目白ケ丘教会

駅近くとは思えないほど静かな住宅地の中に
突如として姿を現した未知の生物、そんなイメージでしょうか。
新は自分の設計事務所の所員に、この建物を虎や豹などの肉食動物に例えたようですが、
外観からはどう猛なイメージは全く感じられません。
どちらかと言えば、静かに、そして優しく佇んでいます。
しかし建物の中に入ると、その言葉の意味が半分ほど理解できました。
ご子息の遠藤陶氏が言われたとおり、この建物の構造は脊椎動物の骨格に近いものがあります。
玄関から飲み込まれて入れば、内部はまさに、動物の体内を喚起させます。

さてこの建物は、必要限度の改修の他はほとんどオリジナルの形を保っています。
当初のスレート屋根を雨漏りのためアルミに葺き替えたのが、唯一の大改修でしょうか。
その他については、傷みやすい木製の窓や、長椅子、照明器具にいたるまで、
非常に丁寧に使われているようでした。
新は自分の作品がきちんと使われているか、非常に気にするタイプでしたので、
このことについては喜んでいるんじゃないかと思います。
特に新の最晩年の大作ですので、殊に思い入れは強いでしょう。

この教会が建てられた翌年、
新は62歳でその生涯を終え、この場所で葬儀が行われたとのことです。
また、ご子息の遠藤楽氏の最後の設計が、この教会に付属する幼稚園の増改築だった
ということも何か奇遇な出来事と思います。

Data
所在地:新宿区下落合2-15-11
構造:2階
施工者:
建築年代:昭和25年



写真左部の半円柱型の膨らみは、洗礼の儀式を行うところ。
設計当初と前後が逆になっている。           

玄関兼渡り廊下。左側が礼拝堂、右が附属幼稚園。

中庭から望む。中央にあるのは池で、設計当初とは違い半円形。
亀が気持ち良さそうに甲羅干ししてました。         



牧師さん(?)が非常に親切な方で、色々と説明してくださいました。ありがとうございました。

椅子は当時から使われているもの。
 

「照明もオリジナル。電球以外は...」という
牧師さんのシャレが面白かったです。   



師ライトの作風でありながらも、どこか日本を感じるのが新の作品。



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