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ズームアウト

 誘拐犯から送り付けられたビデオには、あまりにも無惨な光景が映っていた。

 映像の始まりは、被害者の顔のアップからだった。
 表情は暗く、疲労感が強く表れ、カメラを見つめる目にはまるで力がなかった。

 被害者は、紙に書かれた文章(画面には映っていないが、恐らく犯人が作成したもの)を、抑揚のない口調で弱々しく読み上げた。

「私は・・・誘拐されました。今はこの部屋で・・・解放される時を待っています。絶対に犯人の言うとおりにしてください。お金の受け渡し方法は・・・」

 被害者が文章を読み終えると、彼女の視線が恐る恐るフレーム外の何者かに向けられた。
 カメラはゆっくりとズームアウトし、彼女の体全体を映しはじめる。

 その姿に、関係者は絶句した。
 被害者は全裸にされ、その手足は壁に鎖で拘束されていた。それどころか、彼女の体には、何度も拷問を受けたらしき痕が見受けられたのだった。

 再びカメラがズームすると、彼女の体の傷をひとつひとつ見せ付けるかのように、順番に映していった。
 打撲の痕や、鞭状のもので付けられた細長い痣。さらに、彼女の性器には無数のピアスが施され、ここで彼女がどんな扱いをされているのかを如実に表していた。

 ビデオの最後で再び彼女の顔がアップになり、その口が小さく動くのが映っていた。

「・・・早く・・おかね・・・、もう・・・耐えられない・・・」

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「なかなか上手いじゃないか。」

 録画内容をチェックしていた男は、モニターから顔を上げると満足げに言い放った。

「このアピールなら、効果抜群だろ。きっと、ここから解放される日も近いんじゃないかな。それまで俺たちを楽しませてくれよ。」

「・・・はい」

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