ベーリックホール
(旧ベリック邸)

ご承知のとおり、神戸や長崎などの観光地等で一般公開されている洋風住宅は
訪れたもの全てを魅了する美しい建築ばかりです。
そして何より歴史が古いのです。明治、あるいは大正期のものがほとんどです。
横浜山手は歴史ある町ですが、関東大震災の影響で明治・大正期の洋風住宅はほとんど失われており、
その後建てられた住宅は、装飾を排したコンパクトな洋風住宅が多く、
これらの「合理的な」洋風住宅は、その時の歴史的背景があらわれた、ある意味では貴重な建物だと思うのですが、
いわゆる万人向けの「観光対象」とはなりにくいものがほとんどです。

このベーリックホールは、横浜で貿易商を営んでいたバートラム・ロバート・ベリック氏がモーガンに依頼して設計された、
赤い瓦屋根の華麗なスパニッシュスタイルの洋風住宅で、
立地、規模、意匠、どれをとっても山手内では随一の、価値のある実に素晴らしい作品です。
ベリック氏が住居として使用した後は、彼の子孫により宗教法人カトリック・マリア会へ寄附され、
同会は、その名を冠して「ベーリックホール」と命名しました。
建物は同法人が経営する「セント・ジョセフ・インターナショナル・スクール」の寄宿舎として、
長い間大切に使われてきたようですが、平成12年に同校は突然廃校、周囲をおどろかせました。
同校にはベーリックホールをはじめとする歴史的建造物を数棟保有しており、
それらの行く末が心配されていましたが、山手の景観保全を重視する横浜市が買収に乗り出しました。
ただし、買い取ったのはベーリックホールのみで、残りの校舎や体育館などは全て解体されています。
(正確にはベーリックホールの敷地を買い取り、建物は寄贈された。)

さて、平成14年7月1日、ベーリックホールの建つ敷地は、隣接する元町公園の拡張区域となり、
横浜近代建築ファンの垂涎の的であったこの建物が、ついに公開となりました。
華麗な表情とは裏腹に、幾多の解体の危機を乗り越え、今ここに立つ姿を眺めると、まさに感無量です。
神戸・長崎の洋館に引けを取らない、間違いなく観光対象となりうるものですし、
モーガンの名前を全国に知らしめるきっかけとなる建物になることでしょう。

Data
所在地:横浜市中区山手町72(元町公園内)
構造:木造1階 地下R.C.造1階
施工者:
建築年代:昭和5年
備考:横浜市歴史的認定建造物

3連アーチのポーチが良いアクセントになっています。旧ラフィン邸にも同様のパーゴラが見られます。
 
 


 

 


階段まわりはこの建物の見どころのひとつ。
 

見事な装飾の玄関扉。オリジナルでしょうか?
 

テラスに設けられた獅子頭の噴水

ダイニング・ルーム



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