#メルカトル鮎・シリーズ


『翼ある闇 - メルカトル鮎最後の事件』 麻耶雄嵩 講談社 1991/5 ♪:☆☆☆
作品紹介 蒼鴉城
日本有数の資産を持つ今鏡家が京都北端に構える豪邸「蒼鴉城」
依頼内容が判らないままにそこに招かれた探偵・木更津悠也。
だが彼が蒼鴉城についた時に、依頼主である今鏡伊都は無残な死をとげていた。
混迷する事件と続いて起きる惨劇。終らない舞台の上にメルカトル鮎が現れて......。
感想 最後の事件
『夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)』.....如月烏有の方を読んで、これがかなり壷にはまった私は、 遅れ馳せながら麻耶さんの著作に手をつけています。
メルカトル鮎も木更津悠也も如月烏有の方にも出てくるのでわけるのは変かなーと思いつつも、 なんとなく雰囲気が違うのでわけてます。ただの自分の好みの問題ですが。

感想は....烏有の方で今鏡家の事件がメルカトル鮎最後の事件になるってのは知ってました (タイトルにも書いてあるし)デビュー作でいきなり最後の事件ってのも妙だとは思いましたが。
メルカトル鮎がああいう感じで物語に絡むとは思ってなかったので、その辺りは意外でした。 木更津悠也がどうも好きになれないあたりで、烏有さんのシリーズのが好きかな? 私的なことだけいえば。
ラストもどうせ崩れるならば『夏と冬..』くらいのカタストロフィが好みです。
KeyWord:今鏡夕顔 今鏡家の養女
「黒があるために白は存在するのでしょう?」



『メルカトルと美袋のための殺人』 麻耶雄嵩 講談社 1997/6 ♪:☆☆☆
作品紹介 短編7篇
「哀しいかな、基本的に私は長編には向かない探偵だな」
....そういいきる銘探偵メルカトル鮎。そして美袋三条、二人の為の七つの事件。

『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』 『化粧した男の冒険』 『小人闃ユ居為不善』
『水難』 『ノスタルジア』 『彷徨える美袋』 『シベリア急行西へ』
感想 銘探偵はここが違う
メルカトル鮎....性格悪いですね。いっそ犯罪者に転向しては? といっても『最後の事件』があるので無理な話ですが。 ワトソン役には受難がつきものですが、美袋さんもまた大変な人のワトソンになったものだ.....。

短編自体はどれもオモシロク読ませていただきました。
甲乙つけがたいですが『小人闃ユ居為不善』がお気に入り。
KeyWord:メルカトル鮎 銘探偵
「そして君はTVの主人公だった。悲劇のヒーロー気取りで嬉々として演じていたんだよ」



『鴉』 麻耶雄嵩 幻冬社 1997/10 ♪:☆☆☆★
作品紹介 珂允(かいん)と襾鈴(あべる)
弟・襾鈴(あべる)の失踪と死の謎を追って、地図にない異郷の村に潜入した兄・珂允(かいん)。

襲いかかる鴉の大群。四つの祭りと薪能の儀式。蔵の奥の人形。錬金術。嫉妬と憎悪と偽善。 五行思想。足跡なき殺害現場。連続殺人。人殺しの手に現れるという奇妙な痣。 盲点を衝く大トリック。村を支配する大鏡の正体。再び襲う鴉。
そしてメルカトル鮎が導く、逆転と驚愕の大結末。

〜『鴉』ノベルズ版より〜
感想 兄弟
大鏡という存在を信じ、外界と閉ざされた村。 ありがちな設定かも知れませんが、好きです。

「カイン」と「アベル」の名前の時点で、兄弟がテーマか.....とちょっと凹んだんですが...
いざ読んで見ると、人の精神の暗い面やどろどろした部分が胸に染みました。
麻耶さんの著作は、全体の流れとは別に節々に共感する部分がありそれだけで好きになってしまいます。

「珂允」と「襾鈴」以外にも、「松虫」「蝉子」の姉妹。
.......そして「櫻花」「橘花」にも惹かれるものを感じました......

麻耶さんの作品に流れるテーマ『神』『奇跡』『血縁』『救い』...... 今回メルカトル鮎の過去にも多少ふれて、嫌いだった彼が多少は好きになれた......かな?
KeyWord:珂允 神話のカインは彷徨わなかった
「自分は安らぎを求めてはいるが、神様に救って貰おうとは考えていない。
 神というものはこちらから求めなければ、手を差し出すことはない。
 そもそも、いくら求めても差し伸べないことが多いというのに」
KeyWord:千本頭儀 西の小長
「君はなぜここに来たんだ。ただの彷徨人ではないだろう」
KeyWord:メルカトル鮎 ....銘探偵
「人の住むところに、理想郷などあり得ませんよ。例外なく」
KeyWord:菅原芹槻 西の長
「呑み込むものじゃない。信じるものなんだよ」

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