ゴールデンウィークも半ばを迎え、大井川鐵道で蒸気列車の3往復運転が始まったので撮影に行こうと思ったものの、どこで、どんなアングルで撮ろうかというイメージが全然湧いてこない。
幸いな事に、3往復運転は3日から6日までの4日間あるし、それ以外の日でも1往復は運転されている。悩んでいても仕方がないため、今回は蒸気列車の撮影はせずに、大井川鐵道そのものを楽しんでみようと路線変更。
大井川鐵道の開業は1927年。1931年に大井川本線(金谷〜千頭間:39.5km)が、1935年に井川線(千頭〜井川間:25.5km)が全線開通した。井川線は井川ダム建設資材運搬用として建設されたため、旅客扱いはダム完成後の1959年から。
JRの自宅最寄駅から各駅停車に乗り込み、約2時間で大井川鐵道との接続駅である金谷駅に到着。大井川鐵道では数種類のフリーきっぷを販売していて、今回は井川駅までがフリー区間になっている「アプトラインフリーきっぷ(5,500円)」を購入。そして、千頭行きの電車に乗り込む。
沿線には茶畑が広がっており、ちょうど新茶の時期。茶農家の方たちが摘み取り作業をされていて、その様子は車窓からも見ることができる。
大井川本線の特徴は2つ。
1つは蒸気機関車で、機関車も客車も往時のままの姿で毎日運転(冬季除く)されている。国鉄が動力近代化のために蒸気機関車を廃止したのが1976年。大井川鐵道が「文化遺産」として蒸気機関車の復活運転を始めたのは1976年。なんと、国鉄の廃止と同じ年なのである。今や観光資源として定着し、多客期には1日に3往復も運転されている。
もう1つは、多彩な電車たち。大手私鉄で現役を引退した特急電車たちが、ここでは現役として働いている。元近鉄、元京阪、元南海といった往年の名車たちを乗り比べられるのもここだけ。(普通電車として運行しているため特急料金は必要ありません。)
元近鉄特急電車で金谷駅を出発し、1時間15分で大井川本線の終点千頭駅に到着。ここで井川線に乗り換える。ここには何度か足を運んでいるが、井川線に乗るのは今回が初めて。小さな車体の客車に乗り込んで、いざ出発!
終点の井川駅までにトンネル61ヵ所,鉄橋55ヵ所あり、全長25.5km,標高差387mを1時間45分かけて進んでいく。
「まもなく右手に三叉峡がご覧頂けます。右手から大井川、左前方から寸又川、左手から横沢と3つの川が合流しています。」というように、それぞれのビューポイントでは車掌さんによる案内放送が行われ、列車のスピードも落としてくれるため、自然の景観を堪能することができる。
井川線の最大の特徴は、日本で唯一のアプト式区間(アプトいちしろ駅〜長島ダム駅間)を有すること。
アプト式とは、通常のレールの間にラックレールと呼ばれるギザギザのレールを設け、アプト式専用電気機関車の歯車を噛み合せて急勾配を克服する方法である。
1989年に本体工事が始まった長島ダム(2002年完成)により一部区間がダム湖に水没してしまうため、線路が移設されたのだが、90パーミルという急勾配を克服するために採用された。
アプトいちしろ駅に着くと、最後尾でアプト式専用電気機関車の連結作業が開始されるため3分間停車する。乗客たちは、連結作業を見学する人,トイレに行く人,柏餅を買う人と様々。
「ピィーッ」という甲高い汽笛を合図に、ゆっくりと勾配を登っていく。写真(左下)では判りづらいが、90パーミル(1000分の90)という”いつもと違う急勾配”であることが一目見ただけで判る。
長島ダム駅に到着すると、アプト式専用電気機関車が切り離されている間に、新たな乗客が乗り込んでくる。駅から少し歩いた所に長島ダムがあり、放水しているところや芝桜を鑑賞することができるため観光客が想像以上にいるのである。
ひらんだ駅を過ぎトンネルを抜けると、列車はレインボーブリッジを渡る。
このレインボーブリッジは、長島ダムの完成によりできた湖「接阻湖」を渡る橋で、岬部分には「奥大井湖上駅」という駅が設けられ、エメラルドグリーンに輝く湖周辺を散策できるようになっている。
ここから先も、水面からの高さが100mもある鉄橋(私鉄では最も高い鉄橋)を渡ったり、新緑をまとった山々が織り成す渓谷美を堪能することができる。そして、巨大なダム「井川ダム」が見えてくると終点の井川駅に到着する。
全線大井川に沿っており、美しい景観を堪能できるが、井川線に限って言えば、千頭駅から乗る時は進行方向右側の席に座ることをお薦めします。大井川の左岸を列車は進むため、ビューポイントはほとんど右側になるからです。
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