書架:6



目録51:図解 クトゥルフ神話 図解 クトゥルフ神話
刊行年:2005年 出版社:新紀元社 定価:1,300円 編著:森瀬 繚
収録作品:−

有味: 「Truth In Fantasy」シリーズでおなじみの新紀元社からついにクトゥルフ神話ものがリリース。
スミス: 「図解」と謳っているだけあって、見開きページの左側を解説に、右側を図画に使用したレイアウトですわね。
有味: おかげで文章による情報量が制限されてしまっているが、それは他で補えば良いこと。豊富な図と画の使用は今までの解説本にはない画期的な試みだね。
スミス: ここですかさず“『神話図説』はモンスターガイドなので考慮から外します”とナイスフォローですわ。
有味: この類の解説本では軽視されがちなゲームのオリジナル展開をふんだんに、意欲的に取り込もうという姿勢は素晴らしい。
スミス: 各作品間の相関関係や神話全体を俯瞰するには原作の読破が必要な感じですわね。「〜読本」のようなファン向けの書物でしょうか。
有味: 独自の基準と調査によって編集された一冊。個人的には凄く楽しんだ。



目録52:インスマス年代記 上・下 インスマス年代記
刊行年:2001年 出版社:学習研究社 定価:各730円 編者:スティーヴァン・ジョーンズ
収録作品:「インスマスを覆う影」、「大物」、「ダゴンの鐘」、他

スミス: 「深きものども」の不気味な暗躍を綴った所謂「インスマス物語」を集めた短編集ですわ。
有味: こういうテーマを絞った短編集は面白いね。本書でしか読めない物語も数多く収録されているので大変興味深い。
スミス: バラエティに富んだ作家陣の中にラムジイ・キャンブルやブライアン・ラムリイといった重鎮がいると説得力も増しますわね。オーナーのイチオシはどの短編ですの?
有味: キャンブルの「ハイ・ストリートの教会」。ホッとするほどオーソドックスな神話作品なんだが、惜しむらくはこの短編集にはそぐわない。
スミス: 確かに「深きものども」とは関係のない一篇ですわ。
有味: どちらかといえば「ダンウィッチの怪」に代表される「ヨグ=ソトース物語」系列だな。まぁ、読めれば文句は言わんがね。



目録53:地を穿つ魔 地を穿つ魔
刊行年:2006年 出版社:東京創元社 定価:800円 著者:ブライアン・ラムレイ
収録作品:−

スミス: ついにクトーニアンが本邦初上陸! タイタス・クロウ・サーガが本格的に開幕ですわ。
有味: ルールブックでは他を圧する解説文を付されながら、今ひとつ正体の見えてこなかった「地下に棲むもの」に関する積年の疑問が氷解。スッキリした。
スミス: お話の方はどうなんですの?
有味: 既に完全にホラーではないのだが、こういう邪神狩り的な活劇は神話の一ジャンルとして確立しているので割り切って楽しみます。
途中、ピースリーがクロウとアンリに向かって自分たちの活動について鼻高々に語るシーンは『クトゥルー・オペラ』の脱力アクションシーンの報告みたいで失笑したけど。
スミス: ツッコミどころ満載という感じですわね。でも名うての邪神ハンター・クロウ先生と盟友・アンリはキャラが立っていて、神話作品的には珍しいですわね。
有味: 海外のラノベってこんな感じかもな。個人的には終盤がダイジェスト風になってしまったのが残念だった。シャッド-メルとの対決は描いてほしかったなぁ。
スミス: 「サーガ」というからにはこれを嚆矢にシリーズが展開されるはずですので楽しみですわね。
有味: 「このワク-ウィラジ呪文は、ニョグタだけではなくクトーニアンにも効く祓式だったんだよ!!」
ナ ナンダッテー!!
 Ω ΩΩ
というクロウ先生燃え。



目録54:ネクロノミコン アルハザードの放浪 ネクロノミコン アルハザードの放浪
刊行年:2006年 出版社:学習研究社 定価:2,500円 著者:ドナルド・タイスン
収録作品:−

スミス: 学研からは2冊目の『ネクロノミコン』ですわね。
有味: 書架2・目録16の『魔道書ネクロノミコン』のことだな? 同じテーマへのアプローチの違いを楽しむために読み比べてみると面白い、かも。
スミス: こちらの禁断の書はどうでしたか? ちゃんと2D10の正気度が減る内容ですの?
有味: ラヴクラフトの著作から欠片を集めてきて組み上げ、足らない箇所を創造するその労力には感服した。個人的には未知の神話概念がポンポン出てきて楽しんだり戸惑ったり。
スミス: 旧支配者に関する考察は独特のものですわね。蛇パパのファンや、CoDのピアやグァオンあたりは庇護神の扱いに大満足な内容ですわ。
有味: 神話的名所のくだりは凄く面白かったけどな。あとはアルハザードが色白美形だったという事実にはショックを受けた。1/1D3くらいショックを受けた。
スミス: でも元から正気度0のオーナーには大したダメージにならなかったのでしょう? なんて……
有味: ……ほほう。それはジョークのつもりかね、スミス君? そんなあなたに「実践・魂の瓶製造」の刑をプレゼント。
スミス: セ……セクハラですわッ!!



目録55:イルーニュの巨人 イルーニュの巨人
刊行年:1986年 出版社:東京創元社 定価:530円 著者:クラーク・アシュトン・スミス
収録作品:「アタマウスの遺言」、「アヴェロワーニュの獣」、「ユーヴォラン王の船旅」、他。

有味: あー、久しぶりに読み返してみる機会があったのでエントリー。
スミス: スミス叔父さまの短編集ですわね。超古代ハイパーボレア、中世欧州アヴェロワーニュ、叔父さま活躍当時のアメリカ、超未来ゾシークと様々な舞台と時代が楽しいですわ。
有味: これでポセイドニスもあれば完璧だったかもな。全てが神話作品ではないのだが、どれも明確なオチがついていてニヤリとさせられる。
スミス: ラヴクラフト御大やロング、ハワード、ブロックと並んで初期クトゥルフ神話の礎を築いた叔父さまの魅力凝縮と言う感じですわね。
有味: 確かに凄く面白いし、スミスの短編集の中では一番流通部数が多いような気がする。それでも初版出たの20年前だし、絶版だが。
スミス: 「クトゥルー」シリーズあたりで何作か読めますけど、今ではまとめて読める機会は少ないですわね。
有味: うーん、スミスはまだ結構未訳作があるので、どこかで新しく全集でも企画しないかな? クァチル・ウタウスとか凄く読んでみたいんだけど。もしくはアヴェロワーニュとかハイパーボレアといった世界別に他作者と絡めて一冊とか。
スミス: ツァトゥグァやエイボンといった神話では外せないビッグネームの創造者ですから、神話者の皆さんには需要がありそうですわね。では最後にオーナーのイチオシは?
有味: 「聖人アゼダラク」。ラヴクラフトからは絶対出てこないこのオチ。モリアミスにだったらオレでも騙されてやるわいって感じ。



目録56:クトゥルー神話 ダークナビゲーション クトゥルー神話 ダークナビゲーション
刊行年:2006年 出版社:ぶんか社 定価:1,500円 編著:森瀬  繚
収録作品:−

スミス: あら、貸し出し中ですわ。
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目録57:妖神グルメ 妖神グルメ
刊行年:1984年 出版社:
朝日ソノラマ
定価:466円 著者:菊地 秀行
収録作品:−

有味: 国産神話作品の中ではトップクラスに評判の良い一冊。
スミス: 内容は……かなりハチャメチャですわね。
有味: 確かにこれが正伝なのかと問われると(ニガワラ)なのだが、ここまでオリジナリティにあふれていれば「これはこれで」と認める気にもなるね。この発想と展開は無二のものだと尊重できる。
スミス: クトゥルフ神話の奥深さというか、懐の深さがよく感じられますわ。
有味: 「面白い」という大前提があってこそ、だけどね。20年以上前にここまでやっちゃっているんだから、もう後は何でもありでしょ的な金字塔なのかも。
スミス: 今回は表紙画像を新旧表紙のロールオーバーにしてありますのね。
有味: NEXT版(2000年刊行)の表紙を見て「誰だっ!?」と思ったら、富手夫と江梨子みたいね。個人的には旧版のキッチュな表紙こそ『妖神グルメ』にふさわしいと思ったり。
どーでも良いけど、AmazonのマーケットプレイスだとNEXT版の方が値段が高いんだね。



目録58:ラヴクラフトの世界 ラヴクラフトの世界
刊行年:2006年 出版社:青心社 定価:1,200円 編者:スコット・デイヴィッド・アニオロフスキ
収録作品:「アーカムの蒐集家」、「タトゥル」、「ポーロス農場の変事」、他。

スミス: クトゥルフ神話を含めた、ラヴクラフト御大の作り出した世界をテーマに集められた短編集といったところですわね。
有味: ラヴクラフト自身の作品は収録されていないので、かなり「一見さんお断り」色の強い一冊だよな。個人的には編者が『The Creature Companion』と同じなのでちょっと期待していた。
スミス: (話の振り方に一抹の不安を覚えながらも、仕事ですので…)そ、それではオーナーの感想をお聞きしますわ。
有味: 正直言ってかなり微妙な本だと思う。作品ごとのアプローチのしかたがバラエティに富みすぎて焦点がぼやけている感じ。中には面白い作品もあるんだけど、「ファン必読の傑作短編アンソロジイ!」と言う訳にはいかないなぁ。やっぱりラヴクラフト関連ということであれば、スミスやキャンベルの作品の邦訳を一つ。
スミス: 残念なのですわ。そんな中でもオーナーのお気に入りを一つ。
有味: リン・カーターの「ヴァーモントの森で見いだされた謎の文書」。最後のこの一篇でこの本はどうにか踏みとどまった。カーターのクトゥルフ神話(とダーレス)愛にあふれた、なんら目新しい箇所のない神話短編。あまりの捻りのなさに、逆に和んだ。



目録59:深夜勤務 深夜勤務
刊行年:1988年 出版社:扶桑社 定価:629円 著者:スティーヴン・キング
収録作品:「人間圧搾機」、「戦場」、「トラック」、他。

スミス: キング・オブ・ホラーの短編集ですわね。
有味: キングがラヴクラフトの影響を受けたのは結構有名な話(らしい)。作者自身によるはしがきや解説者によるあとがきにもその名前を見ることができる。こういった生ける伝説がリスペクトしてくれると、ファンとしては嬉しいね。
スミス: でも、オーナーは特にラヴクラフト御大のファンではなかったのでは?
有味: 余計なことは言わんでよろしい。今はキングの話です。
スミス: 神話作品は最後に収録されている「呪われた村<ジェルサレムズ・ロット>」ですわね。
有味: それまでのキングの雰囲気とはガラリと変わってラヴクラフトをはじめとする神話作家のフォーマットに沿って書かれた一篇。日記(のような手紙)形式、財産の相続、怯える村人、そしてラスト等、いかにもな話の流れにキングの愛が感じられる。
スミス: でも小物はブロックですわ。
有味: 『妖蛆の秘密』(本文中では『うじ虫の神秘』)だね。その辺も含めて、キングはラヴクラフト・サークル全体をリスペクトして、自分もその輪の中に加わってみたかったのではないだろうか? 本作の成立経緯はぜんぜん知らないけど、キングはかなり楽しんでこの短編を書いたんじゃないかな。
スミス: 久しぶりの真面目な感想に、オーナーのことが好きになりそうですわ。
有味: キングが神話短編集を出したら一大事件だと思うんだけど、無理かなぁ。



目録60:吸血鬼伝説 ドラキュラの末裔たち 吸血鬼伝説
刊行年:1997年 出版社:原書房 定価:1,900円 編者:仁賀 克雄
収録作品:「墓からの悪魔」、「お客様はどなた?」、「マント」、他。

スミス: 吸血鬼の本ですわね。
有味: うむ。C・A・スミスの「アヴロワーニュの逢引」が収録されている。うちではアヴロワーニュ(アヴェロワーニュ)はクトゥルフ神話なのでぎりぎりセーフ。
スミス: 他にもハワード、ダーレス、カットナー、ブロックといった神話作家の大御所が書いていますが…どれも神話作品ではありませんのね。
有味: かすりもしないね。ちなみにアヴェロワーニュの吸血鬼は発達した牙はないし、日光を恐れないし、十字架もへっちゃらです。『Worlds of Cthulhu Issue #3』参照。
スミス: 洋の東西を問わず吸血鬼は作家を惹きつけますわね。
有味: “生命のエキスとも言える血液を糧に生きる高潔な夜の貴族”っていう感じのイメージが、耽美っぽい浪漫で人を惹きつけるのかもね。「ヴァンパイア:ザ・マスカレード」もそういうところから出発したんじゃないの?
スミス: ※注:オーナーはV:tMのことを良く知りません、とナイス・フォローですわ。ではオーナーのイチオシは?
有味: ウィリアム・テンの「夜だけの恋人」。吸血鬼病くらい直してみせるわい、というジャッド先生の底抜けな前向きさに深く心を打たれた。



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