何かあったら連絡ちょうだいってところですかね。
キーパー:「では、私は彼女を送って行くわ」って事で、穂積は翠川さんと一緒に帰っていきます。

村瀬市の保健所のサイトに、スズメバチの特設ページとかないですかね?
キーパー:あるよ。刺された患者の症状までは書いてないけど、担当部署と担当者の名前とか、大至急駆除して欲しい場合の民間駆除業者とかが紹介されているね。
チェ七色に光っていたスズメバチって言うのは、それだけで話題性があると思うんですよ。でも当然、そんなスズメバチへの注意喚起の表示はないんだよね?
キーパー:ないですね。公にはなっていないのかもしれません。まぁ、確かに大発生していますが、とんでもなく大騒ぎになるほど被害者で溢れかえっているわけではないので、口コミレベルでしか噂は広まっていないんでしょう。
チェ今なら、スズメバチ駆除のバイトをすれば儲かるんじゃね?
村瀬儲かるでしょう。でも、駆除セットって半端なく高かった気が……。
キーパー:何万円レベルですね。
チェじゃあ、それを買うためにバイトをして……。
一同:本末転倒(笑)


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