彼女の言葉に従い、夜のタロス島に飛び出したヒーロー達は、早速島内を跋扈するフリークショーを調査し始めた。
そしてまもなくレバレーションのヒーローの一人が、倒したフリークショーのメンバーから一枚のメモを入手したのだった。そこにはこう書かれていた。
「早くブレント・トーマス(Blent Tohmas)に新型音波プロジェクター(Sonic wave projector)を完成させるのだ。私がこれ以上待てないことを奴に知らしておけ。」
この短いメモの最後にはクレーマー(clamor)という署名が されていた。恐らくこの指令をフリークショーのメンバーに出した人物の名に違いない。
一体クレーマーとは何者なのだろうか、そして音波プロジェクターとはいったい何なのだろうか?
シスターサイキはヒーロー達がみつけたメモにそっと手を当てると、目を閉じ精神を集中し始めた。
「ビルの中・・・・人質・・・たくさんのフリークショーが見えるわ・・・あれは?何かの装置?!」
次の瞬間不意に目を開いた彼女は傍らにあるParagon Cityのマップに印をつけると、ヒーローに手渡した。
「私のビジョンによれば、恐らく誰かがここに捕らわれているに違いないわ。今すぐ向かって!彼らは既に動き始めようとしているの」
果たしてシスターサイキが印をつけたそのビルには多くのフリークショーが潜んでいた。強力な攻撃力が身上のフリークショーだが、タスクフォース・レバレー ションはタンカー2,スクラッパー1、コントローラー2、ブラスター2、ディフェンダー1という構成からなるバランスのとれたチームだった。
次々と襲いか かる彼らを倒し先へ進むタスクフォースのヒーロー達。そしてまもなくボスが部下に何事かを指示するかのような怒声がビルの奥から響いてきた。
「この道化野郎と奴の装置をどこか安全なところに移す必要があるとのボスの仰せだ(The boss says we need to move
this clown and his gizmo to someplace safe)なにせ、フリークショーの隠れ家は至る所にあるからな!」
そこにいたのはこの隠れ家の主と思しきフリークショーのボスshriekと、彼にひきづられるように連れ出されようとしている一人の男だった。恐らく彼がトーマスに違いない!
まもなく激戦の末shriekを倒したヒーローにトーマスは興奮気味に話しかけた。
「君たちに見つけてもらって幸運だった。奴らは私にこの音波プロジェクターを完成させるよう強要していたんだ。」
トーマスによると音波プロジェクターとは、特定の振動波を発生する装置で、フリークショーは彼を脅迫してこの装置の改良版を完成させようとしていたというのだ。
「そうだ、この装置の最新型を持っていてくれ。君達とともにあれば装置も私自身も安全だろうからね」
こうしてヒーロー達はフリークショーの隠れ家から、音波プロジェクターを手に入れ、シスターサイキのもとに持ち帰ることに成功したのだった。
「なるほど、彼らはトーマスと音波プロジェクターを使って何か企んでいたようね。こうなるとこれからフリークショーから目をはなすことはできないわ。しかし一体全体、彼らはこの装置を使って何を企んでいたというの!?」
強力な霊能パワーをもつシスターサイキだが、逆に科学的なことはとんと縁がないようで、装置を見るなり考え込むばかりだった。
「どうも私のサイキック能力でも埒があきそうもないわね。でも大丈夫。友人の科学技術の専門家アンドリュー・フィオール(Andrew
Fiore)ならきっとこの装置についての何らかの示唆を与えてくれるに違いないわ。でも気をつけて!恐らくフリークショーの奴らも熱心にこの装置の行方
を捜しているはずだから。」
こうしてシスターサイキの紹介で訪れた先には科学者らしからぬ黒い背広を着た不審な男がたたずんでいた。
その出で立ちから考えると彼は一般的な科学技術ではなく、Rikktiや他の悪の組織がもつ異質のテクノロジーについての特殊な情報を持っている人物なのだろう。
「来たなタスクフォース・レバレーション。あんた達が来ることはサイキの姉御から聞いてるよ。俺のところに来たのは正しい判断だ。まあ今まで彼女が間違った判断をしたところなど見たこともないがね。」
シスターサイキが指さした地図上の場所、そこには今にも崩れそうな古びたビルがあった。
「いったこんなところで、フリークショーが何をやってるって言うのかしら?」訝しがるヒーローだったが、錆び付いた鉄の扉をこじあけると、軋んだ鉄の音と共に、フリークショーのボディのがちゃがちゃとした金属音が聞こえてきた。
しかもかなりの数のフリークショーのメンバーがそこかしこに控えているのだ。
「この数の敵を倒して行くのはかなり骨の折れそうね」そうつぶやくLalaに傍らにいたマインドコントローラー、眠気猫ことSlumblousCatがささやいた。
「大丈夫。ここは私に任せて!」彼女がそういうなり今にもLalaに襲いかからんとしていたギャング達が急に足を止め、そして頭を抱えてその場にうずくまり始めた。彼女のマインドコントローラーのパワーが発動したのだ!
この隙をヒーロー達は見落とすはずはなかった。2人のブラスターBainfireとBlueberryCatの強力な炎と氷の複合攻撃がギャング団共を一 瞬にして地獄の絵図の中にたたき落した。そして炎と氷が去ったあとにはヒーローを取り囲んでいたギャング共のうち、そこにたっている者はただの1人も残っていなかったのだった。
しかしそこに一瞬の油断が生まれた。次の瞬間倒したはずの1人のギャングがむくりと起きあがり、SlumblousCatを狙って猛然と突撃を敢行したの
だ。「しまった!」あわててProvokeで敵の気を引こうとするLalaだが時すでに遅く、ギャングは彼女の目前にまで迫っていた。
しかし、次の瞬間、彼女に迫ろうとしたギャングは大きくノックバックすると体ごとはじき飛ばされ、倉庫の壁にたたきつけられたのだ。彼女を取り巻く巨大な風の渦ハリケーンの力だった。
その後風の力で壁にたたきつけられた哀れなギャングが、ヒーロー達の袋だたきにあったことは言うまでもない。
こうして次々と敵を倒し、廃屋の奥深くに進んでいくヒーロー達の目に、どこかでみたことのある装置が目に入った。
「これは・・・もしかして、音波プロジェクター!どうしてこんなものがここにあるの?!」
疑問を抱きつつ廃屋を踏破したタスクフォースのヒーロー達は古びた廃屋の奥に設置された音波プロジェクターを破壊し、シスターサイキの元へ帰還したのだった。
「私にもまだ明確に彼らが何を企んでいるのかわからない。でも間違いないわ。彼らは音波プロジェクターをつかって何か巨大な計画を企んでいるのよ。」
独り言のようにそうつぶやいたシスターサイキは、再びヒーローに向き直り、言った。
「私がずっと感じていた不安はまだ終わってはいないわ。もう一カ所・・・私がマークしたこの倉庫でもフリークショーが、音速プロジェクターを設置することを計画している、私にはそう感じられるの。
でもまだ全てがぼんやりとしたまま・・・唯一感じられることは巨大な破壊作戦が進行中ということだけなの。
お願い、倉庫に急行して彼らが恐怖の作戦を実行するのを止めて!彼らは恐らくとても長い時間をかけてこのプランを進めてきたに違いないわ。こんなにも混沌とした計画の中に、これほどまでの秩序を感じたことは私はないもの。」
そしてまさにサイキの予感通りだった。ヒーロー達は彼女が指した古びた倉庫で、再び音波プロジェクターを発見したのだ。
「でも、Cutie Lala。あなたは不思議に思わない?あのビルも倉庫もいつもは使っていない場所なの。どうして彼らはそんなところを音波プロジェクターを使う場所に選んだのかしらって。」
「聞いて、タスクフォース・レバレーション! 2つのパターンが私の心の中で一緒になりはじめたの・・・2つのパターン・・・フリークショーと5th Columnが同じところにいて争っているのを感じるの。
彼らの元に出向いて彼らの紛争の原因を調べて!恐らくその過程で私たちは彼のが作っている音波爆弾の秘密にもっととかづけるような気がするの。私たちが見落としている接点が、きっとここにあるはずよ。お願い、それをみつけてCutie Lala!」
シスターサイキの新たな霊感によってヒーロー達が導かれた洞窟、そこはまさに人工的に作り上げられた秘密基地そのものだった。壁に掛かった巨大な髑髏のエンブレムがここが5ty Columnの秘密基地であることを示していた。
既に基地のあちこちでは戦闘が行われているようで、秘密基地の奥深くからは激しい銃声が鳴り響いていた。
そして不意に現れる5th Columnの兵士達、そのユニフォームからみて彼らは特殊部隊ナッハ師団のエリート兵のようだった。
「我々にはいかなる攻撃も通用せんぞ!(we will repulse all attacks!)」、「ひいひい言わせてやるぜ(Let it rumble!)」
だが威勢の良いのは最初だけだった。一瞬のうちに彼らを打ち破ったヒーロー達は瞬く間にこの基地の司令室とおぼしき場所まで攻め込んだのだ。
司令室ではフリークショーと5th Columnが激しい戦闘を繰り広げていた。
激しい戦闘の中、基地守備隊の連隊長Screamerの怒号が銃声に混じってあたりに響き渡る。
「クレーマーの奴は、ここは使える技術を見つける良い機会だったとほざきおった。(we got a good chance to find
more useful stuff in
here)奴はそのために働くのが常だった、そうだ奴ははじめからそのつもりだったのだ。ワシが周りの卑怯者全てをたたきつぶしてくれるわ!(She
used to work for these bozo, so the she oughtta know.I prefer a fight
to all this sneakin' around!)」
「我々の困難な仕事の成果が、自身をクレーマーと呼ぶ反逆者の手に落ちることなど許されん!(our hard work must not be
allowed to fall into the hands of traitor who now calls herself
chamor!)」
別の下士官が叫ぶのが耳に入った。そうなのだ、クレーマー、あのトーマスへの司令書に署名した人物は5th Columnを裏切り、その技術を土産にフリークショーに寝返ったのだ。
恐らくクレーマーはヒーローに音波爆弾の実験を阻まれ、装置の完成の為にオリジナルの技術をもつ5th Columnの基地を襲ったのだろう。
秘密基地の司令室を制圧し、残兵の掃討に入ったヒーロー達、いや実際にはそう思っていたのは彼らだけで、基地の別の一角が実は戦いの主戦場となっていた。
そこではフリークショーの侵攻部隊の指揮を執るRaid Leaderのグループが、この基地の司令官Defense Commanderとの間で激しい戦闘を続けていたのだ。
ヒーロー達がこの一角に到達したとき、彼らは軽い驚きを覚えたものの敵の幹部を倒す絶好のチャンスとばかり、彼らの戦闘に割って入ったのだ。
Unyielding Stanceを展開しRaid Leaderに斬りかかるCutie
Lala、次いで彼女のProvokeと同時にコントローラーのhold、そしてブラスターのDD。セオリー通りの戦いだった、いや、これがいつも戦い
だったならば、というべきだろうか。そのとき彼らを襲ったのは雨のようなグレネードランチャーの一斉射撃だったのだ。
「そんな!一体どこから!?」Lalaがチャージしたときには気付かなかったが、実は奥行きが段差となって彼女の視線を阻んでいたのだ、そして死角となったその先には、なんと3個小隊にものぼる最精鋭部隊が、この袋小路に迷い込んだ哀れな子羊を待ち受けていたのだった。
彼女の突撃は完全な軽挙妄動だった。このときヒーロー達は前門にフリークショー、後門に5th Columnを抱え、圧倒的多数の精鋭部隊に幾重にも包囲される形となっていたのだった。
そして最初に犠牲になったのは、この苦境の活路を切り開こうと奮戦を続けていた、レバレーションの中でも有数の実戦経験を持つアイスブラスターの
BlueberryCatだった。不幸にもLalaに向けられていたグレネードランチャーの嵐が背後の彼女をも巻き込み、彼女をなぎ倒したのだ。「みんな
気をつけて!そういえば聞いたことがある。奴らの秘密基地で最も堅固に守られている一角は”Death
Room”って言われて恐れられているって!」最後の力で仲間に警告を発すると、彼女はがっくりと膝をつき、そのまま地面に倒れこんでしまった。
攻撃の要であり、氷のパワーで凍らせて敵を封じ込めていたBlueberryCatの戦線離脱を境に戦況は一気に悪化した。
もはやTankerの Provekeでは続々と押し寄せる敵を押さえきれなくなり、その攻撃は後衛にまで及び始めたのだ。
敵の猛攻の前に次々と傷つき倒れるタスクフォースの ヒーロー達。そして最後に残されたのは、その強固な体を武器に最前戦で戦い続けていたLalaと、ファイアータンカーとして前線の攻撃の中心となっていた
ANESANの2人のタンカー、そして遊撃隊として後衛を襲う敵を追い払うべく獅子奮迅の活躍をしていたスクラッパーのJesperの3人だけとなってしまったのだった。
5th Columnの次の攻撃は、相対的に攻撃力が高いJesperに向けられた。さすがの彼もタンカーと比べて防御が薄いスクラッパーである以上、この集中攻
撃の前にはひとたまりもなかった。
最後の一太刀を目前の敵にあびせたと同時に、その場に前のめりに倒れ込んだのだった。彼らしい軽口をたたきながら。
「へっ、ざまあねえな・なあに大丈夫・さ・・・ちょっと、バナナの皮ですべっちま・・っただけ・・・・だ」
「みんなが回復するまでなんとかここを維持しないと」そう考えたLalaだったが、5th Columnの恐るべき罠はこれだけではなかった。彼女たちが倒した兵士の1人が不意に起きあがったのだ。
「まさか!フリークショーじゃあるまし、なんで!?」
驚く彼女を尻目に兵士は見る間に恐ろしいオオカミに姿を変え、わずかに残った彼女たちに襲いかかってきたのだ!彼女は初めて見たが、これこそがウェアウルフ(人狼)、ノスフェラトゥ指揮下の究極の兵士、ミューテーショソルジャーだったのだ!
恐怖はそれだけではなかった。まもなく聞き慣れない電子音が基地の奥から聞こえてきた。そしてその先にはヴァンダル指揮下のロボット兵 メックマンがその
姿を現したのだ。最後までその攻撃力で奮戦を続けてきたANESANだったが、ここにいたって多くの兵士達を道連れに力尽きてしまった。残るはCutie
Lalaただ1人・・・。
グラビティコントローラーであり、これまでの戦いではヒーラーとしてもチームを守ってきたBikkleはタスクフォースの危機にいち早く行動を起こそうと
した1人だった。だがここにも5th
Columnの卑劣な罠が彼女を待ちかまえていた。戦場に戻るため非常事態テレポーテーションシステムで病院へと転送されようとしていた彼女の体は、
5th Columnの新兵器、テレポート妨害装置によって病院ではなく、彼らの牢獄へと送られてしまったのだ!
しかも牢獄の扉は特殊な材質でできており、コントローラーの彼女では到底破れそうもなかった。
絶体絶命の危機に立たされたタスクフォース・レバレーション。
「はっはっは。我々の守りを突破することなど、できはしないのだ!(they shall not pass our defenses!)」Defense Commanderの笑い声が基地に響き渡った。
「ねえ、シスターサイキ。私思うんだけど、いっそのことあなたの超能力でクレイマーの本拠地をぱぱっと見つけることはできないの?」やや反則かも、と思いつつLalaが尋ねた。少し困ったような顔をして答えるサイキ。
「いくらなんでもそれはムリね。というか、私の能力はそんなに便利なものじゃないの。私は人の心や自然の営みの波動のようなものを通じて、その乱れや動きを感じているだけなのよ。だから知らない相手の、しかも大きな乱れや動きのないものを感じることはできないわ」
「ふーん それって逆に言えばわかっている敵が大きな動きをすれば感じられるってこと?」
「ええ、まあそういわれればそうだけど・・・。「(!) そうだわ。その手があった!」
突然何かをひらめいたようにサイキが声を上げた。
「実はタロス島で奴等が何か大きな計画をたくらんでいる感じがしていたのけど、その場所を特定できなかったの。あなた方がタロス島をパトロールしてフリークショーの奴等を挑発すれば、その心の波動の乱れによって彼らの基地の位置がわかるかもしれない!」
「急いでLala 危機がどんどん大きくなっている感覚がするの もしそれが彼らの音波爆弾に計画によるものなら、一刻も早くそれを取り除かなくては」
「いいところに来たわ。タスクフォース・レバレーション。実は今フリークショーと5th Columnの別の紛争のビジョンを感じたの。」
彼女のもとに戻ったヒーロー達を、シスターサイキは例によって彼女の霊感の導きで答えた。
「で、その場所はなにかの政府の施設のようなの。恐らく私たちはフリークショーの音波爆弾計画の中枢に近づいている・・・そんな予感がする。そしてのもう一つビジョンを感じるわ。その施設にいるある男性・・・その人物がこの事件の鍵を握っているように感じられるの」
「ある男性かあ・・・シスターサイキ、名前はわからないの?」
「そこまでは・・・でもその男性の名はある木の種類のような気がするわ」
「わかった。行ってみるわ」
そういって現場に急行したヒーロー達。そこは確かにParagon Cityの政府施設のひとつだったが、さして重要性のある場所とは思えなかった。ともあれフリークショーと5th
Columnを排除しつつ中に進んでいくヒーロー達。まもなく彼らはフリークショーによって脅され、何かの資料を探させられているとおぼしき男性を発見し、救出したのだった。
「助けてくれてありがとうございました。実は私はParagon Cityの地盤についての科学的データーを出すように彼らに脅されていたんです」
「地盤!?・・・いったい、なんで奴らはそんなデーターを欲しがったんだろう?あっ、そうだ。ところであなたの名前はなんていうの?」
「え、私ですか?私はグレゴリー・パインと申しますが(Gregory Pine)それが何か?」
「ああっ!なるほどね!・・・あっ、いや、別に何でもないの、こっちの話で・・」
「?」
Lala、私の言った何かの木の種類の人はさがしだせた?」
帰還するヒーロー達を迎えたシスターサイキが開口一番切り出した。どうも彼女も気になっていたようだ。
「・・・パイン(松)か。うん、私の思ったとおりね」
そういってサイキはなぜか安堵した表情を見せた。
だがそれもつかの間だった。ヒーロー達の報告をうけると一転していつもの不安げな表情にもどったのだ。
「フリークショーがParagon Cityの地盤データに興味を持っていたっていうの?それは奇妙だわ・・・一体なぜそんなものを・・・。どうやら私たちはもう一度この情報を追ってみる必要があるかもしれない。
イヤな予感がするの・・・クレーマーの計画が結実しつつある、そんな気がするの。一刻も早く彼女をとめなくては!」
パトロールの効果はテキメンだった。サイキはフリークショーのマインドエネルギーの波を捉え、遂に基地の位置を特定することに成功したのだ。
そこはタロス島の海岸線にぽっかりと大きな穴を開けた洞窟だった。しかし勇躍して洞窟に踏み込んだ彼女達が一歩足を踏み入れた瞬間、暗闇から姿を現した幹部と思しきフリークショーAxel-Fの声が洞窟に響いたのだった。
「ベイビー!このジャングルへようこそ(welcome to the jangle, baby!)」
「いきなりボスの登場とはたいした歓迎ね。覚悟しなさいAxel-F!」しかし身構えるヒーロー達を見てあざけり笑うAxel-F。
「いったい何がおかしい?!」
「ぐははははっ。生憎だったな。我々がここで、お前ら馬鹿ヒーローの相手をしている間に、ボスはブリックスタウンでの大爆破の準備が終わっているだろうよ(while
we are keeping these idiots busy here in Founder's Fall, the boss is getting
ready for the big blow out in Brickstown)」
なんたることだろう。クレーマーは真の攻撃目標であるブリックスタウンからヒーローの目を遠ざけるため、シスターサイキの能力を逆手に取り、まんまとヒーロー達の足止めに成功したのだ。
幸いAxel-Fはそれこそ口ほどにもない実力だったため長い時間ヒーロー達を拘束することはできなかった。しかしこのままではブリックスタウンが危ない!ヒーロー達はシスターサイキの下へ急いだ。
「なんてことなの。クレーマーは私の感覚を真のターゲットであるブリックスタウンから遠ざけようとしてたなんて。まんまと一杯食わされたわ。どうやら彼女は、私たちが思っていたよりタフな敵のようね」
彼女の超知覚初の敗北に悔しがるシスターサイキ。
「でも待って!クレーマーが強力な音波爆弾でBrickstownを皆殺しにしようとしているって?でも彼女の部下がそこにいるようじは感じられないわ。」
「じゃあ、これも陽動なの?」
「もっと集中しなくては・・・いったい彼女が何をたくらんでいるのか・・・」そういって、再びまぶたを閉じシスターサイキは精神を集中し始めた。
精神を集中していたシスターサイキが不意にまぶたを開いた。
「そうか!わかった!彼女の計画が見えてきたわCutie Lala。彼女が音波爆弾をおいたのはブリックスタウンそのものじゃなかったのよ」
「じゃあ、奴等の攻撃目標は別の場所ってこと?」
「いいえ。思い出してLala、奴等が政府のビルを襲ってParagon Cityの地質データーを入手しようとしていたことを。恐らくブリックスタウンの地殻の弱い場所につながるラインに彼らはの音波爆弾をおいたに違いないわ。もしそれが爆発すれば、ブリックスタウンは地殻の大変動を起こして、そのゾーンはもうひとつの フォールトラインに姿を変えるでしょうね。」
フォールトラインは彼女も訪れたことがある。数年前の大地震で地殻変動を起こして壊滅的な打撃を受けた地域だ。そこはおびただしい地割れが当たり一面を走り、ほとんどのビルが倒壊し、あるいは傾斜する廃墟となっていた。
「私の見たところ、最初の爆弾はキングズローから入れる下水道の先に設置されているようだわ。あとの2つはスカイウェイシティから続く下水道のようね。急いでタスクフォース・レバレーション!もう一刻の猶予もないわ!」
音波爆弾を見つけるためキングズローの下水道に急行したレバレーション。しかしクレーマーも抜かりはなかった。かなりの数のギャングを爆弾の爆発までの守備に残していたのだ。
「まずいわね。このままじゃ時間切れになるかもしれないわ」敵の大集団を前に不安げにつぶやくLalaにBainfireが声を掛けた。
「どうやらここは私の出番のようね。私がステルスで爆弾を探して解除するわ。みんなはその間敵の目をひきつけていてほしいの」そういうとBainfire
の体は見る間背景に溶け込んでいった。そして次の瞬間、目にも留まらぬ速さで下水道の奥深くへと走り去っていったのだった。
彼女の仕事は速かった。残ったヒーロー達が下水道の入り口付近の部屋で戦闘をしている最中に早くも爆弾解除の報がはいったのだ。そしてそれは次のスカイウェイも同じだった。
「まるで忍者だね」Lalaは彼女の早業に驚嘆した。
そして最後の下水道に足を踏み入れたとき、彼女達タスクフォースが見たものは、かつてないほどの数のギャングの一団だった。これではステルスによる爆弾解除もできそうもなかった。この数から見て今まさにクレイマーはここで自ら爆弾を設置しているに違いない。
このおびただしい敵にLalaが斬りかかろうとしたとき、下水の悪い足場のせいか、一瞬Unyielding Stanceの展開が遅れた。次の瞬間フリークショーのTank smasherのStrn攻撃が彼女を直撃し、一気に彼女のHPの半分近くを奪ったのだ。
「うわっ、し、しまった!」
この数を相手にTankerが倒れればチームの全滅もありうる状況なのだ。しかし次の瞬間、絶妙のタイミングのヒールが彼女の窮地を救った。ついで彼女の周りにDifrection
Shieldが張り巡らされ、元からの彼女の防御力と併せて周囲のほとんどの攻撃をはじき返したのだ。
「危なかったな。だが俺がいれば大丈夫だ。安心して背中は任してくれ」唯一のディフェンダーとしてチームを守っていたDucent Ygdrasilだった。実は途中レベルがあがりEnhanceを追加した彼のヒールとBuffはタスクフォース結成直後から比べて俄然効果がアップし、 チームの危機を未然に防ぎ続けていたのだ。
ヒーロー達が奥に進むにつれ、奇妙なことに気がついた。ブーンという低い音が下水道の奥底から聞こえてきたのだ。そして更に驚くべき殊に、この下水道に何人かの人の姿が目に入ってきたのだった。
「なんでこんなところに人がいるの?」ヒーローが救出した市民に問いただすと、どうもこの低い音によって精神に一時的な異常をきたし、この下水道に迷い込んだらしいのだ。音波爆弾の力は、建物だけでなく人をも狂わせるというのだろうか。
そしてまもなく金属の武器を身に纏った女性が、ギャング共になにやら指示している姿が目に飛び込んできた。
間違いない。あれがクレーマーだ!一瞬の沈黙がチームを包んだ。長く追いかけてきた陰謀の中心が、今まさに眼前にその姿を現したのだ。
「さあ、いくよ!」Lalaのかけ声と共に、レバレーションのヒーロー達は一斉に段差を飛び降り、眼下のクレーマーに挑みかかった。
ヒーロー達の姿を認めるとクレーマーはまるでヒーローを子供扱いするような口ぶりで悪態をつき始めた。
「はん、2つの音波爆弾を解除しただけであたいの計画を阻止できたとでも思ってるのかい。いいこと坊やたち、あたいらは、まだまだこの爆弾を起動させることができるんだよ。(We
can still pull this off, boys)この子がいったん起動してうなり声をあげれば、あたかもトランプでつくった家のように、ジグラットはがたがたに崩れ落ちて、あたいらの同志は晴
れて自由の身って寸法なのさ!(once this baby goes boom, the Ziggurat will come down like
a house of cards, and all our comrades will be freed!)」
ジグラット・・・ブリックスタウンにある超大型刑務所の通称だ。フリークショーがブリックスタウンを攻撃目標に選んだのは、ジグラットを崩壊させ、仲間を救い出すためだったのだ。
「そしてあたいらは、ブリックスタウンを第二のフォールトタウン、その名もエレクトリック・ブガロー(Electric Bugaloo)に変えてやるのさ!」
恐るべきクレーマーの計画のすべてを聞いてヒーロー達は奮い立った。そしてアーチヴィランクレーマーとて、ここまで戦い抜いたタスクフォースの敵ではなかったのだ。激戦の末勝利の凱歌はヒーローにあがり、クレーマーの悪魔の計画は彼女の音波爆弾と共に、スカイウェイシティの地中の底で永遠の眠りについたのだった。