抄訳

赤のQ』で使用した追加データ
(「The Unspeakable Oath #10」 "The Crucifix & The Crucible"より抜粋)



十字架と試練
 『クトゥルフ神話TRPG』へのキリスト教神話の適合
 C・L・ワーナー

 ダンテ、ボッシュ、ウンベルト・エーコなど、多くの作家や芸術家が、キリスト教の文学からインスピレーションを得て作品を生み出している。天使と悪魔のパンテオン、そしてそれらを取り巻く物語や信仰は、人類にとって最も魅力的で刺激的な創造物の一つだ。西洋文化において、畏怖と恐怖の両方を刺激するそれらの能力は、事実上、比類なきものである。
 この記事は、キリスト教のパンテオンをゲーム用語で提示することによって、『クトゥルフ神話TRPG』に新たな要素を加えることを目的としている。この資料はキーパーが非クトゥルフ神話的なオカルト・キャンペーンを作る時、あるいはプレイヤーたちに予想外の変化球を投げる時に役に立つかもしれない。著者は非悪魔派のキリスト教徒であり、天国と地獄の存在をフィクションでよく見られるように表現しようと試みていることに留意していただきたい。“真の”悪魔崇拝などの試みは行なわれていない。

十字架
  • 天使(能力値)
試練
 モンスター
  • ガーゴイル(能力値)
  • インプ
    解説:インプは小さな妖精のような生物で、悪魔が魔女や魔術師に使い魔として与える。コウモリの翼、長い鉤爪、およびビーズのような小さい目を持った見るも恐ろしい羽根のある子供のような姿が、インプの真の姿だ。もっとも、彼らは黒猫や烏といった黒色の動物の姿をとることが多いようだ。インプは魔術師や魔女の邪さや悪意を増長させ、その魂をより深い地獄へと導くために仕えている。
     インプは殺されると、人間の排泄物のような悪臭の立ち昇る灰の山を残して消え去る。インプは自在に不可視になる事が出来ますが、攻撃の時は姿を現さなくてはならない。

    STR  3D6
    CON  3D6
    SIZ  1D6
    INT  3D6
    POW  2D6+6
    DEX  4D6
    移動  9、10(飛行)武器:ダガー 80%、1D4+毒(POT14)
    噛み付き/鉤爪 35%、1D3
    装甲:なし。ただし、魔力の付与された武器だけがインプを傷つけられる。
    技能:隠れる 70%、忍び歩き 90%。
    呪文:非神話的呪文1個。
    正気度喪失:真の姿の時0/1D3、それ以外の場合は正気度を失わない。
  • ヘルハウンド(能力値)
 悪鬼
  • レッサー・デーモン(能力値)
  • アベレージ・デーモン
    解説:地獄の軍団(ルシファーに仕える、堕天使や地獄に落ちた魂の軍団)を構成しているのはこの生物だ。彼らは、非物質的で目に見える霊体として顕現する力を持っている。そのようにして出現したデーモンは多くの場合黒い肌、鉤爪のついた爪先と指先、邪悪な牙、長い角、棘付きの尻尾、背中から突き出たコウモリのような翼を備えた人型の姿をとる。これらの生き物は魔女や悪魔崇拝者の教団で最も一般的に見られ、すべての魔女団はこのアベレージ・デーモンの指導下にある。
     アベレージ・デーモンは、雑音や視覚顕現を自由自在に引き起こすことが出来るが、離れた物体を動かすには1マジック・ポイントを消費しなければならない(最高5ポンドまで)。アベレージ・デーモンは望んだ時に不可視になる事が出来る。POWと等しい時間の間、人間に憑依することが出来る。悪魔祓いをされた場合、地獄へと送り返されて、二度と戻ってくることが出来なくなる。
     物体を飛ばさない、もしくは人間に憑依していない場合(アベレージ・デーモンは稀に物体や犠牲者に憑依しています)のアベレージ・デーモンの攻撃は、POWの吸い取りだ。悪魔と標的になった犠牲者のPOW同士を戦わせる。悪魔が勝った場合、犠牲者はPOWを1D6ポイント失う。

    STR  4D6
    CON  4D6
    SIZ  3D6
    INT  5D6
    POW  5D6
    DEX  4D6
    移動  6、12(飛行)武器:小さな物体(を飛ばしてぶつける) 60%、ダメージ 1
    鉤爪(非物質的状態) 60%、ダメージ 1D6のPOWの吸い取り
    鉤爪(物質的な状態 ※犠牲者に憑依している状態) 60%、ダメージ 1D6
    装甲:魔力のある武器でしか傷つかない。
    呪文:1D3個の非神話的呪文。
    正気度喪失:1/1D8ポイント。
  • グレーター・デーモン(能力値)
  • ガーディアン・デーモン(能力値)
  • デビル(能力値)
  • サタン(能力値)
 呪文
  • 《デーモン/デビルの召喚》(Summon Dæmon / Devil)
     この呪文を唱えるには1D20ポイントの正気度と、少なくとも6ポイントのマジック・ポイントが必要となる。ルーン文字が散りばめられた魔法円を描く。呪文を唱え、5本の蝋燭(通常、人間の脂肪を固めて作ったもの)を灯し、それらを星型となるように魔法円内に配置する。時に、この呪文はある定められた時間に唱えられなくてはならない事がある(真夜中や、聖ジョージの日など)。儀式にどのような制限があろうとも、得られる結果は同じだ。硫黄臭を伴ったデーモンがランダムに出現するのだ。ロールでどのようなデーモンが現れたかを決定する。

    1D10 現れる悪魔
    1-2 ガーディアン・デーモン
    3-6 レッサー・デーモン
    7-8 アベレージ・デーモン
    9 グレーター・デーモン
    0 デビル(the Devil(=魔王)ではありません)

     出現した悪魔と召喚者のPOW同士を戦わせる(デーモンを従属させる呪文はない)。6ポイントを超えて費やしたマジック・ポイント1ポイントにつき、召喚者のロールに+1される。召喚者のロールが成功した場合、デーモンは召喚者の出す3つの要求を実行しなくてはならない。ガーディアン・デーモンであれば、召喚者の従僕として縛られてしまう。デビルであれば召喚者の要求を2つ了承し、通常、その要求を実現するために配下のデーモンを差し向けるだろう。
     しかし、もし悪魔がロールに勝った場合、悪魔は全ての貢物を引き裂いて、その無礼者の魂を道連れに地獄へと帰ってしまう。召喚者に奉仕を強要されることになった悪魔でさえ、「マスター(=召喚者)」の要求が最高の不運に見舞われるように曲解したり、可能な限り最小の結果を残すようにする。
  • 《サタンとの接触》
  • 《悪魔祓い》(Exorcism)
     この呪文には10ポイントのマジック・ポイントがコストとしてかかり、効果を表すまで数時間を要するが、正気度の喪失はない。それどころか、もし成功すれば、悪魔を打ち負かした術者に正気度のボーナスを与える。悪魔祓いは悪魔と善のパワーの戦いだが、それは悪魔のPOWと術者が呪文に費やしたマジック・ポイントとの戦いによって表される。
     最初の悪魔祓いの試みから7日以内に別の悪魔祓いが試みられたら、その更なる10マジック・ポイントは悪魔に対する戦いに加えられる。更に別の悪魔祓いが7日以内に試みられたなら、悪魔とは30ポイントで戦う。したがって、もしエクソシストたちが3週間の間に最初に試みられた悪魔祓いにそれぞれ呪文を上乗せしていったとすると、21日後には悪魔は40ポイントのマジック・ポイントと対峙しなくてはならなくなる。
     悪魔祓いは、悪魔の乗り移った品物もしくは人間の対象1つに対して、1週間に1回しか試みることが出来ない。複数の悪魔が一つの対象に取り付いている場合、最も強い悪魔のPOWを打ち負かさなくてはならない。もしも自ら望んで悪魔に取り付かれている人間の場合、悪魔はロールに宿主となっている人間のPOWを加えることが出来る。同様に、不本意に悪魔に取り付かれた人間のPOWは、悪魔に対抗するロールに加えることが可能だ。この呪文には聖書、十字架、聖水が必要になる。そして正式なキリスト教の司祭、聖職者、牧師、もしくはユダヤ人のラビ(ユダヤ教の指導者)が先導して呪文を唱えなくてはならない。
 アイテム
  • 狼皮のベルト
  • 『暗黒の聖書』(Black Bible)
     常に黒で装丁されたこの書物は、聖書の冒涜的なパロディーである。この本を読むと、読者の〈オカルト〉技能が15%上昇する。本を読んでも正気度の喪失はないが、その内容は不穏なものだ。《デーモン/デビルの召喚》と《サタンとの接触》の呪文が記載されている。