#1 玉木 司
(アクション)
【1AP目】
夕暮れの村を見て回る(厨子村全域)。
失礼に当たらない程度に、村の主だった家を観察します。同時に村人や帰郷者から話を聞いて、自分と同じように外から帰って来た者がどの位いるのか、大体の見当を付けようとします。目的は、「誰が呼ばれていないのか。そして、その理由を知る事」。世間話程度には、情報はオープンにする筈です。
【2AP目】
神社に行く(厨子神社)。
建物の配置など、出来る限り観察しようとします。「厨子耶様」と言う神格の事、そして「もう1つの神格」についての手掛かりは無いか。これを探すのが、目的と言う事になります。こちらも、基本的には情報は開示します。
(リアクション)
【夕暮れの村を見て回る】
薄暮の厨子村を見て回る。
薄れつつある白黒のキャンバスに、再び色とりどりの絵の具が乗せられるように記憶が甦ってくる。高揚する。あなたの故郷は、確かにここだ。
この村で走り回ったことのない場所はないはずだ。村を離れるまでは、暗くなるまで友だちと遊び回った。懐かしさがこみ上げてくる。彼らもこの儀のために帰郷しているのだろうか?
厨子村で目を引く建物は、豪奢な御三家の本宅と高台に見える厨子神社だ。厨子神社は山腹を切り崩して造成した、村より一段高い場所に建立されている。木々に隠れて鳥居くらいしか見えないが、細かい作りなどは後で行ってみれば分かるだろう。
夕餉の支度で忙しなく動き回る村人を捕まえて、あなたは不自然にならないように気をつけながら自分の疑問をぶつけてみる。
帰郷者は最終的には70〜80人くらいになるそうだ。あなたたちの他にも既に帰郷した者や、これから帰郷してくる者があるのだという。
また、招待客については祁堂と香住の両家が、厨子村を本籍に持つ者全てに案内状を送ったらしい。逗留先としての宿の提供は村の世帯全戸に協力が呼びかけられており、ほぼ全ての世帯で帰郷者の受入がなされるようだ。
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【厨子神社】
厨子村で最も目を引く建造物が、芦鷹の管理する厨子神社である。厨子村の規模からすると、立派過ぎるほどに感じられる豪奢な社殿に至るには、山の斜面に沿って積まれた数百段の石段を登っていかなくてはならなかった。
石造りの鳥居をくぐると境内が広がり、左右から灯篭に照らされた石畳の参道が社殿の前まで続いている。
賽銭箱の前に立つと、あなたは何気なく財布を開けて一枚の硬貨を取り出し、それを投げ入れた。目の前にぶら下がるヒモを左右に振って鈴を鳴らした後に、お祈りを・・・と思ったが、いくらヒモを揺すっても鈴は鳴らない。それもそのはずだ。ヒモの付け根に鈴が付いていない。
何かを吊るす金具のような物が見えることから、どうやら鈴は取り外されているようだ。
本殿、舞殿、宝物殿等、厨子神社には山奥の田舎にしては立派な作りの建築物が揃う。ただし、観光地でないためか、縁起を記した立て札等はまったく見当たらない。もう一歩踏み込んだ探索ができたらとは思うが、御神体の厨子は厳重に管理されているだろうし、宝物殿に入るには厳重な錠前の突破を考えなくてはならないだろう。
ただ、あなたの調査上に浮かび上がった「もう一柱の神格」についての手がかりが、まったく無いのはどういうことなのか? それほど取るに足らない存在なのか、それとも厨子耶様と激しく敵対した神格だったからなのか。
ともかく、神社で「もう一柱の神格」についての手がかりは見つからなかった。
社殿を眺めていたあなたの背後で軽い足音がした。振り返ったあなたの目に映ったのは、白い千早(ちはや)に緋袴(ひばかま)―――所謂巫女装束に身を包んだ少女だった。足袋に草履に箒。巫女と断定するに欠けるアイテムは何一つない。現れた巫女は、あなたに向かって小さく頭を下げると、そのまま境内の掃き掃除を始める。秋ではないこの季節に落ち葉などあるはずもなく、広い境内の清掃を瞬く間に仕上げていく。
少女には見覚えがある。たしか、来た時のバスで一番前に座っていたセーラー服の女子高生だ。特徴的な双房の三つ編みお下げは、見間違えようもない。
「今晩は」
会ってからしばらく経って挨拶するのも間が悪いと思ったが、あなたは思い切って少女に話しかけてみる。少女は掃除の手を止めて、あなたに視線を向けた。
「・・・コンバンワ」
愛想のない返事が一言。その後は出方を伺っているのか、あなたをじっと見つめている。話しかけたことを少し後悔した。この少女との間で、会話が弾むことは絶対無い。
「・・・神社(ここ)の子? 芦鷹家の娘さんかな?」
当り障りなさそうな話題を選び、あなたは少女との会話を続ける。少女はコクリと頷くと、掃き掃除を再開した。会話を切り上げられたのかと思って少女から視線を外したあなたの耳に、意外にも2度目の返事が返ってくる。
「・・・巧美(たくみ)。芦鷹の宮司様は叔父さん」
少女―――芦鷹巧美、芦鷹の宮司の姪―――の返事は素っ気無いものだったが、彼女の方から会話を切り上げた訳じゃないことに、あなたは少し安堵した。あのままでは去るに去れない雰囲気もあったから。
「見かけない人・・・」
再び掃除の手を休め、あなたを見つめる巧美。あなたは自分の素性を話し、今回の厨子夜婚の儀に参列するために帰郷したことを伝えた。興味があるのかないのか、巧美の反応は「・・・そう」と一言きりだった。
やがて大して手間のかからなかった境内の掃除を終え、巧美は箒を片付けた。消えていた灯篭に火を灯して回り、それが終わると石段に向かって歩き出す。あなたの前を通り過ぎる時には小さく会釈をしたが、それ以上の関心を向けることなく、巧美は足早に石段を降りてその姿を消した。
灯篭の灯りに照らされて幻幽に揺らめく厨子神社の社殿が、境内に残ったあなたを見下ろしていた。
賽銭箱の上の鈴が何故無いかを巧美に聞くのを忘れた事に気づいたのは、巧美が去ってから5分以上も後のことだった。
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