過去の亡霊たち

マイケル・ボーマン & マシュー・ハートレー 作




「Chaosium」社ホームページにて公開中のシナリオ

2008年4月5日
プレイ

参加キャラクター
 ティスマン
 ピオカーナ
 ガーリック
 ハンスヘルト
 シャゼ
 グリン
 前回「時の砂漠」からの続き。キャンペーン内連作シナリオの後編。
 ホットスタートです。

過去の亡霊たち
<虹彩異色の少女・後編>

 ルテル船長スタイン、そして何より「亡者の船」とはぐれた一行が「水晶の心臓」の爆発から目覚めると、そこは見知らぬ不毛の荒野であり、しかも未知の人型クリーチャーが一行の顔を覗き込んでいた。緑色の肌をした不健康そうに萎びたデーモンを相手に、いきなりの戦闘を強いられる。覚醒後の不意を撃たれたものの、クリーチャー自体は一行の敵ではなかったが。
 クリーチャーの残していった大袋の中から風変わりな白黒の衣装を着た小人“曲がりの”ジャーメイスを助け出した一行は、次元間旅行者たる彼からここがどこかを知らされる。ここは<影の世界>。いずれ“白き狼”“赤き射手”が邂逅する事になる、<新王国>の近くにある異世界である。一行はジャーメイスの案内に従って、<影の世界>唯一にして最大の都市「アメーロン」へと向かう。

 瓦礫と汚濁の街アメーロンに着くや否やデーモンに率いられた追い剥ぎ一味に襲われるが、またしてもこれを退ける一行。戦闘後、
ガーリックは追い剥ぎ一味との戦闘を、何者かに監視されていた事に気付く。監視者の後を追おうとするが物乞いの一団に行く手を阻まれ、不審な人影は見失ってしまう。
 更に街を行った一行は、アリオッチを崇拝する教団にさらわれようとしている少年ゲイランと出会う。アリオッチ教団であれば
ピオカーナと同志ではあるが、アメーロンは「神々に見捨てられた者が投げ落とされる場所」。この教団の指導者も上方世界の神々の怒りに触れて追放された身なのだろう。ティスマンおよびジャーメイスの要請もあり、8名のカルティストを相手にゲイランを守る一行。激戦の最中ガーリックが敵のクリティカル・ヒットを受け重傷を負うも、一命は取り留める。なおも激しい戦いが続くかと思われたが、<悲劇の千年期>出身の魔術師、グランブレタン人のアフルド卿の出現によって状況は一変。一行を加勢したアフルド卿によってカルティストは敗走し、死者を出す事だけは免れる。

 次元間遷移船でアメーロンにやってきたアフルド卿は船の故障によってこの陰鬱な世界に立ち往生していた。そこへ自らの助けになりそうな一行が来た事を知り(追い剥ぎ一味の戦闘後、
ガーリックが見た人影はアフルドの使用人のものだった)、急遽接触をしたとの事だった。アフルドの船を直すには修理の部品が必要となるが、この寂れた<影の世界>では部品の調達はできない。しかし<影の世界>にもう一人、アフルドと同じ<悲劇の千年期>から旅行者が訪れていた。ガンサー・ピューという名のその旅行者に協力を依頼したアフルド卿だったが、ピューは依頼を断った上に卿に襲い掛かってきたという。辛くもその場を逃れたアフルド卿はピューを拘束する力を持った仲間を求めていた。そしてそこに一行が現れたというわけだ。

 アフルドの依頼を受け、そして何よりも<新王国>への帰還のために、一行はピューを捜索へ向かう。ピューが最後に目撃された宿屋へ行って噂を聞いてみると、ピューはアメーロンのゴロツキを束ねる実力者の一人、バザックと揉め事を起こして捕まったとの事。明日そのバザックが近くの広場で何らかのデモンストレーションを行うらしく、そこにピューが連行されてくる可能性が高い。一行は明日広場で行われるイベントにピューの所在を求める事にする。
 翌早朝、宿屋の酒場に<法>の司祭が現れて説教をし始める。酔っ払いといざこざを起こして外に叩き出された司祭が気になって、
ティスマンは司祭に接触を試みる。ヘザケルという名のその男はティスマン“ミラスの鉄槌”アナスタシア“ブレイドランドのリッチ”モーバントの戦いのサガを聞かせ、自分は20年以上もアナスタシアの帰還を待ち続けていると話す。<プラス>の世界から来た<法>の戦士(チャンピオン)アナスタシアは、モーバントを封じるために<法>のアーティファクトを使い、彼のアジトであった牧師館を石化して、その周りに力場を張り巡らしたのだという。ヘザケルはアナスタシアと彼女に付き従った兵士たちの合図で力場の一部を無効化し、モーバントを封じたアナスタシア一行を外へ逃がす役目を任されていた。しかし20年待ち続けてもアナスタシアからの合図はなく、彼はアメーロンで孤独な待機を続けているのだという。

 やがてバザックのデモンストレーションが始まり、アフルドから聞かされていたピューの風体と合致する人物が処刑されそうになっている事を、一行は知る。野次馬を掻き分けてピューの救出へ向かう一行はバザック一味と戦闘になり、4本の腕でグレートソードを2本同時に操るバザックのクリティカルヒットを受けて
ハンスヘルトが命を落とす。
 
ハンスヘルトという大きな犠牲を払いながらもバザックを倒し、ピューを救出する一行。そのピューが語るには、彼は「違う時間軸」で一行と轡を並べて戦った戦友らしい。自己紹介もなしに一行全員の名を言い当て、ハンスヘルトの死に涙するピュー。ジャーメイスの解説で互いの時間軸を異にする戦士たちが多元宇宙には存在する事が明かされる。
 そしてピューからはアフルド卿とは食い違った話がもたらされる。アフルド卿同様に船の故障に難儀していたピューは、卿と会談した際に毒を盛られ、解毒剤と引き換えに船を渡すように迫られたのだという。
 混乱する一行。

 結局一行はピューとアフルド卿に力を合わせて船を修理するように説得し、不承不承ながらも二人はそれを受け入れる(ピューは解毒剤ではなく強壮剤で毒の効果を一時押さえるだけであることに不満を隠そうとはしなかったし、アフルドも毒を盛ったことを認めようとはしなかったが)。しかし、修理を始めて3日後、船の動力源となるパーツの修復が不可能である事が判明する。船を動かすには強力な力場を発生させる何らかの装置を、この<影の世界>で見つけなければならないのだ……。
 状況は絶望的であるかと思われたが、
ティスマンはふと<法>の司祭ヘザケルが言っていた事を思い出す。モーバントの牧師館を石化させたアーティファクトが、未だに牧師館の中で作動している……。
 船の動力源を
アナスタシアのアーティファクトに定め、一行はアメーロンのはずれに建つ牧師館へと向かう。

 ヘザケルの粗末な神殿から力場の一部を無効化する「キャンセル・キー」を盗み出した一行(ついでに封じられていた妖剣「ウィスパラー」を見つけ出して、バザックとの戦闘でデーモン・ソードを失っていた
ティスマンがこれを封印する)が牧師館へと足を踏み入れようとすると、茶色と緑の目をしたオッドアイの笛吹きの少女が現れ、一行と一緒に中へ入る意思を示す。ティスマンピオカーナガーリックシャゼグリン、笛吹きの少女の6人が牧師館へ。
 牧師館内部の探索を無視して一直線にアーティファクトのあると思われる中庭へ向かう一行+笛吹きの少女。中庭には、果たしてリッチのモーバントがいて、一行を出迎えたのだった。
 不治の病に罹ったモーバントは不滅の肉体を手に入れるため“刈り入れ者”チャードロスと契約し、リッチとなった。
アナスタシアは<混沌>のリッチたるモーバントを倒す誓いをミラスに立てて肉迫するも、モーバントは次元遷移の魔術で<影の世界>へと逃げ、身を隠した。アナスタシアは軍勢を率いて<影の世界>へとやって来てモーバントと対決し、アーティファクトにて封印を成功させるが、その戦いで彼女の従者の兵士たちは一人残らずモーバントに殺され、彼女自身も力を使い果たし、脱出に割く力を残せなかった。アナスタシアは自ら持ち込んだアーティファクトに力を注ぎ込み、それを作動させて牧師館を石化させ、自らもアーティファクトの傍らにたたずむ女戦士の像に成り果てたのだった。
 アーティファクトを止めれば
アナスタシアの石化は解け、彼女はモーバントを倒すために、20年の時を越えて、戦闘を再開するだろう。そして一行はアーティファクトを止めて、それをピューとアフルドの元へ届けなければならない……。
 笛吹きの少女の懇願もあり、
ティスマンはキャンセル・キーでアーティファクトを停止させる。それと同時に笛吹きの少女の姿は薄れて消え、代わりに女戦士の像が生身の肉体を取り戻す。復活した女戦士は閉じていた目を開ける。茶色と緑色をした、虹彩異色の目を。

 ここで一行は重大な決断を迫られる。封印を解かれたモーバントと復活した
アナスタシアのどちらかと戦わなければならないのだ。
 強力な<法>の執行人たる
アナスタシアは、<混沌>の司祭であるピオカーナシャゼやストラーシャの執行人のガーリックにはうるさい存在となるだろう。ここで味方しても、いずれ殺しあう間柄にならないとも限らない。
 <混沌>寄りの一行にしてみればモーバントに味方するのが筋ではあるが、彼がチャードロスの息のかかった存在である事が障害となる。ルテル船長はチャードロスとその僕への復讐を誓っており、一行はそのルテル船長の力になる事を誓っている。チャードロスの僕を助けた事を知れば、ルテル船長は決してそれを許しはすまい。
 最後まで
ピオカーナは渋ったが、結局一行はアナスタシアとの共闘を選ぶ。
 モーバントとその護衛ゾンビとの最後の戦いの火蓋が切って落とされた……。

 修理された船で元の世界への次元遷移を行おうとしていた一行は、不毛の荒野に船腹を見せて横たわる「亡者の船」を発見する。
 再会したルテル船長と
スタインハンスヘルトの死を知って悲しむが、新しい仲間、虹彩異色の女戦士を温かく迎える。チャードロスを深く憎むアナスタシアとルテル船長の利害が一致し、<法>の戦士とグールの船長の歴史的握手が交わされる。
 
アナスタシアは助け出してくれた一行に報いるために、時間と死の女王たる“白き手の”ミラスに神性介入を試み、ハンスヘルトの息を吹き返させる事に成功する。後遺症こそ残ったものの(重傷扱い)、ハンスヘルトはまだ冒険を続けられそうだ。

 「亡者の船」もろとも次元遷移した一行は、ついに<新王国>へ戻ってくる。
 アフルド卿とガンサー・ピューは<悲劇の千年期>への帰還のためにもう少し不本意な協力状態を続けなくてはならない。そんな二人を“曲がりの”ジャーメイスがなだめすかしつつ、無事に元の世界への帰還を見届けてくれるとの事だ。
 一行がアメーロンで命を救った少年ゲイランは、<新王国>で新しい生活を始めるようだ。クォルツァザートで保護した少年ラーズルとは歳も近く、仲良くなれるかもしれない。
 “ミラスの鉄槌”
アナスタシアは自らの故郷<プラス>の世界へは帰らずに、亡者の船の傭兵団に加わった。恐らく口うるさくはあるだろうが、その力はきっと一行の役に立つだろう。

 東方海を進む「亡者の船」は、物資の補給のためにピカレイドの港湾都市チャラルに入港する。そこで補給を終えた後、予定通り
ハンスヘルトとラーズルの故郷カドサンドリアを目指すつもりだ。

 <影の世界>の悪夢の効果で「POW14との抵抗ロールに失敗すると、過去に倒した敵の亡霊の夢に悩まされて、技能値が毎夜5%ずつ減少していく」というものがあったのですが、PCのロールの目が良く、結局ほとんど効果を表さないで終わってしまったため、「シナリオタイトルに偽りあり」になってしまいました。

 大規模な戦闘が4回もあったため、「クリスタル・オブ・ダーダダース」を上回る大荒れなセッションとなりました。クリティカル・ヒットやクリティカル・パリーによって、なんとPCのメイン・デーモン・ウェポンが全て破壊され、その上予備のデーモン・ウェポンや途中で入手した妖剣「ウィスパラー」までもが破壊されました。次回冒頭ではピオカーナの大活躍が予想されます。
 また、5時間でハンドリングするつもりでシナリオに挑みましたが、「アフルド vs ピュー」、「アナスタシア vs モーバント」という2つの大きな選択と、戦闘×4によって7時間近く掛かってしまいました。くそぅ。

 今回は法の女神ミラスに深く関わるセッションであったため、最後でハンスヘルトの復活を許可しました(アナスタシアのエイラーンを使った神性介入です)。死者復活は『ストームブリンガー』では異例中の異例ですので、今回だけの特別措置です。

 今回欠席となったスタインは新導入の「ランダム外伝作成表」によって外伝「大したことない遺跡」に挑んでいた事になりました。スタインの帰りを一同心からお待ちしております(マジで)。

 「東大陸編」は今回で最終回となり、次回からは「南大陸編」に突入します。



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