帰国〜自宅到着

 実際、最終日は日本へと帰国するだけだったので、そう大してネタネタしかったわけではない。ていうかネタがなきゃ駄目なのか、オレ。ネタネタしさを求めてしまう悲しい性。しかし、朝から帰国準備の続きを初めて、特に何事もなく、順調に帰国に向けての時間は近付いていた。

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 迎えに来たバスに乗り、空港まで向かう。来た時は早朝で、しかも空が重くたれ込め不安感を煽るような天気だった。雨も降っていたし、この後の旅行がまともに成功するかどうか、コーディネーターとしてはとても不安で仕方無かった。しかし、二日目から晴れてくれて、内容的には大成功。非常に楽しかったし、一生の思い出として残る素晴らしいものになった帰路は、とても晴れ晴れしく、清々しいと同時に、少し寂しい気もする。この数日間のこと、きっと忘れない、と思うけど。あまりに楽しすぎて、幻だったんじゃないかとすら思えるほど、もう終わってしまうということに現実感が伴わない。また来たい。と思うし、絶対また来る。と窓の外に広がる豪州の大地に誓う。胸いっぱいの満足感と、若干の名残惜しさ、幾ばくかの寂しさを抱えながら、バスは空港ターミナルへと到着した。

 今回はJTBのツアーを利用したわけで、帰る時は他のJTBのツアーの人と一緒にJTBの現地係員の先導を受けながら空港内を移動していく。途中、係員が説明をしたり、それにこちらが質問したりしながら進む。ニューヨークの9・11以来、カンタス航空も比較的手荷物等に厳しくなった…という係員の説明を聞き、オレの前を歩いていたオジサンが「例えばどんなものが引っかかりますか?」と係員に訊ねたところ、




「そうですねぇ…金属類は勿論のこと、ベルトのバックルなんかで引っかかることもあると聞きますよ。基本的に武器になりうると見なされたら、手荷物で持ち込みは出来ません。
 そうそう、ブーメランも武器扱いですから。


と、のたもうた。

 え…!?武器なの?

 これ。


 まぁ確かに、武器にはなるかも知れんが…これでハイジャックされるのも間抜けだなぁ。え〜と、んじゃ、


 これだったら?


結構鋭いから、武器になるかもよ?え、ならない? え!?「やれるもんならやってみろ」?ほぉ、いい度胸してるじゃネェか兄ちゃん…


 …別に、そんな不敵なことを本気で思ってたワケじゃぁない。ていうか、大人しくしてたよ、ボク?
 なのに。なのに、だなぁ。なんでオレが出国チェックで引っかからねばならんのだ?








 搭乗ゲートでの金属探知器。飛行機に乗ったことがある人なら、必ず経験している例のアレ。オレは、これで引っかかったことはない。見ていると割と引っかかる人が多いみたいなんだが、あんなん、とにかく基本的には金属類を外せば(体内等を除いて)、まず引っかかりはしないじゃないか…と思っていた。そしてその通り、オレがゲートを通っても探知音なんて一切鳴らなかったのである。
 ところが、意気揚々と(そんなに?)荷物を持って歩き出そうとしたその時。空港係官と思しき女性と男性の二人組に、前後から挟まれた。


係官『○×▽♀#£※☆℃……!?』


な、何?何だって?ワカラン、何を言ってるんだキサマら、日本語を喋らんか。どうやら「ちょっとツラ貸せやワーレー」と言われているらしい。空港で暴れてテロリスト扱いされるのもイヤなので(その前にそんな度胸はない)、大人しく従う。
 金属探知ゲートのすぐ脇にあるカウンターのところで、手荷物をカウンター上に置いて、両手を上に上げるように指示される。指示された通りにホールドアップ。周りの視線が痛い。とっても痛い。どう見たってこんな扱いを受けているのはオレ一人だけである。一体オレが何をした。すると、女性係官が一枚のボードをオレの目の前に差し出した。





『この検査は、無作為に抽出された方を対象に行っているものであり、問題が見つかった為ではありません。ご協力をお願いします。』





ウソやぁぁぁ、絶対ウソやぁ!!オマエらオレがちょっと犯罪者面のアブナイ電波系でア○ブ系ヒゲ生やしてるからってテロリスト扱いしてるんやろぉぉ.......








_| ̄|○ <自らの発想にショック




 そのまま、ボディチェックを受け、体の上から下まで金属探知器で撫で回される。だからさ、それ、任意の検査にしてはあまりにも慎重かつ、丁寧すぎないか?「カバンの中も見て良いか?」みたいな事を身振り手振りで示される。あぁ良いさ、もう見てくれ、構わんから。ヤバイモンは入れてないから。カンガルーの孫の手なんて入れてないから。無修正エロ本とか密輸入しようとしてないから。入ってるのなんて、カメラとかタオルとか飴玉とか機内持ち込みにしなきゃならない免税品だけだから。免税品。免税店で買ったもの。オレの買った免税品はたった一種類。



ブーメラン二本だけ。



これかぁぁぁぁぁぁ!!




やべぇよボス、計画がバレちまうよ!!チクショウ、オレも「トラトラトラ ワレ奇襲に成功セリ!!」って言ってみたかったよ!!!!…などという事は頭の一細胞すらも過ぎりはしなかったが、まぁ何はともあれ、日本人の観光客(と思しき人物)が持っている、免税品のお土産(と思われる物体)に対して、お咎めがあるはずもなく、無事無罪放免。いやはや、一時はどうなることかと思った…と思いつつきばのところに行くと、このトド、大ウケしてやがった しかしさもありなん、その後オレも大爆笑…まぁ周囲の視線は相変わらず痛かったわけだが、あまり気にならなかった(笑)。



 その後は何事もなく搭乗、機内(*1)で映画を見たりしながらノンビリと関空に到着した。帰りに見た映画は、『フォーチュン・クッキー』。この時まだ日本では公開されてなかったと思う。飛行機の中の数少ない娯楽だが、その辺ちょっと嬉しかったりする。だから大抵の場合、オレは飛行機の中ではあんまり寝ない。座席が狭いのもあるけど、折角の映画を見逃す手はない。…やっぱり、もう少し高性能のノイズキャンセリングヘッドフォンとかだと嬉しいんだけどね。


(*1)

 日本に着く頃には、すっかり日も落ちていた。インドネシアの辺りで、飛行機から夕焼け(*2)を見たが、相変わらず雲の上から見る夕焼けってのは美しい。この時もきばカメラだったので、まだ扱い慣れてなかったオレはあたふた…思わずMicroDrive(1GB)を衝動買いしそうな勢いってくらいに、容量の空きがないことを悔やんだものだ。
 関空からは、ちょっと贅沢をして「関空特急はるか」で草津まで。というか、さすがに疲れていたので、確実に座りたかったのである。関空特急なら、デカイスーツケースを置く場所があるし。


 草津に着き、土産でパンパンに膨れあがったスーツケースをえっちらおっちら家まで運び、一息ついて…さて、困ったぞ、夕飯を食べていないということに気が付いた。身体は疲れていて、殊更に何か食べたいと言うわけでもない。しかし、食べなきゃ翌日からがもたん。さりとて作るのはもうイヤだ…どうしたもんか。二人、顔を見合わせた。




   オレ&きば
   (同時に)
「ラーメン、食べたいね。」
「ラーメン、食べに行く?」



イヤイヤ。夫婦って、素晴らしい(笑)。それから二人して、マンションのすぐ横にあるラーメン屋に行って、二人、出てきたラーメンを貪り食う。そして、二人して一致した感想。



『日本の料理人は世界一。例え、ラーメンであっても。』



やっぱり、細やかなダシの味、繊細な塩加減、甘さと辛さの絶妙なバランス、日本の料理人のレベルはスゲェや、って思った。ただ単にオーストラリア料理が、その国民性に象徴されるように大らかで素朴なだけなのかも知れないが、しかし考えてみても、世界中の食が集まり、かつ非常に高いレベルで楽しめるこの日本という国は、やはり飽食の国家なのだ。飽食万歳。良い素材はそれだけでも美味いものだが、そこに上手い腕が加わるとさらに美味い。だって、ラーメン一つでこれだけ感動できるんだから。…て言うか、そんなに日本の味に餓えてたんかワシラ。




(*2)

 ともあれ、オーストラリアは楽しかった。今回はみんなでの旅行ということでケアンズのみのコースにしたが、まだまだオーストラリアで行きたいところは山ほどある。エアーズロックも見たいし、土ボタルも見てみたい。タスマニアも楽しそう。一度も経験がないけど、スキューバなんかにトライしてみるのも良さそうだし、すぐ横のニュージーランドも楽しそうだよね。シドニーやメルボルンは、どうでも良いんだけど(笑)。何年先になるかは分からないけど、また絶対行きたい。星を幾つ付けるか…と言われても、多分星が足りなくなる。そのくらい楽しかったし、素晴らしい旅だった。

 昔は、出不精だったんだけどな。オレ。一歩踏み出した世界には、いつも新しい光が溢れてる。そんな世界に、オレを連れだし、オレと共に旅してくれる、妻に感謝。



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