【リアルにヤバイ! 心霊映像】



キーパー:皆さんは『リアルにヤバイ! 呪いのDVD』を製作しているHAL企画という映像製作会社の製作スタッフです。10月下旬のある日、企画会議ということでHAL企画の企画分室に集合させられます。ここの最高責任者で監修者兼ナレーションの小村義三氏が「実はスゴイ映像が手に入ったので、みんなにも見てもらいたい」と言って、素人がデジカメで撮った映像を見せます。
宜保夫:動画?
キーパー:動画です。再生機にメモリーカードを差し込んで見ることになります。映像はまったく画像処理されておらず、時間はどうやら昼間、どこかの山の中の廃屋と思しき木造の邸が映ります。
カフカ:ふむ。
キーパー:周りが鬱蒼とした木々に囲まれた空き地にポツンと建っている感じです。外見は土蔵のような造りです。ただし異様なことに、その邸の壁は黄色です。
宜保夫:黄色?
木原:へぇ〜。
キーパー:通常は白壁だったり、土壁だったりというのが普通なんですけども。その黄色の壁が一際目につきますね。
カフカ:木造の壁ではなく、漆喰壁が黄色というわけですか。
キーパー:建物に生活感はないのですが、保存状態は良さそうですね。廃墟・廃屋というよりは、空き家と言っても差し支えないレベルです。そしてその黄色い壁に何かが、黒々と書かれています。映像が邸に近寄っていくと、縦書きで、若干ゆがんだ感じで、このように書かれています(※キーパーがメモ用紙に字を書く)
一同:「……“百蔵庵”?」
キーパー:映像に時折チラチラと女性が映り、ぼそぼそと撮影者と会話する声が入っています。どうやら撮影者は男性で、女性はその連れのようです。(女性)「……これが本当に、あの百蔵庵?」という声に(男性)「そう書いてあるけど……悪戯かもな」と答えています。そんな話をしながら、邸に近づいています。
 いよいよ邸に近づくと、やはり黄色の壁が目を引きます。映像には「百蔵庵」という文字を中心に壁が映っていますが、やはり質感としては漆喰の壁の色が黄色という感じです。
カフカ:黄色く見えるわけではなく、黄色に塗ってある?
キーパー:というよりも、白壁が白色であるのと同じ意味で黄色です。
古藤:黄ばんで色が変わってしまったわけではないということですね。
キーパー:そうです。均一的に黄色です。しばらく映像は外観を映していましたが、女性が引き戸になった入り口に手をかけると、カラカラカラ……と開きます。(女性)「開いた!」、(男性)「マジかよ……」という会話が聞こえます。カメラは進んで開いた戸の中を映しますが、家の中は真っ暗闇です。外光が差し込んだそこは土間になっています。少し奥に上がり口が見えて、屋内も外観同様に結構古い造りです。
木原:ふむ。
キーパー:そこからチラリと見える範囲ですが、屋内も荒れ果てているという感じではありません。またしばらくカメラが動いて、(男性)「入ってみようか?」、(女性)「ええっ!?」と会話が聞こえます。(男性)「待ってて。車から懐中電灯持ってくるから」と言って、どうやらカメラを女性に預けたという感じですね。では皆さん、ここで<アイデア>ロールを振ってください。
木原古藤:成功。
キーパー:成功した二人はカメラが手渡される時に、一瞬、何か白いものがチラッと画面に映ったような気がしました。
木原:「! ちょっと停めて」
古藤:コマ送りで戻していきます。
キーパー:了解です。映像を戻していくと、カメラを手渡す時に今まで映っていなかった邸内の一部が映り込むんですけど、そこに白い小さな顔のようなものが映り込んでいます。
木原:「……ヤベェ」
古藤:その部分を拡大してみましょう。
キーパー:白いものは、やはり顔ですね。少女の顔です。
古藤:人形ではなく、人間っぽい?
キーパー:そうですね。しかし、まるで日本人形のような、と言うこともできます。
宜保夫:ぼんやりとではなく、比較的くっきりと顔と分かるわけですね。
カフカ:大きさはどうでしょうかね? 人形の大きさなのか、人間の大きさなのか、それとももっとデカイのか?
キーパー:闇の中に映っているので、比較対象がないためによく分かりません。
一同:なるほど。
キーパー:映像の中の二人がそれに気づいた様子はまったくありません。やがて足音が近づいてきて、どうやらまたカメラは手渡されたようです。そしてカチッと音がして、懐中電灯が点いたようです。片手に懐中電灯、片手にカメラを持っている感じなのでしょう。懐中電灯の明かりを頼りに、家の中へ入っていきます。
 辺りを見回すような感じで懐中電灯とカメラが動きます。先ほど見えていた上がり口を上がった所は畳敷きになっているようですね。かなりの広さがあって、一番奥にはどうやら仏壇があるようです。
カフカ:畳が反り返っているような様子はありますか?
キーパー:ないですね。きれいなもんです。先ほどの顔が見えたあたりは、さらに奥のほうと思われます。畳のある部屋がずどーんとありまして、左手奥に茶の間らしい空間が見えます。大き目の四角いちゃぶ台が見えます。畳の部屋には仕切りの類が一切なく、桟はあるようですが、障子や襖の類のものは見当たりません。土間の奥には台所があるようです。
 (女性)「……ねぇ、出よう?」、(男性)「大丈夫だよ。ただの空き家だって」、(女性)「何か……誰かに見られている気がする……」、(男性)「気のせいだって」というような会話をしつつ、また奥の方へちょっと進んでいきます。土間を進んでいくと、やはり台所があって、ガス等の設備はありますが、造りは相当古いみたいです。
カフカ:中も荒れてはいないんですよね? タンスがひっくり返っていたり、とか……。
キーパー:はい。まったくないですね。
カフカ:「……空き家とは限らないな」
宜保夫:「誰かが手入れをしているんじゃね?」
カフカ:「……“手入れをしているのではないでしょうか?”ではないのかね!?」と<日本語>60%で敬語の使い方を問いただします。
宜保夫:「そういう話し方、よく分かんないんスよね」
カフカ:最近の若者だ! 「モダン・ヤング! モダン・ヤング!(嘆)」(※←「最近の若者は!」のつもり)
一同:(笑)
木原:ドイツ人じゃなかったのかよ(笑)
キーパー:台所の向かい側には、さっき見えていた茶の間への上がり口があります。台所の奥にはもう少し土間が続いているようです。そしてもっと奥まで進もうとした時に、突然「きゃーーーっ!」という女性の悲鳴が上がります。そして慌てた感じで画面が動く。明かりの中に、怯えてある部分を指差している女性の姿が映ります。それを追うように明かりとカメラが動くと、そこ、真っ暗な闇の中に、目が二つ映っています。
宜保夫:目?
木原:顔じゃなくて、目なんだ。
キーパー:(男性)「うわ!?」と、今度は男性が叫び声をあげて、明かりがその箇所を照らすんですけど、そこには土壁と黒い染みしかありません。その黒い染みに、目が浮かんでいます。
木原:目は……“両目”ですか?
宜保夫:“人(=ヒト)”の目ですか?
キーパー:そうですね。明かりを向けられても特にまぶしがることもなく、瞳がぐりぐりと動き回っています。(男性)「わーーー!」、(女性)「きゃーーー!」という悲鳴と叫び声が交差して、映像はめちゃめちゃにブレます。どうやら入り口に向かって逃げているらしいですね。画面はブレたまま、屋外に飛び出して行くという流れです。そこでプツッと映像は終わる、と。もう一度<アイデア>ロールをお願いします。
木原:(コロコロ……)うわっ、失敗しちゃった!
宜保夫:(コロコロ……)また失敗した……ダイス悪いよ、コレ(笑)
古藤:ギリギリ成功。
カフカ:ということで、一人だけ成功しました(※失敗)
一同:(笑)
キーパー:古藤さんは気がつきますけども、画面はめちゃくちゃな動きをするんですけど、スイッチが切れていないので録画されっぱなしなんですが、玄関を飛び出すその瞬間、畳の間への上がり口の縁のところに、白いものが映っていることに気がつきます。それは白い足袋のようです。
古藤:「足袋……?」
キーパー:そして黒い着物の裾が映っています。
古藤:そこへ映像を巻き戻して指摘します。足袋は人の足が入っていそうですか?
キーパー:そのようです。黒い着物の裾も見えますから。
宜保夫:ようするに、誰かの足元が見えたってことだろ。
古藤:人間サイズですか?
キーパー:そうですね。周りのものとの対比からすると、人サイズですね。では映像を見終わったところで、皆さんSANチェックです。
宜保夫:「マジ、パネェっスよ! パネェっスよ!」(※3ポイント喪失)
カフカ:「オウ、モダン・ヤング! モダン・ヤング!」
一同:(笑)
キーパー:映像は全体で5分くらいです。(小村)「……凄いだろ?」
古藤:「これは……一級品ですね。このまま編集しただけで発売できそうだ」
キーパー:(小村)「今回はこのネタを追いかけてほしいんだよね。シリーズの次巻で目玉が張れる一級品だと思うんだが」
カフカ:「Ja」(※ドイツ語)
キーパー:というわけで、皆さんは取材するということになります。



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