童織村怪話



【プレイ・レポート】
(プレイ時間:約5時間半)

◆1日目◆ 今から5日前に鬼別渓谷(おにわかちけいこく)に散策に入った2人の女子大生・片岡恵美坂井敦子が戻っていない。警察や消防、付近の住民による捜索によって山の斜面を転落した跡、及び渓谷を流れる千夜来川流域に落ちていた持ち物が発見されるが、肝心の行方が分かっていない。
 仕事で、もしくはボランティアとしてプレイヤーキャラクター(以下PC)は2人の捜索に参加する。

中原巡査(プレイヤー:でじこの父)
 警官。県警からの応援要請で片岡・坂井両名の捜索に参加する。白凰市で起こっている「連続下着泥棒」の事件を追っているが、言動を見るに彼が一番の重要参考人な気がする。
 権力(警官の立場)と暴力(拳銃)で一行を統率するリーダー。愛読雑誌は『きゅんきゅん通信』。

日野記者(プレイヤー:編集長)
 新聞記者。別の事件を通じて、中原巡査とは顔見知り。今回は取材がてらボランティアとして捜索に参加し、中原巡査の奇特な行動を愛用のipodで克明に記録している。
 新聞記者らしい鋭い観察眼の持ち主だが、実力(ロール)がそれに追いついていない。一行の中では慎重派であり、常に暴走しっぱなしの中原巡査を諌めるのは彼の役目である。

鳥飼青年(プレイヤー:一人)
 若き無名の彫刻家。行方不明の女子大生2人と知り合いであり、ボランティアとして捜索隊に加わる。
 日野記者に続く慎重派だが、これがPOW8に裏付けられた臆病風であるとは信じたくない。一番自由業的立場だが、行動はまとも。つーか、まともじゃないPC多過ぎ。

葉月少年(プレイヤー:"Junnkie")
 自動車修理工場で働きながら白凰高校の定時制に通う学生。鳥飼青年と同じく行方不明の2人と顔見知りであるため捜索隊に参加。
 美形で背が高いが、心身ともに薄弱。ちょっと凄まれると「やめろよー」と言ってしゃがみ込んでしまう。ランボルギーニ製のトラクターを見ると息を荒くする。

 中原巡査をリーダーとした一行は、千夜来川(ちやらいがわ)流域の小村「童織村(わらおりむら)」を訪れる。この村の住人も行方不明者捜索に協力していたはずなので何か情報を得ることが出来るかも、と期待する一行だったが…。

 童織村は静寂に包まれていた。
 もとより老人ばかりが住んでいる住民数33名・家屋数20戸ほどの小さな集落のはずだが、それにしても人影がまったく見当たらないのは…? 数軒の家を訪れてみるが、やはり人はいなかった。しかし、つけっ放しのテレビや、干しかけの洗濯物、片付けられていない朝食など、不意に用事が出来てちょっと家を空けたかのような状態の家ばかり…。
 しばらく待ってみても村人は誰一人として戻って来なかった。

 状況を訝しんだ一行が村を調べると、一つの方向に向かって続いている無数の足跡を発見する。足跡の追跡を始めた一行の耳に、大量の水が流れ落ちる音――滝の流れ落ちる音――が聞こえ始める。杉の巨木の間を抜けて更に進んでいったPC一行の目の前に現れた光景は――

 足跡は木々の間を抜けて滝を見下ろす崖の上まで続く。崖の上には、まるで自殺者がそうするかのように、31足の履き物が揃えられて置かれている。滝を捜索しても死体や遺留品は見つからない。(『童織村怪話』シーン3「童織の滝」より)

 村人たちは不意に思い立ってこの滝へと足を運び、そして次々に滝壺へと身を投げたのか? 思わせぶりに滝壺の辺にたたずむ不動明王像は何も語らず、中原巡査が崖の上に「見た!」と主張するおかっぱ頭の幼女もその答えにはならなそうだった。
 滝の裏に隠された横穴を発見した一行は、奥へと進んで内部を調べてみる。最奥へと続く岩穴の途中に点々と残されたペットボトルや菓子の空き箱に首を傾げながら一行が行き着いた先には、粗末な祭壇と薄汚れたマットレス、そして女児用の体操着やスモック。先ほど中原巡査が見た幼女がこの岩穴で暮らしているのか? 深まる謎。

 滝からの帰りに土砂降りの雨に見舞われた一行は、神社の境内にあるプレハブ建ての公民館で雨をしのぐ事にする。
 この雨によって起きた土砂崩れによって国道が寸断され、童織村が陸の孤島になった事を一行が知るのは、もう少し後の事である。



◆2日目◆ 翌朝、村で何が起こったのかを知るべく探索を開始した一行の前で、次々と異常な事実が発覚する。
 神社の宮司の部屋から見つかった大量のロリコン系の雑誌、ビデオ、DVD。そしてパソコンやデジカメから発見される写真。その被写体が童織の滝で中原巡査が見かけた幼女ではないか、との憶測が出る。
 それら異常性愛のソフトの間から発見された古文書『童女檻村秘巻』に記された童織村の隠された歴史と滝の裏の岩穴の奥にあった祭壇から、なにやらカルト的な邪教の臭いを嗅ぎ取る日野記者。なお、この時点で中原巡査はロリ雑誌『きゅんきゅん通信』のバックナンバーを読みふけることに没頭。以後「きゅんきゅん巡査」と蔑称されることとなる。(゚∀゚)キュンキュン!!

 『きゅんきゅん通信』に気を散らせながらも『童女檻村秘巻』を読み始めた中原巡査を公民館に残し、日野、鳥飼、葉月の3名は村内の探索を続行する。そして昨日は気付かなかった村外れの共同倉庫の中で、両足を骨折した状態で放置された片岡恵美を発見・保護する。複数の人間に暴行された痕跡のある恵美は、息はあるものの事情を聞き出せる状態にはないので、公民館でできるだけの看護をすることにする。

 更に村内の捜索を続ける3名は初めて村の住民に遭遇する。自失状態で村を彷徨い続けるその女性は、中原巡査が捜索本部から入手した情報と年恰好から桐原冴枝と判明。この老人ばかりの村に最近引っ越してきた若夫婦の片割れであった。
 片岡恵美同様、明らかに暴行を受けた様子の冴枝は男性PC(今回PCは全員男性です)を極度に怖がるが、どうにかなだめすかして公民館に保護する。
 冴枝の後ろに従うようにして歩いていた少年・マキオは冴枝を「ママ」と呼んでいるが、捜索本部によるとこの童織村に幼い子供はいないとの事。それでも放っておくわけにいかず、マキオも保護。以後、マキオはPCたちの後ろをついて歩くようになる。

 夕刻、食事となるものを拝借に出た中原、日野、鳥飼の3名は、後ろをついてきたマキオの「あのお姉ちゃんは助けなくて良いの?」という言葉に導かれて再び共同倉庫へ。共同倉庫から少し離れた茂みの中で懐中電灯の灯りに照らされて現れたのは、半ば腐敗した坂井敦子の死体。信じられないことにここでも暴行の痕跡を見つけ、この村が現代の「ソドムの町」であることを確信する一行。
 なお、半日かけて『童女檻村秘巻』を読破した中原巡査は呪文《イゴーロナクの子供の召還/従属》を習得し、超自然の存在への備えを万全にする。この後、日野記者も呪文習得に時間を割くが、ロールに失敗し「読み損」に終わる。

<参考>
童女檻村秘巻わらおりむらひかん
 童女檻神社の宮司・浮橋秀也の私室で見つかる古文書。
 400年前にこの地で夜盗を働いていた鬼(イゴーロナクの子供)と、鬼に魅入られて周囲の村で略奪を働いていた夜盗を、武将と巫女が力を合わせて討った顛末が記されている。少女の姿をした鬼の首領(童女鬼(わらおに))は巫女によって封印され、その封印を守るべく武将と巫女の子孫が住み着いて出来たのが童女檻村(後年「童織村」と改称)であるとされている。
 滝に施された封印(童女鬼を封じ込めていた封印=不動明王像)の活性方法が記されている。
 <クトゥルフ神話>+2%、正気度喪失:1D3/1D6
 呪文:《イゴーロナクの子供の召還・従属》、《石像に魔力を付与する》



◆3日目◆ 更に翌朝、マキオの言葉に導かれて出向いた杉林の奥で、既に腐敗しきった首吊り死体を発見する。近くにあった遺書から、この腐乱死体が桐原冴枝の夫・衛であることが判明。ここに31名の自殺者(?)+桐原夫妻=童織村の全住民33名の行方が明らかになる。
 幸せな新婚生活を村ぐるみで蹂躙された桐原衛は、強い呪念を遺書にしたため、村人一人一人に呪詛の言葉を残して自殺に及んでいた。死体を降ろそうとするものの腐敗が激しく、胴体と首が離れて落下してしまい、余計に正気度が減る。

 ここでいくつかの情報に齟齬が生まれてくる。まずマキオの存在。住民数に数えられていなかったこの少年はどこから来たのか? そして中原巡査の目撃した幼女。やはり住民数に数えられていない彼女は何者なのか?
 中原巡査と葉月少年は幼女の正体を確かめるべく再び滝の裏の岩穴へと入り、そこで祭壇の上に座った幼女・フキと出会う。
 フキは自分が『童女檻村秘巻』に記された「童女鬼(わらおに)」であり、この童織村の住民のモラルを完全崩壊させて「ソドムの町」と化した張本人である事を告白する。長年にわたってこの岩穴に封印されていたが、宮司が封印を解いたおかげで力を取り戻したのだという。特異な趣味の宮司の相手をしながらも再び童織村を獣欲の坩堝に変えたフキだったが、フキの影響を受けなかった住人・新しく村に移り住んできた桐原衛が童織村の住人への強い怨念を持ったまま自殺し、その怨念に呼ばれてマキオが召喚されてしまう。マキオは召喚者である衛の呪念に従って童織村の住人全て(フキの従属主である宮司も含む)を抹殺した。

 400年以上も童織村を住処としてきたフキと、新たに召喚されたマキオ。互いに童織村を根城として独占したい2体の「イゴーロナクの子供」は、他方を駆逐するために、PCに協力を願い出る。

 住民を獣欲の虜にし、童織村をソドムの町と化したのはフキ。
 住民全員を滝壺の底に沈めたのはマキオ。


 PC一行は「フキに協力してマキオを駆逐」→「フキを従属して封印」という計画を立て、対決に臨む。

フキ:「往ね、兄弟。この地はもとより妾の住処なれば」
マキオ:「退くのはお姉ちゃんのほうだ。パパは強い方を残したがっている」


 マキオの呼び出した「イゴーロナクの子供」3体を見て葉月少年が不定の狂気に陥るものの、中原巡査の32口径リボルバーによって戦闘は1ラウンドで決着がつく。3発の弾丸を浴びてマキオは退散を余儀なくされる。
 そこへ腐乱した衛の首なし死体が現れ、マキオを“壁の向こう”へと連れ去る。その光景を見た中原巡査も狂気に陥り、誰もフキを従属させる事が出来なくなる。

 国道を寸断した土砂の撤去を終えた自衛隊と県警・消防が童織村に到着。満足したフキは引き止める事なくPC一行を見送る。
 精神に異常をきたした中原巡査、葉月少年、桐原冴枝、両足骨折の片岡恵美は消防に保護され、桐原衛の腐乱した首と坂井敦子の死体が回収される。
 無事保護(?)された日野記者と鳥飼青年の体験が記事として発表されるのは、きっと難しいだろう。

 幼鬼フキは、今も無人の童織村を徘徊している。



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