#2a 天野 信一




(アクション・1)

 1P目で花婿に挨拶し、2P目で村長にお礼を言いに行くでいきます。
 花嫁への挨拶は後編に回しましょう。



(リアクション・1)

【花婿に挨拶】
 祁堂の邸宅はすぐに分かった。
 玄関で来訪を告げると、使用人と思しき中年女性が出てくる。用向きを伝えるとすぐに邸の中に入れてくれた。客の来訪を告げに使用人が奥へと行っている間、あなたは待合室のような場所に通されたのだが、そこには先客がいた。確か、昨日同じバスに乗っていた人物だ。名は楢須藤竜一と言っただろうか。あなたが軽く礼をすると、竜一も会釈を返してくる。やがて使用人が戻ってきて、あなたたちを応接間へと案内してくれた。
 応接間に通されるとそこには一人の青年がソファに腰掛けていた。
 水色の開襟シャツに薄茶のズボン。切り整えられた頭髪は、彼が都会で暮らしていたことを物語るほどに洗練されており、清潔さを感じさせる。やや疲れた様子が見受けられたが、それを笑顔に置き換えてあなたを丁寧に出迎えた。
“爽やかな好青年”という言葉を人間化したら、きっと彼のような人物になるのだろう。
「遠い所お越しくださり、ありがとうございます。初めまして」
 祁堂礼一です、と彼は名乗った。

 厨子夜婚の儀の花婿のもとには、毎日客が来るのだろう。隣室には祝いの品がうず高く積まれている。視線の先に気づいて、礼一は苦笑いする。
「ありがたい事ですが・・・。同じ方が何度もお見えになることもありまして、あのように」
 そんな客にも、この青年は丁寧に応対しているのだろう。23歳とは思えない落ち着き振り。ただ、やはり村を挙げての祭儀の主役ともなれば、心労がかからないはずがない。先ほど見受けられた「やや疲れた様子」はそれが原因ではないのか。

 ひとしきり話をした後、あなたが辞そうかと腰を上げると、礼一は同じように腰を上げて、「もしこれから花嫁の家に行くなら、ご案内しますよ」と申し出てくる。もちろん、竜一も同じように誘う。

【出題】
 礼一の誘いを受けて【花嫁に挨拶】をするために香住家に行くか、自分で決めた行動を予定通りこなすか決めて、アクションを返信してください。礼一の誘いを受ける場合、2AP目のアクションはキャンセルとなります。



(アクション・2)

 楢須藤竜一氏と相談した結果、一緒に花嫁に挨拶をしに行くことにしました。



(リアクション・2)

【花嫁に挨拶】
 礼一の先導で香住家に着いた。さすが御三家、香住の邸宅も祁堂の邸に劣らず豪奢を極めている。
 門をくぐると、礼一は母屋に向かって来訪を告げる。礼一の声に応えて使用人と思しき女性が顔を出し、続いて上品なたたずまいの貴婦人が顔を出した。あなたと竜一に向かって一礼をしたこの貴婦人こそ、現・香住家当主、花嫁・沙奈枝の実母、須美子その人である。
 須美子に断りを入れた礼一は、あなたたちを母屋から離れた一角、所謂「離れ」に当たる一室に案内する。礼一は障子越しに一声かけ、障子を開けてあなたたちを中へと促す。
「許婚の、沙奈枝です」
 礼一は中にいた人物を、そう紹介した。

 蓬色の着物。薄桃色の帯。真紅の帯締め。
 行儀よく膝の上で手を重ねて正座した女性が、そこにいた。
 鴉羽色の髪は背中の中程まで伸ばされ、前髪は瞼の上で綺麗に切り揃えられている。閉じられた両目に長い睫毛。抜けるように白い肌と朱を引いたように艶やかな口唇。その唇には薄っすらと笑みが浮かんでいるようにも見える。
 香住沙奈枝。花嫁にして今回の儀の嫁神様。

 20歳の花嫁は浮世離れした美しさの持ち主ではあったが、入室したあなたたちに挨拶をするどころか、気づいた様子さえもなかった。うろたえるあなたたちの背後から、礼一の声がかかる。
「つまり、沙奈枝はそういう娘なんです」
 盲目にして白痴の花嫁。ただ美しく生きてきただけの、咲くことのない花。

 そしてあなたは気づく。正座する沙奈枝の左足首にはめられた木製の足枷と、それに続く細い縄と、縄の先が巻きついた床の間の柱、に。
「沙奈枝がフラフラと何処かへ行ってしまわないように。少し可哀想ですが、これも沙奈枝の身を案じればこそ、との事です」
 やり切れない様子で沙奈枝の隣に腰を下ろして、足枷に触れる礼一。足枷には使い込まれた様子が見て取れ、この状況が昨日今日始まったものでないことを雄弁に物語った。

 深く呼吸をする以外は身じろぎさえしない沙奈枝の横に腰掛けた礼一が語る。
 礼一の家族もあなた同様、厨子村を出て都会で暮らしていたのだという。彼の両親が不慮の事故で死んだのが5年前。その時、手を差し伸べてくれたのが祁堂の家だったという。それまでほとんど親交のなかった祁堂の本家が、礼一の生活費や学費の面倒を見て、大学を卒業させてくれるという。ただ一つの条件と引き換えに。
“大学を卒業したら、厨子村に戻って、祁堂が定めた許婚と結婚すること”
 それが条件だった。既に頼れる身寄りは祁堂の家しかない礼一はその条件を飲み、約束どおり不自由なく大学生活を終えた。
 大学卒業後、しばらく商社勤めをしていた礼一に、祁堂の家からお呼びがかかる。帰郷せよ、と。
 短い社会人生活を終えて、厨子村に舞い戻ったのは今から3ヶ月ほど前だ。
 帰郷した礼一を待っていたのは、厨子夜婚の儀の花婿という立場と、ほとんど面識のない許婚、沙奈枝。5年前に覚悟を決めた礼一にとって、それは驚きこそすれ、絶望するほどの衝撃ではなかった。

 覚悟は決まっている。祁堂の指示に従って厨子夜婚の儀によって沙奈枝と結ばれ、厨子神社の宮司として村に骨を埋める。
「ただ・・・」
 礼一は不憫そうに隣の沙奈枝に目を移す。
「沙奈枝はそれで良いのか、とね。ほとんど見ず知らずの男と結婚して、もしかしたら子供をもうけて、生きていく。いくら心がないからと言っても、それでは沙奈枝が可哀想なんじゃないかなと、そう思うのです」
 礼一の言葉に、沙奈枝は応えない。二人が祝言を挙げれば、死ぬまでこの状態が続くのだろう。それは、礼一にとっても不幸な事だとは言えないだろうか?

 再び母屋の須美子に声をかけてから、あなたたちと礼一は香住の邸を後にした。礼一と竜一とは、門の前で別れた。
(※1回ロールに成功しています)