アーサー・C・クラーク #01
『幼年期の終り』 |
A・C・クラーク/ 福島正実訳 | 早川書房 | 1979/4 | ♪:☆☆☆★★★ |
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『CHILDHOOD'S END』 1953年発行 バランタイン社/アメリカ | ||||
作品紹介 | 人類は、宇宙に唯一人孤独ではない | |||
まだ人類が月面に到達していない時代。 世界最高の頭脳が結集し"人類の力"で月面を目指していた。そんなある日....... "天空を眩いばかりの宇宙船が覆い、我々に語りかける" 人類の力を信じて努力してきた....宇宙への憧れや想い。 自らで掴もうとしていた何か、自らが解決すべきだったもの、その全てを彼らがもってきて、そして.... もっていってしまった。歴史が過去と切り離される瞬間.... 月を目指して生きてきた一人の科学者、彼は泣いていた.....。 だが彼の頬を流れる涙は、決して悲しみや絶望の涙では無かった。 「我々はこの宇宙に唯一人では無かった....」 彼らの司令たる”カレルレン"の元、黄金時代にある人類、ただ幾つかの謎を持ちつつ。 何故、彼らは直接姿を見せようとしないのか? そもそも彼らは本当は何を考えているのか?その真の目的は? ......物質を極めた究極の種族と、幼き人類の出会い。 彼らと、我らと............読み返す程に限りない、SFの傑作。 | ||||
感想 | 1950年代の作品ですが..... | |||
『地球幼年期の終わりに』ともいいます、現在、心理面を扱ったSFや様々な物語の原点ともいえる作品です。
最初に読んだ時「これ50年前の小説なの!?」と思いました。 現在ある漫画・小説・映画・ゲーム、アニメetc.....様々なメディアが影響を受けてるでしょう。 と、勝手に思ってます、実際間違ってもいないと思うし。 あまりにも多すぎて羅列できないのですが、アニメーションでは『EVA』など、その他多すぎ。 ゲームでは『ゼノギアス』など、その他多すぎ。漫画などでは『F.S.S.』の"カレン" などは"カレルレン"のモジリだと永井さんも言ってますし、最近の本では『アイレン』なんかも似た部分ありますし、というか多すぎです。 50年前には、画期的な空想科学小説(SF)として注目された本ですが、 日本での刊行は1979年のようです。 イキナリ外国の料理を食べても、食べ物には慣れもあります。 幼い頃の経験、現在の食生活の影響を受けますから"美味しい"の根本的な感覚は ある程度人類共通かも知れなくても、時代や土地・風俗・環境などによって感じる"美味"は違うものだと思います。 本や小説にも同じことはいえて、いきなり難しいのは読めないし、読んでもつまらない。 歴史・SF・ミステリなど、あらゆる分野でそういう部分はあると思います。 自分の興味のない分野の本は比較的読みづらくツマラナイし、奥まった表現を喜ぶ人もいますが、 それが多数の読者を離す原因の一つでもあるでしょう。 一瞬、何かの学術書や専門書のたぐいではないのかと思う小説、 そして最近の傾向としてやたら長いページ数。.......『幼年期の終り』はそれとは一画をなす....と私は思います。 1950年代の読者の感想は知らないのですが現在この物語のエッセンスは、 様々なメディアにすりこまれているので、抵抗を感じません。 50年たった今改めて読んで、様々な意味で誰にも理解できる物語です。 海外作品を敬遠する私ですが『幼年期の終り』は、50年たって熟成した..... やっと我々が追いついた、素晴らしい物語です。21世紀においても、それは色褪せないとさえ思います。 | ||||
感想(ネタバレ) | そしてカレルレンは、我々の<太陽>に背を向ける | |||
終盤出てくる新しい子供たち....恐いです(笑)より精神?ん〜霊的な存在....って事なんでしょうが、
とても人類とはいえませんよね、あ、人類じゃないんだっけ......
カレルレン達のがよっぽど人間ですよね(笑) 今や、漫画・アニメ・ゲームなどで、まるで八百屋で量産型ザクを叩き売りするかの如くに 扱われ、悪い意味ではなく一つのテーマとさえなった「人の昇華」という題材を見事に現した作品だとも想います。 この手の作品は、風呂敷を広げれば広げる程に後半収集がつかなくなるのが常だとも想うのですが、 この作品は問題ないでしょう。 作品の質とは別ですが「多を一つにする」のではない形の作品を知っていたら、 誰か紹介してください。 ところで、多くの未来。科学における未来的予想図を描くのは、SFの宿命にして命題の一つでもあると 思うのですが。インターネットを予想した小説って結構少ないですよね、 ネタとしてではなく予想....予知にも近いものだといってもいいかも知れませんが。 この物語も1953年発行として、 実際の歴史では月面到達が1969年ですが、100年間にわたっての人類と上帝の物語なのですが、 NETは存在の欠片も見せませんし。 やはりSFのテーマでもあり、収束し終息でもある、人類の未来。 その一つの形を描いた物語の傑作の一つだと思います。 誰が言ったかは忘れましたが 「とくに願いは無い。だが、ただ人類と地球の未来を見守っていたい....。何も干渉できなくても、それでいい。」 一種の神の戯言に等しい発言なのですが、人間としてそれを見た人物を物語の自然に登場させた辺りにも感服を憶えます。 そして、カレルレンは呟く...「我々は我々のやり方で、何時か必ず、それに触れて見せる」 | ||||
KeyWord:ストルムグレン | 国連事務総長 | |||
「あなたはオーバーロードが、この世に安寧と平和と、繁栄をもたらしたことを否定できますか?」 「カレルレンは世界を一つにする為に力を尽くしている。 だから、何であれ彼の敵を利することは、わたしは絶対にやらない。 彼の究極の目的が何か、わたしにもわからない。 しかし、それが良いものだということは信じている。 彼の行動のすべてがその証拠だ」 | ||||
KeyWord:老ウェールズ人 | 正当な主張 | |||
「オーバーロードとは何者か。彼らの正体を、あんたは知っているのかね?」 「オーバーロードの動機は善意から発しているのだろう。 だがそれは彼らの標準...時おりは我々の標準と一致しないでもない標準からすればの話だ。 彼らはおせっかい屋なのだ。 人類は彼らに来てくれと頼んだ覚えは無い。やって来て我々の世界をひっくり返してくれと、 幾世紀にもわたって、人類が守ろうと戦ってきた理想を..... そうだ国家もだ.........ぶちこわしてくれとたのんだ憶えはない」 | ||||
KeyWord:カレルレン | 地球を見守り、降り立った、オーバーロード(上帝) | |||
「われわれのこの銀河系には.....八百七十億個の恒星がある。 だがこの数字ですら、宇宙の無限の広がりを説明するには不充分なのだ。 この宇宙に挑戦しようとする君らは、世界中の砂漠の砂の一粒一粒をよりわけ、 分類しようとする蟻と同じものだといってさしつかえあるまい。 .......(中略)....... これはつらいことかもしれないが、しかし諸君らはそれに直面せねばならない。 惑星はいずれはきみらのものになるだろう。 だが、恒星はついに人類のものにはならないのだ。 恒星はけっして人類のものにはならない.......。」 「君はもう存在しないものを捜しているのだ。 いいか.......彼らはきみの身体の個々の細胞程の個性も持ち合わせていないのだ。 だが、結びつけて一体となると、君などよりはるかに偉大なものになるのだ」 | ||||
KeyWord:ジャン・ロドリックス | ケープタウン大学工学部学生 | |||
「今は好奇心の動くことは一つしかありません........それが僕自信の惑星の末路です」 |