鯨統一郎さん #01
『邪馬台国はどこですか?』 鯨統一郎 東京創元社 1998/5 ♪:☆☆☆★★
作品紹介 歴史ミステリー作品集
カウンター席だけの地下一階の店に客が三人。三谷敦彦教授と助手の早乙女静香 、そして在野の研究家らしき宮田六郎。 初顔合わせになったその日、「ブッダは悟りなんか開いていない」 という宮田の爆弾発言を契機に歴史談義が始まった...。
回を追うごとに話は熱を帯び、バーテンダーの松永も教科書を読んで呼び知識を 貯えつつ、彼らの論議を心待ちにする。

ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、光秀謀反の動機、明治維新の黒幕、 イエスの復活...を俎上に載せ、歴史の常識にコペルニクス的展開を迫る。
〜『邪馬台国はどこですか?』巻頭から抜粋〜
感想 真実は知り得ない、それだからこその魅力
「こんな女いねぇ」というくらい、お高く気が強い早乙女静香と、 「ある意味で嫌なヤツだ」という宮田六郎の、 口喧嘩風(笑)ディスカッションに、時々三谷教授が入り、 そして私は松永さんに心を重ねて歴史ミステリーの世界を楽しみました。 それにしてもこの二人、よく殴り合いにならないよなぁ.....高レベル悪口のオンパレードだし。

それぞれの表題のお話以外の小ねたも興味深く、作品自体も ただ論理を重ねるだけではなく、ユーモアにあふれて楽しめるようになってます。 歴史に興味のある人なら是非必読して欲しい本。忘れた頃にまた読みたくなります(忘れるな)。
「悟りを開いたのはいつですか?」
ブッダは悟りなんて開いていない、それに釈迦族の王子でもない。
妻の浮気を苦に出家したのだ、子供に「ラーフラ(悪魔)」なんて名前つけるか?
そんな論理と宗教についてのお話。とはいえ、ブッダという人間を否定してるわけではない。

「邪馬台国はどこですか?」
一般的に言われる邪馬台国の比定地は、畿内・九州だという説をしりぞけ、東北にあるのだというお話。 これ結構聞きますよね。 大和朝廷成立の謎や、当時の(今も)中国の日本に対する考え方なども。

「聖徳太子はだれですか?」
聖徳太子=推古天皇=蘇我馬子が同一人物だというかなり大胆な説。
日本書紀の欠点についても言及。

「謀反の動機はなんですか?」
明智光秀の謀反は信長からの暗黙の依頼で、本能寺の変は信長の自殺なのだという、 これまた物凄く大胆な説。 メディアでは快男児風に描かれる信長だが、 ヒトラーに匹敵する虐殺者にして殺人狂であり、自殺願望が強い異常人格でもあると。

「維新が起きたのはなぜですか?」
明治維新の全ての黒幕は勝海舟である、という説の上にさらに勝海舟は催眠術師であったという説を。 私、こればかりはちょっと納得できないのですが....といっても、ものごとを一概に否定する事もできない。 たしかに西郷隆盛の件などはその通りですし。だいたい西郷の本質はただの戦争屋だよ、嫌い(謎)

「奇跡はどのようになされたのですか?」
「キリストの復活」、それは宗教的な意味での抽象的なものではなく 実際に起こった事だというお話。ただしトリックを用いて。
私が、一通り読んだ後に思った事は.......もっと読みたいよ、こんなお話!ということでした〜♪
KeyWord:早乙女静香 バカバカ連呼、アスカの声で読もう(謎)
「あなたバカじゃない」 「あなた性格悪いわね」
「あら、あなたもたまにはまともな思考が働くことがあるのね。
 いつもはあたしの説に反対するしか能がないくせに」
「あなたまだあたしが紹介してあげた病院に行ってなかったのね」
「三つ数えるまでにその減らず口をやめないと脳天叩き割るわよ」
KeyWord:『早乙女静香 VS.宮田六郎』 口喧嘩マニアっくす
「あなたって、もしかしたらバカ?」
「哲学的な意味でならイエスだ」

「あなたってもしかしたら今世紀最大のバカかもしれないわね」
「たぶん違うだろう。君がいるからな」
KeyWord:宮田六郎 結構変人っぽい(謎)
「推古天皇の名前だよ、古を推しはかれ、という意味じゃないのかな。これは」

「日本はトップレベルの教育国になったようだな。
 だってその記事を信じるなら、日本ではソープランド嬢も大学に通っているとも取れるからね。
 真の知性と教育レベルは別のものだけど、
 少なくとも教育レベルの面では日本は世界でもトップクラスだというわけだ」

「世の中はどんどんよくなってる。 確かに科学の発達は環境汚染をもたらした。
 物質的な面をいえば世の中は悪くなってるだろう。
 でも逆に人の心は、昔と比べてよくなってると思う。
 ローマ帝国の皇帝だったネロはキリスト教徒を大虐殺している。
 日本だって、たとえば織田信長あたりは一向宗信徒を大虐殺している。
 織田信長は今でいえば総理大臣だろ?
 現代では少なくとも総理大臣が大虐殺をするようなことはなくなった」
KeyWord:松永(バーテンダー) 彼という男
静香「松永さん、延長コードある?」
........こういう場合、バッテリーを使うのではないかという疑問を抱きつつ、
松永はなんとか延長コードを捜し出し、パソコンのアダプタに繋いだ。



『隕石誘拐 - 宮沢賢治の迷宮』 鯨統一郎 カッパ・ノベルズ 1999/6 ♪:☆☆☆
作品紹介 『銀河鉄道の夜』
私は夜空を泳ぐ鯨の夢をよく見ます。
これはたぶん、宮沢賢治の童話『双子の星』に登場する箒星のイメージです。
ある時、夜空の鯨が夢の中で私にこう告げました。
『銀河鉄道の夜』には暗号が隠されている.......
私はその言葉を信じて夢中で暗号の発見に取りかかりました。
そしてついに見つけたのです。
『銀河鉄道の夜』に隠された美しい暗号と、おどろくべき物語を....。

〜巻頭「著者の言葉」より〜
売れない童話作家、彼を支える妻......誘拐事件。
誘拐犯が求める「宮沢賢治の財宝」とは?

「宮沢賢治」日本人の誰もが知り、そして本当は誰も知らない。
そんな「彼」を特別な人間ではなく、一人の人間として見なおす事ができる1冊。
感想 虹色の宝石
『邪馬台国はどこですか?』で一気に鯨さんのFANになった私ですが、 今回は歴史ミステリというよりは、展開を楽しむお話ですよね。
でもは「マジエル」とかが出たあたりでかなり引きましたが(笑)
ちょっと鯨さんの作品に、勝手な固定概念を持ちすぎてしまってたようです。
作品自体の質とかは別に、稔美さんの扱いが私的にちょっと.......いや、別にいいんですが、 こういう展開でアレを克服するってのは.....ちょっと好きな展開なんですでが抵抗も感じます。
まあ例の如く邪推ですが。

ちなみに『銀河鉄道の夜』は読んだ事ありません。昔の作品だから、なかなか機会が無いです。 文体・イメージ・その他のあらゆる意味で、昔の作品を特に崇める必要も無いと思ってる一人なので。
KeyWord:宮沢賢治 イーハートーブの世界、禁欲主義者一号
「ただいちばんのさいわいにいたるためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです」
「どうして僕はこんなにかなしいのだろう」
「雨ニモマケズ.......」
KeyWord:中瀬稔美 禁欲主義者弐号
「人間の道徳規範も時代によって変わるものよ、
 宮沢賢治が残酷だった訳じゃないわ。当時では普通の感覚だったのよ」



『金閣寺に密室 - とんち探偵一休さん』 鯨統一郎 祥伝社 2000/4 ♪:☆☆☆
作品紹介 金閣寺に密室(ひそかむろ)
室町幕府三代将軍・足利義満。 将軍職を退いた後も圧倒的な権勢を誇り、帝位すらも伺っていた彼の突然の死。 当時京で賢才の誉れ高い一休に、義満の死について内密に探って欲しいという依頼が来る。

.....時がたち一休没後一年、陰陽師・六郎太と白拍子・静は、 一休晩年の愛人・森女が語る、歴史に埋もれた物語を知ることになる。
「もしあなたがこの物語を"歴史の真実"と信じたまま一生を終えたとしても、
 さしたる不都合は生じない筈です」
〜著者の言葉より〜
感想 本作と関係ないですが、本当の『僧』って.....。
謎解きやトリック自体はそんなに凝ってない....というか問題あると思うのですが、
私にとって一休さんって子供の頃のアニメは勿論、 劇画「あかべぇ一休」などでも馴染みの深いものなんです。 だから、随所に一休さんネタ(このはしわたるべからずなど) が出てくるこの本は読みやすく、思い出して懐かしく楽しめました。

本編と別に驚いたのは、 一休さんが天皇家に縁のある人間だってのは、色んな本で匂わしていますので 何度も聞いたネタなんですが、宮内庁も正式に後小松天皇の御落胤だと認めてるんですね。 通説では無いと書いてもありますが。

.....それと、間抜けな事に最後の最後まで気がつかなかったのですが、 陰陽師・六郎太、白拍子・静って『邪馬台国はどこですか?』の宮田六郎と早乙女静香ですよね。 喧嘩する程仲がいい。
KeyWord:『花』 世阿弥&一休
「姿形の美しさ、声の美しさ、若さによる華やぎも大事だが、
 それらは一時的な花に過ぎない。真の花ではないのだ....秘することだな」
「秘すること。秘すれば花か。」
KeyWord:白拍子・静 バカ莫迦連呼
「莫迦じゃないあなた。
 京織物を買ってくれなかったら、あたしがあなたに呪いをかけてやる。
 子々孫々、未来永劫、歴史の謎を解き続けろって」



『千年紀末古事記伝Onogoro』 鯨統一郎 角川春樹事務所 2000/10 ♪:☆☆☆
作品紹介 ミレニアム古事記伝
日本神話における世界創生。日本の誕生を、鯨さんオリジナルの解釈を交えて あらたに書き下ろされた「ミレニアム古事記伝」
感想 日本神話の世界
古事記の原文なぞ読んだことはありませんし、永遠に読む気もおきないでしょうから、 せいぜい学生時代で習った程度の知識です。
神話が結構好きなんで、比較的日本神話については知ってると思うので楽しめました。
文章もこの手の本にしては読みやすく、説明も簡潔で余分な所がない(オリジナルはあるけど) のですが、どちらかといえば神話を知らない人ではなく、知ってる人向けの本だとも思います。 ニヤリとする本。

有名なイザナギとイザナミの国造りからではなく、世界創生の.....
「天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)」
「高御産巣日神(タカミミスヒメカミ)」
「神産巣日神(カミスヒノカミ)」の誕生から、描かれています。
ただ、やはりこの部分は殆ど説明らしいものはありません。いや、あることはあるんですが....。
ここは手を出せないでしょう。そもそもわけわからんし。

個人的には「天之中御中主神」と妙見様・北斗七星信仰。
キリスト教の神エホバとの関連性なんかに注釈をいれて欲しかったのですが、 この作品はあくまでも『古事記伝』なので、そういった異説には触れていません。

物語は「伊邪那岐(イザナギ)」「伊邪那美(イザナミ)」の 国造りから、ニニギノミコトが「三種の神器」を持ち、 「葦原中国(あしはらのなかつくに)」を大国主命から譲りうけるまでです。

・・・神話の特性とから、女性神(神に男とか女があるのもどーかとも思うけど) の扱いに多少抵抗を感じる人もいると思うのですが(私も多少感じる)、 神たる男性にもなし得ない「子を産む」ことができる神、女神。
女神とは本来、大地母神でしょう、と認識すればあんま抵抗ないかなーとか。
(※天之御中主神は、単体で神を産める、らしい)

まー神話って面白い。そんなことを改めて思いました。
たぶん正確には伝わっていない、歪められてもいる伝承の中に、たくさんの人の想いとか祈りがこもっている。 口伝が主だった麗しい時代のささやかな悪戯。これからは口伝ってのは願っても叶わないから.....。

それでも思うのは『邪馬台国はどこですか?』に感じたキレが薄いかな.....みたいな。
あの本読んでる時は、布団の中で「えー!でもなー」「ふむーそうなのかー」 「むふー」なぞと意味不明な声をあげながら、ごろごろと寝たもんですが、 それが無いのが寂しい......。
正直、あんまり大胆な仮説(著者曰く、仮説ではないかもでしょう) は無いかな.....創作系で聞いたことあるネタが多いし。

ホントにこの作品には全然関係ないんで、気にして欲しくないのですが、 ある意味で気にしてほしいのですが(ヲイ)
タケミナカタ(漢字出力だるい)を 「天津甕星(アマツミカボシ)」と、いう正確な理由ってあるのかな(謎) ないくさい。
KeyWord:瓊瓊杵尊(ニニギノミコト) イブも同じ理由で禁断の果実っ食ったな
「掟は変えられる。だが、気持ちは変えられぬのだ」



『北京原人の日』 鯨統一郎 講談社 2001/1 ♪:☆☆☆
作品紹介 歴史の謎「失われた北京原人化石」
「空から人が降ってくる....」銀座四丁目でおきた、謎の空中落下事件。
被害者の持ち物から、北京原人の化石の一部が見つかったことで事態は俄然注目される。

太平洋戦争中、どこへともなく消えてしまった人類の遺産。
再び時が巡り浮かび上がった謎....
北京原人化石は何処へ消えたのか?誰が持っていったのか?」

事件現場に居合わせ、偶然に被害者の手帳を拾った、冴えないカメラマン・山本達也。
彼はライター・天堂さゆりと組み、二人其々の思惑を持ちながらも、 太平洋戦争初期のどさくさで失われた「北京原人化石」の謎を追う。
感想 頭を使う事は全て食い物に変換して思考する(謎)
今回物語的には、今までの鯨さんの長編の中で一番ではないでしょうか?
判りやすく読みやすい、歴史ミステリーと物語が、良く出来た ナポリタンスパゲッティーのようにMIXしてると思います。
ただ『邪馬台国』にあったような濃密さ.....それも好きだったので、 もっと読むのがキツクなるようなわけの判らない(笑)資料をドカドカのせて、 これでもか!これでもか!と小ネタを連発して欲しいなぁ....とも感じました。
家庭で作る「ケチャップかけすぎだろ」というナポリタンも好きなんで。
感想(ネタバレ) 鯨節、鰹節ではない(座布団没収)
日本軍の暗号解読漏洩の事実と、北京原人化石消失を組ませる.....大胆です。
正直読んでる最中は「いや、それはないって、いくらなんでもさ」 とも思ったのですが、今こうして感想を書いていると気づくことがあります。 そんなこと誰にも判らないんですよね。

たった一人のせいで戦争に負けた、ってのも突拍子もないことかも知れませんが、 誰かが蹴った小石が堰を壊し、大きな濁流の原因になることだってあるでしょうし。
名も残らない誰かが、本人はそう意識せず、何をしたわけじゃなく歴史を変えていた.... ってのはSFなんかじゃよくありますが、実際に起きてる可能性.... とは違うのでしょうが、歴史の川の表面に見えない底での小石のぶつかり合いが 流れを変えている....
そんな辺り前のことを、鯨さんの作品を読むと思い返します。

歴史に残るミステリーってのは、案外こういう感じの、個人の関係ない思惑が裏に潜んでいるのかも 知れませんね。だからわからない、事実は、もう誰にも......。
達也の「信じる」って連呼される言葉。読んでいてウザかったんですが、 読後は達也を見なおしました。こういった歴史があったと信じてもいいかも(笑)

希望なんですが、鯨さんには是非「セント・メアリー号事件」を扱った作品を書いて欲しいです。 ホントに謎だらけだから、色んな説が出てますが、鯨さん独特の物語として読みたい...... 現代から迫るのもいいけど、いっちょ当時でコナン・ドイルなんかを主役にしてとか(蛇足)
KeyWord:天堂さゆり ライター。事件をとおして....
「中国側も必死に探そうとした。 アメリカも、日本も。でも見つからない。
 現在まで、消失した北京原人の化石がどこにあるのか、誰にもわからないのよ」
KeyWord:山本達也 冴えないカメラマン
「誰かが祖国を裏切る可能性は常にある」
備考 北京原人化石発見と、消失について
まとめてみました。
細かい部分の説明は作品を参照してください。
作品中でふれていない部分も多少ふれています。
北京郊外、周口店の洞窟で「歯」の化石がみつかったことをきっかけに、 大規模な発掘調査が行われる。
「北京原人化石」の中で最も有名で、それ自体が一般的には「北京原人化石」と言われる 「北京原人の頭蓋骨」は、 1929年12月2日、裴文中(はいぶんちゅう)の手により発掘され、 時の調査団長ダビッドソン・ブラックに渡される。

4ヶ月後、四十万年前の頭蓋骨だと判明し、 「北京原人(シナントロプス・ペキネンシス)」と学術名が定まる。
1941年、急死したブラック博士の後を継ぎ、 ワイデンライヒ博士の手により一通りの研究が行われた北京原人化石は、 北京協和医学院のワイデンライヒ研究室の金庫に保管されていた。

大陸に広がる不穏な空気と日本軍の進行により、中国当局は異例ともいえる 重要文化財の国外持ち出し計画を承認し、北京原人化石のアメリカへ一時非難を要請する。

アメリカ大使館に運ばれた後、 秦皇島から、定期船プレジデント・ハリソン号にてアメリカ本土に移送される筈だった 北京原人化石は、12/8に開始された太平洋戦争のために、 プレジデント・ハリソン号は攻撃を受け座礁してしまう。

日本軍が秦皇島を占拠した時には、北京原人化石はどこへともなく姿を消してしまっていた。
ここからは、私の解釈です。

中国は北京原人化石を隠す必要がなく、日本軍の手に落ちるのを恐れ一時隠蔽したとしても、 戦争が終った後に隠蔽する必要は全く無い。むしろ輝かしい遺産なのだから、 公開するべきもの。100%白でしょう。

日本は、当時注目の人類遺産であるこの化石を手にしているなら当然公表したと思います。 諸外国との何らかの取引で.....という説は無いともいえませんが、ちょっと苦しいと思います。

アメリカですが、北京原人化石の所有権は中国にあったと思うのですが、 発掘に出資したのはアメリカの財団なので研究は問題なく行えるわけですし、 当時の技術でのデーターは全て測定し、現物は研究対象としてよりは文化財としての価値のが 高いとききました。

.....一番クサイのはアメリカでしょう。やっぱり。もっとも「やると思えばできた」位置にあると思います。 動機は国としてみると薄いのですが、個人でみるとあってもオカシクない.....と思います。 ワイデンライヒもクサイのですが、ワイデンライヒ個人が入手して懐に納めて悦に浸っているってことはないでしょうから、 財団絡み.....?
何だかロックフェラーとかフリーメーソンを出すと、その時点で三流小説のようですが、事実世界の富を 最も多く握る財団ですし、データーとしての価値とは別に「証拠」として北京原人化石を 手元に置いておいて損が無く、出来るならばとりあえずやっとけ.....と多少乱暴ですが。
ただの興味本意とかでならばいいんですが(良くもない)、民族問題絡みで持っていたのなら嫌ですね........ 作品中の説とこの辺は被ります。



『なみだ研究所へようこそ!
 -サイコセラピスト探偵 波田煌子
鯨統一郎 祥伝社 2001/4 ♪:☆☆☆
作品紹介 連作短編8篇
新米臨床心理士・松本清は、大学の恩師に紹介され「なみだ研究所」 の見習として赴くことになった。
伝説的実績を持つセラピスト・波田煌子との出会いに機体を膨らませていた 彼だったが、どうみても10代にしかみえずに奇妙な発言ばかりする彼女を前にして、 彼の不安はやがて不満になっていくのだが・・・。
事務全般を受け持つ小野寺さんを交えて、奇妙な3人の奇妙なカウンセリングがはじまる。
『アニマル色の涙』・・・不安だらけの松本を余所に、動物の夢をみる患者を診る波田先生。
『ニンフォマニアの涙』・・・次の患者はニンフォマニアの妻を持つ男性。
『憑依する男の涙』・・・心理学を知らない先生の次の患者は腹話術をする男。
『時計恐怖症の涙』・・・時計に怯える少年の本当の理由。
『夢うつつの涙』・・・ついには占いを始める先生と、旅行先でのある出来事。
『ざぶとん恐怖症の涙』・・・ざぶとんを恐れる男。笑点に隠された以外な解釈(笑)
『拍手する教師の涙』・・・松本の恩師は、失敗する人に拍手してしまう奇癖を持っていた。
『捜す男の涙』・・・何を捜しているのか判らない男。そして、最後のカウンセリング。
感想 ユーモア推理
今回、歴史ネタは殆ど皆無。
セラピストということなのですが心理学も殆ど皆無だと思う(笑)

言葉遊びやイメージの連想で、ユーモアあふれるライト感覚の推理を楽しめる作品。
松本の言動に感じる違和感が氷解した時には、 自ら知らない気づかない内に、誰かのカウンセリグを受けているのでは・・・などとも思いぬ。



『九つの殺人メルヘン』 鯨統一郎 光文社 2001/6 ♪:☆☆☆★
作品紹介 連作短編9篇
渋谷区にある日本酒バーで、 僕・刑事の山口・マスターの三人は、山口がうっかり漏らす事件の謎について、 おもいおもいの言葉で語りあっていた時・・・ それが、二十歳になったばかりの、桜川東子さんとの出会いの時だった。
大学で「メルフェン」を研究しているという彼女は、 事件を童話に隠された意味を例えて、次々と解決していく。
『ヘンゼルとグレーテル』・・・ある兄妹と孤独な老婆。
『赤ずきん』・・・おばあさんと狼の区別がつかないことに関する疑問。
『ブレーメンの音楽隊』・・・ブレーメンに行かないブレーメンの音楽隊。
『シンデレラ』・・・灰かぶり姫、王子の意図。
『白雪姫』・・・鏡から聞える嫉妬と欲望の声。
『長靴をはいた猫』・・・王様になった男と猫の関係。
『いばら姫』・・・姫をさすだろうという針と与えられる百年の眠り。
『狼と七匹の子ヤギ』・・・親ヤギに化けたオオカミ。
『小人の靴屋』・・・眠りの間に訪れる夢。
感想 こんなバーにいきたい
『邪馬台国はどこでした?』のようにバーでの会話形式。
「童話ネタ」としてみるとそんなんでもないのでしょうが、鯨さん独特の「バーで・・・」形式が好きな人には満足の一冊だと思います。
ふかーいネタもあるのですが(笑)ちょっと世代の違いもあってか、 こちらは正直あまりわかりません。「8時だよ、全員集合!」あたりはわかるんだけども。

私としてはノリ、ノリで読める本、読ませる本。
そうそう、日本酒が好きな人にもお勧め。ツマミとかにウンチクをたれるのが好きな人にも。

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