#4 天野 信一




(アクション・1)

 今回は1AP目に「護符奪取任務」に参加します。その時、失敗もしくは捕まりそうになった場合には楢須藤氏に携帯で知らせます。

 2〜3AP目は芦鷹巧美さんと接触し、できれば我々の味方になるよう説得しようと思います。そして彼女の知っている情報があれば同盟している人達に連絡します。(もちろん捕まってなかったらですけど)

・個人的には花嫁の沙奈枝さんはもちろんだが、巧美さんも人生を村に縛られているので助けたいと思っている。

・母の目を治療出来ずに一度は挫折したが、その原因が「ずしやこん」にあると知ったので、「ずしゃこん」によってもたらされるであろう不幸を1つでも減らしたいと思っている。

・このままでは巧美さんも今後産まれてくるだろう子供も25年後には確実に不幸になる。

・村の大人の様に全てを諦めてしまうには巧美さんは若すぎる。精一杯あがくべきだ。

 等々のことを、相手を子供扱いせずに説得したい。



(リアクション・1)

【四神の護符奪取】
 未明、厨子神社へ続く石段のたもとに人影があった。その数、三。四神の護符を狙う、言わば“にわか盗賊団”である。盗賊団の首領は、香住夕貴。昨日とは違う、活動的な出で立ちで計画に臨む。

 胸部に紫色で「Goddess!!」とプリントされた白のTシャツは、左わき腹の部分で結ばれて丈を詰められており、ヘソとくびれたウエストの素肌が見えている。ボトムはデニムのショートパンツで、足元は編み上げ式の白いサンダル。活動的というよりは挑発的でさえある軽装の夕貴。トレードマークの金色のポニーテールは頭頂部で結い上げられ、黄橙色のシニオンキャップを被せられている。

「一発勝負よ。失敗したら全力で逃げて」
 落ち合う場所は、昨日の廃水車小屋と予め決めてある。夕貴の最後の指示に頷き合うと、あなたたちは境内に向かって石段を上り始めた。

 薄闇に沈む厨子神社の境内に人影はない。しかし、本殿からチラチラと明かりが漏れている。夕貴の見立て通り、寝ずの番は三名だ。後1時間もしない内に、見張りは交代の時間を迎える。その直前の、気の緩んだ瞬間を狙うのが夕貴の目論見だった。息を潜めて本殿を窺うと、三人とも居眠りしているのか、コックリコックリと舟を漕ぐ者や、横になっている者さえいる。
 あなたたちは顔を見合わせ、互いに目配せすると、足音を忍ばせて本殿へと迫った。
 張り番が目を覚ます気配はない。一気に厨子までの距離を詰め、手を伸ばす。

 厨子の前まで足を進めた時、低くうめいて張り番の一人が寝返りを打った。その際、あなたの足に張り番の体が触れる。張り番の目が薄っすらと開き、一瞬後、その目が大きく見開かれた。
「誰だ、お前ら!?」
 誰何の声を合図に、三人の張り番が全員目を覚ます。立ち上がればすぐにでも飛びかかって来そうな様子だ。
「退いて」
 夕貴の声を合図にあなたたちは本殿から飛び出す。打ち合わせていた通り、思い思いの方角へと散り、追っ手を撒く。不幸中の幸いか、追っ手に捕まった者はいなかった。
 朝日が射す頃になって、水車小屋に三人が集合した。あなた、香住薫、香住夕貴。皆一様に肩を落とし、互いを労う言葉も出てこない。

 計画は失敗した。
(※ロールに1回失敗しています)


【芦鷹巧美に会う】
 鳥居をくぐって境内に入ると、何やら騒然としている。宮司・芦鷹真輔の姿こそ見えないが、村人が20人くらい集まって境内を走り回っている。中には手に棒を持って武装している者も何人かおり、物々しく不穏な空気が流れている。その様子や、漏れ聞こえてくる会話から察するに、どうやら人を探しているらしい。

 本殿の正面入り口は開け放たれ、中に祭壇が組んであるのが見える。祭壇の中央には神社の御神体「厨子」が置かれており、祭壇の前には、見張り役といった役どころか、神主装束の男たちが数名いて何やら雑談中だ。
 境内は整然と篝火台が並べられ、注連縄や紙垂、幕によって厳かに飾り立てられている。そんな祭儀の仕様の中にあって一際違和感を醸し出しているのが、本来鈴が取り付けられている場所に吊るされた「鐘」だ。鐘と言っても寺社で用いられる釣鐘型のものではなく、どちらかと言うと西洋教会の尖塔に吊るされる「ベル」に近い。

 慌しい境内の外れに、ぽつんと立ち尽くす白い人影を見つける。白と紺のセーラー服を着たお下げ髪の少女・芦鷹巧美である。境内を囲む杉の大木の一本に背をもたれ、忙しく動き回る人々を何の気なしに眺めている風情だ。あなたが近付いていくとペコリと小さく頭を下げたが、それ以上の興味を向ける事なく、再び境内に様子を見るともなく見ている。
「泥棒が入ったの」
 あなたの方には顔も向けず、ポソリと巧美。どうやら境内の喧騒の原因を教えてくれたらしい。巧美の言う通りなら、なるほど、村人たちの物騒な出で立ちも頷ける。もっとも、その犯人がここにいるのだが。
 しばらく無言のまま、巧美と並ぶようにして境内の様子を眺める。石段から上がってくる者、石段を下りていく者、人の出入りは激しいが、それは未だ探し人が発見できないと言う証拠。喧騒は収束しそうにない。
 ふと気配を感じて巧美の様子を窺うと、あなたの顔をじっと見ている。目が合っても全くたじろがないため、数瞬見つめあう形となったが、何の前触れもなくプイと顔を逸らすと再び境内の喧騒へと視線を戻した。不思議に思ってしばらく彼女の横顔を見つめてみても、帰郷のバスの中で彼女を初めて見かけた時に浮かべていた諦観の漂う面差しで、あなたの存在を全く気にしていない風に、ただ視線を前に向けているだけであった。
「あなた、外から来た人だよね」
 相変わらず視線を向けることのない巧美。しかし、自ら声をかけてくる所をみると、居心地悪く思っている訳ではないらしい。巧美の言う“外”とは、厨子村の村外を指すのだろう。頷くあなた。
「結婚式が終わったら、また村を出て行くの?」
 再びあなたは肯定の意思表示。それを受けた巧美は、初めて感情らしきものを発露させた。ただそれは、年頃の少女が発する軽やかで明るい感情ではなく、薄幸そうな心情の吐露、つまり“溜め息”という形を取ったものであった。
「巧美はずっと厨子村だよ」
 そして、こぼれてしまう巧美の本音(こころ)。
「巧美はずっと・・・芦鷹という鳥篭の中の小鳥なのかな」
 あなたの返事を待つ事なく杉の幹から背を離すと、巧美は小走りに神社の境内から姿を消した。


【芦鷹巧美に会う】
 あなたは芦鷹巧美を追って神社を出る。小走りの巧美は石段を下りると東を目指して駆け去っていく。あなたの記憶が正しければ、そちらの方角にはゆるやかな流れの小川があるはずだった。静かな場所であり、気分を落ち着けるには申し分ない。歩調をゆるめると、少し距離を置くようにして巧美の後を追った。

 果たして、巧美は流れる小川の岸辺にいた。大き目の丸石の上で、膝を抱えるようにして腰掛け、小川のせせらぎに耳を傾けている。水面が夏の日差しを反射して、巧美の顔に光の化粧をする。まどろむ様にゆっくりと流れる水面を見るともなく見る巧美の顔は、いつもの諦観漂う寂しげなものだった。

 あなたの足音を聞きつけると、巧美はピクリと肩を動かしたが、目や顔をこちらに向けることはなかった。巧美が逃げないようにと、声をかけながらゆっくりと近付いて行く。巧美から少し距離を置いて立ち止まると、あなたは自らの考えを、彼女を諭すようにして伝えた。このまま村に縛られたままでは、幸せになれない事。25年後に彼女に訪れるであろう不幸な未来の事。そしてすべてを諦める前に、何かをしてみるべきだ、という事を。
 あなたの話を聞き終えると、巧美はすっくと立ちあがり、あなたの方へ歩み寄ってきた。今までの、なるべく人と顔を見合わせようとしない態度とは違い、その目はあなたの視線を真正面から見返し、あと数センチで触れ合いそうになるほどまでに、その身体を接近させてきた。
 いつの間にか解かれたお下げ髪が小川から流れてくるそよ風に遊ばれてフワリフワリと宙を舞い、初めて見せた強い意志を宿すその目は曇りなく純粋で、透き通っている。近付き過ぎなまでに接近した体勢から、自然とあなたは巧美の顔を見下ろす形になった。薄いピンクの唇が目の前で息づいている。不謹慎と思いながらも、この時、あなたは巧美が紛れもなく美しい娘であると思った。
 傍から見れば、これからキスをする男女に見えたかもしれない。しかし、そこにあるのは淡く暖かな雰囲気ではなく、氷を擦り合わせるような凍てつく緊張感だった。
 あなたを見つめたまま、形良い巧美の唇から問いかけが漏れる。
「それじゃあ、あなたは巧美をどうやって助けてくれるの?」

【出題】
 巧美の問いかけに対するあなたの答えを申請してください。



(アクション・2)

「残念ですが、私一人に出来ることは非常に微々たるものです。
 巧美さんををこの村の呪縛から解き放ち、連れ去って行くような『白馬の王子』にはなれません。ですが、『足長おじさん』ぐらいにはなれるでしょう。
 私がこうしなさい。と言う事に従うだけならば、この村に縛られて生きることと大差ないではありませんか。
 巧美さんが自分の意思で判断し、選択する未来を全力をもって援助することを約束しましょう。(30歳、独身の医者ですからそのくらいの経済的余裕はありますよね? キーパー)
 しかし、それも全ては無事に生きてこの村を出ることが出来てからです。」

 そこで、私たち(同盟)が知りえた厨子村の秘密を全て話します。

「私たちが無事に生き延びるためには一人でも協力者が多いほうが良いのです。協力して下さいませんか。巧美さん。今お話ししたこと以外に何か村や儀式、『ゐをどノ書』について知っていることが 有ったなら教えて欲しいのです。ヘリポートの事とか何でもかまいません。それに、問題の護符についてですが、境内が騒がしかったのは泥棒に護符を盗まれたからでしょう?(未遂なら守りを固めるはずです。犯人を捜すということは既に護符は無かった。ということに違いない。)それならば、犯人には心当たりがあります。楢須藤氏のほうが上手くことを進めていたならば、事態は好転するかもしれませんよ。」

 と、こんな風に答えてみようと思います。
 最後に、結果がどうであれ同盟の皆さんに連絡を取ります。



(リアクション・2)

【芦鷹巧美の返答】
 あなたの返答を聞くと、巧美は俯いて、小さな溜め息をついた。
 二、三歩後退ってあなたと距離を取ると、クルリと背中を向ける。
「それじゃ、ダメ」
 ―――拒絶。
 小川の水面へと顔を向けた巧美の唇から、ポソリと呟かれた拒絶の言葉。先ほど垣間見せた真っ直ぐな意思の光は、既に消え失せている。そこにはいつも通りの、人に関心を向けない、淋しげな芦鷹巧美がいた。
「止められないもん。この村にいる限り・・・」
 諦めきった声。それは厨子夜婚の儀を指したものなのだろう。川面に向かって立ち尽くす巧美の背中には、癒すことの出来ない深い絶望があった。
 あなたはもう一度、諦めるのはまだ早いと声を嗄らした。諭すように、しかし心に響くようにと強く、強く。繰り返し、あなたは巧美に呼びかけた。
「巧美は・・・っ!」
 突然あなたの声を遮った、巧美の声。それは今までに聞いたことのない強い調子の声だった。振り向かない。しかし、両の拳が固められ、小刻みに震えている。
 訳も分からないまま、半ば唖然としたあなたに、巧美は告白した。
「巧美は、この村から巧美のことを連れ出してくれる誰かを待っていたっ! きっと誰かが巧美を迎えに来て、厨子村とは違うどこかへ連れてってくれるって信じてたっ!」
 声は震えていない。涙を流してもいない。しかし、間違いなく、巧美は泣いていた。思春期の少女が吐露するにはあまりにも痛々しく、絶望に満ちた、この世で最も哀しい声で―――。
 あなたは「白馬の王子にはなれない」と言った。しかし、巧美は「白馬の王子」の登場を信じ、願い、渇望していた。
 ひび割れた心の告白を聞いて、あなたは立ち竦んだ。そして悟る。自分が、巧美を救えなかったのだという事を。
「あなたも、巧美が待っていた“誰か”じゃないんだ・・・」
 川べりに沿うようにして、巧美は歩み去る。風が巧美の髪に戯れるが、それすらも拒絶するように、巧美の意識は他へ向けられない。嫌うことも、呪うこともせず、ただ諦めてしまった、巧美。
 セーラー服の少女の背中を追う事は、あなたには出来なかった。