The Monongahela Carver Cipher

意外な依頼人
:2012年5月31日
:白凰リサーチ社・金木班オフィス(明和ビル四階)
キーパー:お二方が所属しているのは「白凰リサーチ」という探偵社です。当然、普段は浮気調査やペット探しが主な業務なのですが、今は一つ仕事の山が片付いたところで、報告書などを事務所で書いているという状況です。
二人:ふむふむ。
キーパー:そうしているところにあなたたちの上司に当たる班長の金木がやって来ます。(金木)「担当してほしい案件が入ったので、こちらへ来てくれ」ということで、二人はミーティングルームに連れていかれます。ミーティングルームに入ると、ソファに依頼人らしき男性が座っています。
沢渡:何歳くらい?
キーパー:沢渡と同じくらいの年です。というか、顔見知りです。依頼人のほうも顔見知りが出てきたので驚いています。(依頼人)「! ……もしかして、沢渡か?」
沢渡:「! お前、もしかして……?」
キーパー:彼の名前は錦田志郎といって、県警の鑑識課の刑事です。
鈴木:元お仲間ってわけですな。
キーパー:かつて現役だった頃に一緒に仕事をしたことがある元同僚ですが、ここ数年、沢渡が警察を辞めてからは没交渉であった、という人物です。当然、彼はまだ現役の警察官です。
沢渡:「錦田、お前、こんなところで何やってんだ?」
キーパー:(沢渡)「それはこっちのセリフだよ」
鈴木:そりゃそうだ(笑)
キーパー:(金木)「顔見知りということなら話は早い。後はよろしく〜」ということで班長は席をはずしました。
沢渡:結構適当だな(笑)
キーパー:(錦田)「沢渡が担当してくれるのならば、秘密厳守は間違いないだろう」と言って、彼は白凰市の近辺を流れる千夜来川の流域で見つかった二人の若い女性の他殺体についての話をします。
 錦田の話とはこうである。
 千夜来川で二人の若い女性が他殺体で発見された。警察は二つの殺人事件は同一犯による犯行であると睨んでいる。
 事件そのものについては新聞等でも発表されているが、報道されていない事実がある。見つかった遺体の左大腿部には暗号らしきものが彫り込まれているのだ。現在警察は暗号の解読に全力を注いでいるが、いまだ解読にはいたっていない。
 行き詰まった暗号解読に外部のアイデアを取り入れるべく、鑑識課の人間が個人的な伝手を頼り、多角的に再検証することとなった。信頼できる情報筋から、新奇なアイデアを募ろうというわけである。
沢渡:「ふむ。錦田はなぜこの白凰リサーチに来ようと思ったんだ?」
キーパー:(錦田)「秘密厳守のできる筋といえば探偵社なら間違いないと思ったんでな。まさか沢渡がいるとは思っていなかったので、自分の勘が冴えていることに驚いているくらいだよ」
沢渡:「俺も警察を辞めてから、ここで半分くらいの給料で働いているんだぜ」と言っておきます。
鈴木:(笑)
キーパー:(笑) 錦田は何枚か事件に関する写真を取り出します。犠牲者は二人とも白凰市在住の二十台の女性ですが、それ以外の共通点並びに接点はありません。
沢渡:その暗号とやらの写真を見せてもらいましょう。
鈴木:うん。
キーパー:暗号は……こんな感じです(↓画像を見せる)。沢渡は知っていますが、錦田は暗号解読のスペシャリストです。その彼でも分からないのだそうです。
暗号

沢渡:「これは確かに言語なのか? 単なる記号ではなくて?」
キーパー:(錦田)「いや、言語を表しているのは間違いない」
鈴木:「二人の女性の死因は?」
キーパー:「複数の刃物による刺し傷で、少なくとも五種類の凶器が使われていることが分かっている」
鈴木:「五種類!?」
キーパー:(錦田)「おそらく生きたまま切り刻まれたのだろう」
沢渡:「五種類以上の凶器で、か……」
キーパー:犠牲者はどこか別の場所で切り刻まれて、川に流されて岸に打ち上げられたのだろうと思われます。
沢渡:遺棄現場は特定されていないの?
キーパー:千夜来渓谷のどこかであることは間違いなさそうだということです。死体は水を飲んでいないらしいので、やはり死んだ後に川に投げ入れられた模様です。流されている間にできた傷などからも、それははっきりしています。
鈴木:ふむ、なるほど。
キーパー:被害者の左大腿部に彫られていた暗号はそれぞれが1.5cm足らずの大きさで、おそらくは横書きだろうと考えられています。彫られている暗号は二件とも同じものです。
二人:同じ?
キーパー:同じ暗号が、同じ配列で、同じように彫られていました。文字自体は、おそらく死後に彫られたものと思われます。
沢渡:どうやって彫られたものなの?
キーパー:何らかの刃物を使ったのでしょうが、素晴らしい精度の高さと彫り込みの技術を示しています。
鈴木:メスのような細かい作業ができるもので彫りこんだのかねぇ。
キーパー:(錦田)「さて、これは知らない情報だと思うのだが……」と言って、彼は新たな写真資料を取り出します。実は同じような事件が1970〜1973年の夏にかけて米国で起きています。
鈴木:「ずいぶんと古い事件だな」
キーパー:ピッツバーグの東にモノンガヒーラ川という川があるのですが、そこを舞台として今回と同じような事件が五件起きています。犠牲者の数を除けば、あらゆる点で今回の事件と共通しています。
沢渡:犯人は?
キーパー:捕まっていません。これを踏まえて、今回の事件も含めてこの暗号は「モノンガヒーラ川の暗号彫り」と呼ばれています。
沢渡:それはオカルト・マニアの間では有名な事件なわけ?
キーパー:いえ、この五件の事件は米国でも報道されませんでした。
沢渡:ということは、このピッツバーグの事件を知って模倣しているわけではないということか。
鈴木:考えづらいねぇ。国も違うし、四半世紀も前だし。
沢渡:同一犯っていう可能性は限りなくないのか。でも彫られた暗号は米国と日本で同じなんだよね?
キーパー:まったく一緒です。過去の分析では解読できませんでしたが、暗号学の発達によりどうやら五つのメッセージがあることが分かり、実際、一文字が五つの部分に分かれるのではないかというところまで判明しています。
沢渡:それで横書きだから、英語か。
キーパー:なお犠牲者ですが、一人は進藤久未、27歳の会社員。2011年12月10日に殺されたと推定されています。もう一人は大学生の高木栄子、21歳。彼女が死んだのは2012年5月21日です。
鈴木:結構間隔が空いていますな。
沢渡:アメリカが五件でこちらがまだ二件だとすると、これからまだ事件は連続するかもしれないね。何か関連性はないかな……。
キーパー:では<天文学>ロールをしてみてください。(当然二人とも失敗)じゃあ<アイデア>ロール。
鈴木:(コロコロ)08! キラリン☆
キーパー:鈴木は分かりますが、5月21日は金環日食の日でした。
鈴木:おお!
沢渡:なるほど! じゃあ、12月10日の方は? 調べてみよう。
キーパー:ネットで一発ですね。その日は皆既月食のあった日です。
鈴木:何か共通性がありそうな。
沢渡:この後のことを考えると、何かしら天体ショー的な日付が危ない気もするよね。2012年にも天体ショーって結構あるよね。
キーパー:たくさんありますね。単純な満月・新月から流星群の極大日まで、天体ショーは定期的にあります。近いところで6月4日は部分月食ですし、6日は金星の太陽面通過です。夏至・冬至、七夕、大小合わせるとそれこそ無数にあります。
沢渡:それでも、そういうことが推定されますよってことを警告しておきます。「古今東西、こういうことに合わせて事件を起こす輩はいるからねぇ」
キーパー:(錦田)「まさか。オカルトじゃあるまいし。偶然だよ」と言って一笑に付します。
沢渡:最悪だろ!(笑)
キーパー:錦田は名刺の裏に携帯電話の番号を書いて渡してくれます。(錦田)「何でも良いから、思いついたらこの番号に連絡してほしい。報酬なのだが、調査費用の中からできるだけ捻出できるように頑張ってみる」
鈴木:(笑)
沢渡:「タダ働きじゃないだけマシか」
キーパー:(錦田)「二、三日に一度はこちらからも連絡を入れて、進捗状況を報告するよ。じゃあ、頼んだぜ」

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