東野圭吾さん #02


『仮面山荘殺人事件』 東野圭吾 1990/12 講談社 ♪:☆☆☆
作品紹介 裏切り者
結婚を控えた森崎朋美は式のうち合わせの帰路、不慮の事故死をとげた。
数ヶ月後、朋美の父に招待され山荘に集まった8人の男女。 朋美の親友であり作家でもある阿川桂子は、朋美の事故死に疑問をもっていると皆の 前で告白する。
重苦しい空気の中、突如として山荘に強盗が現れ、彼らはとらわれの身となる。
脱出を試みる彼らの行動は謎の第三者に妨害される。 「誰か、裏切りものがいる・・・?」
感想 山荘ネタ多いですね
種明かしなどよりも、展開を楽しむミステリですね。
犯人とは別に「裏切り者」の正体はなんとなく推測できてしまうような構成なのですが、 逆説的にいえば、こうなるだろ、やっぱりそうなのか・・・。と読んでて楽しい?作品。



『変身』 東野圭吾 1991/1 講談社 ♪:☆☆☆★★
作品紹介 医学と人の心
画家を夢見、この世にかけがえのない存在として恋人を愛していた青年を、不慮の事故が襲った。 そして世界初の脳移植手術。彼の中に他人の脳の一部が生きているのだ。

やがて、彼の心の中に違和感が生じ始める。
自分は一体何者?迫りくる自己崩壊の恐怖。君を愛したいのに、愛する気持ちが消えていく....。
〜ノベルズ版より抜粋
感想 脳が心なのか、心が人なのか
ノベルズ版巻頭の著者の言葉。
「基本的に私は脳死を人間の死とみなすことに賛成であり、
 自分の死が確認された場合には、臓器を提供してもいいと思っている。ただし・・・・」
が意味深いです。

東野圭吾さんお得意(たぶん)の科学ネタミステリ。
理系出身・技術屋の東野さんは、こういうネタを得意としておられるのですが、 誰(私でも)でもすんなり読めるような作品の構成には毎回感謝してます。
専門的なことにも触れながらわかりやすい。東野さん、教師になればいい先生になったのだろうなぁ・・・ などと思います。刑事は加賀さんにまかせて(笑)

はっきりいって物語の展開は1/3程度読めば大まかには読めます。
私はピアノの時点でなんとなく想像できました。
それでもこの物語には引きこまれます.....何気に手にしたら一気に読んでしまったほどに。 遅刻するだろ(謎)

メモリはそのままで、アプリケーションを入れ替えられた人間の悲劇。
ホントに、人の心とか説明する時に、こういったPC語(とでもいうのか)を使うとわかりやすいですね。 それがいいことなのか悪いことなのかはわかりませんが。
わかりやすいよりも、わかりにくいほうのがいいものもあるし。

最後に、この物語だけは、別の結末をむかえて欲しかった....と切に思います。
KeyWord:『変身』 悲しい話・・・人を助けて生き残ってこれでは・・・
「あんたにはわからないさ。脳を特別な存在と考えてはいけない、なんていってるあんたにはな。
 脳はやっぱり特別なんだ。あんたに想像できるかい?今日の自分が、昨日の自分と違うんだ。
  そして明日目が覚めた時、そこにいるのは今日の自分じゃない。
 遠い過去の思いでは、全部別人のものにしか過ぎなくなる。そんなふうにしか感じられないんだ。
  長い時間をかけて育ててきたものが、ことごとく無に帰す。
  それがどういうことか、わかるかい?教えてやろうそれは・・・・・

・・・・・.それは死ぬってことなんだよ。
 生きているというのは、単に呼吸しているとか、心臓が動いているとかってことじゃない。
  脳波が出ているってことでもない。それは足跡を残すってことなんだ。
 後ろにある足跡をみて、確かに自分がつけたものだとわかるのが、生きているということなんだ。
   だけど今の俺は、かつて自分が残してきたはずの足跡をみても、
   それが自分のものだとはどうしても思えない。
  二十年以上生きていきたはずの成瀬純一は、もう何処にもいないんだ」

「新たな、新たな出発と考えるわけにはいかないかね。生まれ変わりたいと思っている人間は多い」

「生まれ変わることと、少しづつ自分を失っていくことは違う」



『回廊亭の殺人』 東野圭吾 1990/7 光文社 ♪:☆☆☆
作品紹介 復讐者
一代で財産を築いた一ヶ原高顕の遺言公開にともない、 関係者達は回廊亭と呼ばれる旅館に集まった。
この回廊亭ではつい最近、謎の火災事件が発生し 一人の男が死亡、女性は後に後追い自殺をして命をたった。・・・ だが遺言状をもってきた老婆・本間菊代こそが、その自殺したといわれる女性、 桐生枝梨子が変装した姿だった。
真実を明かにする為に、回廊亭に戻ってきた彼女の目の前で、 予測していない殺人事件が発生する。
後に『回廊亭殺人事件』に改題。
感想(ネタバレ) ジロー
変装がばれないのかとかその辺りも読んでいて気にはなるんですが、些細なことだし、 そういう意識しながら読むのも変だと思うので。
ただ最後がちょっと抵抗ありますね。こーいう終わり方でもいいとは思うのですが、 なんだか短絡的というか・・・。

それと、これ改題する必要をあまり感じませんね(笑) むしろ『11文字の殺人』こそすべきだと思う、いや絶対。 でもあてつけでわざと放置してるとか(謎)
KeyWord:桐生枝梨子 ・・・
「死ぬことはいつでもできる。それを最後の切り札にすれば、何も恐れるものはない」



『ある閉ざされた雪の山荘で』 東野圭吾 1992/3 講談社 ♪:☆☆☆
作品紹介
舞台オーディションに合格した男女7名は、とある山荘で合宿を開始する。
豪雪に襲われ孤立した山荘という設定の殺人劇なのだ。
だが、少しづづ消えていく仲間。残された者達に不安がよぎる。
これは本当に殺人劇なのか・・・?
感想(ネタバレ) 殺人劇
種明かしというか、ラスト近くになると「なーんだ」とは思いますが、 一つの劇として見れば中々よく出来た劇ですよ。 久我の涙腺がムズムズするのも仕方ないでしょう。 久我が嫌なヤツに書かれているので、この最後の部分はしてやれたーと思いぬ。

観客の少ないこの劇の、唯一本来の観客である読者は、 涙腺は刺激されないでしょうが、思わずニヤリとしてしまうのでしょう。



『美しき凶器』 東野圭吾 1992/10 光文社 ♪:☆☆☆★
作品紹介
栄光の影に隠された過去を封印するために、ある屋敷に忍び込んだ四人の男女。
不可抗力から殺人を犯してしまった彼らは、屋敷に火をかけ全ての証拠隠滅を計る。

だが、離れに隠された博士の最後の傑作がその全てを目撃していた・・・。
天山出版で連載された『タランチュラ』を改題して出版したもの。
感想 凶器
ドーピング・スポーツネタが絡みますが、 それは物語のとっかかりではあっても、大筋ではないと思われます。
やはり彼らを追う彼女。怯えて逃げる者や、戦おうとするもの、 そして淡々と確実に獲物をしとめる彼女。一種の殺人機械に設定は近いと思うのですが、 どうもそういった印象からは遠いのですよね。 本当にただすべきことをしている、という感じです。 関係ない人間を巻き込んだりと殺人者として優秀とはいえないせいかもしれませんけど。

そして『美しき凶器』のもう一つの意味・・・?



『同級生』 東野圭吾 1993/2 祥伝社 ♪:☆☆☆★
作品紹介 同級生
同級生の宮前由紀子が車に撥ねられて死んだ。
彼女は俺の子を身篭っていた。たった一度の関係。俺は本気ではなかった。 だが由紀子はそう信じたまま死んだ。俺は皆の前で告白した。二人は愛しあっていた、と.....。
〜ハードカバー版前書きより抜粋〜

そして学校で起きた殺人事件、英雄だった自分は一転して容疑者に。
事件を追い流されていく私が出会う真実は...。
感想(ネタバレ) 同・級・生と区切るも吉(謎)
主人公の彼、結構色々と批判してるのですが、根本をさぐれば彼も加害者なんですよね。 もちろん被害者でもありますけど。 相対的な意味でならともかく、絶対的な意味での加害者・被害者の判断って難解なんですよね。 とはいえ、この物語には半確信的に害を与えようとした人物が何人かいると思います。
彼と彼らの違いは....あるんですけど、なんかうまく出てこないです。
立場が違えば、彼も何時か、そちら側に立っていたのでは.....と思う感覚もあります。

彼は最後に友人に本当の気持ちを証して、それを許す人がいた。 だから、彼が嫌っていた「そちら」には行かないと思います。

最後の「同級生さ」が綺麗です....。
KeyWord:川合一正 ・・・・
「許す」
KeyWord:『ある風景』 春美萌え(謎)
「あの人が持ってるの、お兄ちゃんのタオルだ。ガールフレンド?」
「いいや....同級生さ。」



『分身』 東野圭吾 1983/9 集英社 ♪:☆☆☆★
作品紹介 母の目
「もしかしたら、私は母に嫌われているんじゃないか」
何時からかそんな思いを抱くようになった、氏家鞠子。追われるように寄宿舎のある私立学校 に進んだ彼女の家庭をある日悲劇が襲う。

「どうして駄目なわけ」
ちょっとしたTV番組に、バンド出演することになった小林双葉。母親は頑なに反対する。

全く他人として生きてきた二人。.....その誕生と人生に裏に隠された謎とは...。
感想(ネタバレ) たとえ遺伝子で繋がってはいなくても
話自体はありきたりなのかも知れません。 1/3も読めば、細かい事情はともかく、おおまかなストーリーは予想がつきますし。
それでも、細かい部分が好きになったので、割と印象に残っています。

晶子が自分のクローンである双葉を「憎い」といった辺りが特に......... 若さに対する嫉妬なのでしょうか。 あまり好きな言葉じゃないけど「オリジナル」に拒絶された双葉と鞠子が出会うシーンが結構好きですね。 想像の余地を残しすぎるラストって、本来あまり好きではないんですが。
KeyWord:氏家清 嘘下手な男
「悲しいことは胸の奥にしまいこみ、決して扉を開けないことだ」



『怪しい人々』 東野圭吾 1994/2 光文社 ♪:☆☆☆
作品紹介 短編7篇
『寝ていた女』・・・家をホテル変わりに貸すうちに、部屋で寝ていた謎の女。
『もう一度コールしてくれ』・・・強盗に失敗して男が逃げこんだ家は、忘れられないあの時の。
『死んだら働けない』・・・謎の死をとげた働き者の、なんともいえない事件の謎。
『甘いはずなのに』・・・新婚旅行先で妻殺害すら覚悟する男の理由と妻の理由。
『灯台にて』・・・友人と私の、誰にもいわない。二人話すこともない。過去の出来事、出来心。
『結婚報告』・・・「結婚しました」の手紙に入っていた写真の友人は別人?
『コスタリカの雨は冷たい』・・・海外で強盗にあった日本人の疲労と泣きっ面に蜂。
感想 毒笑と快笑のがええな
どれも読みやすくわかりやすい作品。 ちょっとあたりさわりのないような感じもしないでもない。
中でも面白かったのは『甘いはずなのに』『灯台にて』かな。



『むかし僕が死んだ家』 東野圭吾 1994/5 双葉社 ♪:☆☆☆
作品紹介 灰色の家
かつての恋人からの突然の連絡。
彼女の父親が残した地図に記された場所には、白い家がたっていた。
そしてそれは、彼女の失われた記憶を探す旅だった。そして.....
感想(ネタバレ) 幼児虐待とトラウマ
幼児虐待とトラウマ。自分探しもの。
奇をてらいすぎない(と思う)為か、推理しやすい東野作品。 読みながらも次々と予想を覆す展開と、ページを戻ると納得できるわかりやすい理屈。
どんな過去があっても生きていける.....トラウマものの典型なんで、 やはり終わり方が少し悲しい感じもしましたが、ごちゃごちゃしすぎていないので好きです。
KeyWord:中野沙也加御厨久美 昔の恋人、旧姓倉橋
「欠けてるのよ。あたしにはわかる。あたしにしかわからない。あたしは欠陥人間なのよ」

「私はやはり、私以外の誰でもないのだと信じて、これからも生きていこうと思います」



『虹を操る少年』 東野圭吾 1994/8 実業之日本社 ♪:☆☆☆
作品紹介 光学
何時からか、不思議な光が夜の街に輝きはじめる。
次々と色をかえ、一定のパターンを持ずに輝くそれは、様々な色相をもち、まるで闇に中に輝く虹のようだった。 囁くような光に導かれて、光の元に集った人たちは、光瑠という少年と出会う。
感想(ネタバレ) 種の進化
予備知識なしで読みはじめれば、少し違う感想になったとも思うんですが..... おおまかにですが、物語の内容を知っていたのが少し残念です。
本に載ってる書評なんかとは別に、NETの書評や感想とかは、 好きな人が率直なことを書いているので、趣味が合う人を見つければ読む本の参考になるし。 この本もそれで興味を持って読んだ口なんですが.....う〜ん「ねたばれです!」 って書かれてても、ついつい見てしまう私の節操の無さがいけないのか....

特殊能力や隠された能力に目覚めた人が、他の人も....ってのはありがちな物語なんですが、 王道でもあるし。それにしても東野さんはなんでも書けるんですね。
KeyWord:小塚輝美 確執する家族に悩む少女
「私を怖がらなくもいい」
KeyWord:相馬功一 元・暴走族、現・光瑠のマネージャー的存在
「すべての生物は、種の保存を最優先にしている。そのために自己を犠牲にすることもある。
 種を残すために、世代交替をする。それが大事だと知っている。
 人間ほど。
 世代交替を忌み嫌う生物は、地球上に存在しない」



『あの頃ぼくらはアホでした』 東野圭吾 1995/3 集英社 ♪:☆☆☆★
作品紹介 ノン・フィクション(一部フィクションを主張)
東野圭吾さんの小学校〜大学卒業までをつづったノン・フィクション。
※一部フィクションだと著者は主張してます。
感想 笑い本
笑えます、とにかく失笑苦笑のオンパレード。

ミステリーではないんですが、あえて謎をあげれば『僕のことではない』に登場する 『K君』というのが誰なのか......K......Kか.....。

アホな感想で申し訳ありませんが、 作中のビートルズFANの友人『H本』という人、どうしても規制の概念のためか、邪悪な意志が語りかけるのか『エッチ本』 と読んでしまう......
あれ?何かおかしいかな、読み方正しいし何も間違ってない『H本』だしょ。
なんか誤解されちゃうかなぁ.......困った。困った。



『』 東野圭吾 / ♪:
作品紹介
感想(ネタバレ) 同・級・生と区切るも吉(謎)
KeyWord:
「」



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