#ファイアー・スターター


『鳩笛草』 宮部みゆき 光源社 1995/3 ♪:☆☆☆★
作品紹介 短編三編を収録
『朽ちていくまで』『燔祭』『鳩笛草』の三篇
異能力をもった三人の女性の苦悩と想いを描いた作品です。
三篇全て面白いと思います、特に「燔祭」は、後に「クロスファイア(上・下)」に続きます。

『朽ちていくまで』
祖母の死によって、たまたま見つけたビデオに映し出される映像......幼い自分、故人となった両親。だが、そこで幼い自分が話す言葉は明らかに未来の予知だった。

『燔祭』
青木淳子、彼女は強力な発火能力者(ファイアースターター)だった。
「私は、装填された一丁の銃だから。 誰だって思う事、こんな力を持ってたら使ってみたくなる。  でも出来ればこの力、正しい意味で使いたい。だから貴方に協力したい....」
妹の復讐を誓う主人公の前に現れた彼女は...........

『鳩笛草』
人の心を読む事ができる私は、それをきっかけにして刑事になった。
だが、今その力が消えつつある....私は............
異能力に支えられて生きてきた彼女、その力が無くなると感じた時に彼女は。
感想 必読短編集
宮部さんは、こういった異能力者ものも多いのですが、どれも共通するテーマは 「力への依存」と「力故の苦悩」だと思います。その珠玉の短編集だと思います。
私はやはり『燔祭』が忘れられません。
KeyWord:麻生智子 未来予知能力者
「どうしてよ。どうして?あたしが望んだわけじゃないのに」
KeyWord:青木淳子 念動発火能力者(パイロキネシス)
「今までずっと、隠れてきた。
 私がうっかり怒ったり泣いたり、感情を高ぶらせたりすると、それが起こることがあったから。
 人と関わっちゃいけないと思ってきたの」
KeyWord:本田貴子 >感情読心能力者(エンパス)
「一度道具を使うことを覚えたら、もう素手では戦えないでしょ?それと同じよ。
 便利に使っていた能力をなくしたら、あたしはとてもやっていかれない。
 悲しいけど、あたし、そこまでの根性も能力もないのよ」



『クロス・ファイア』 宮部みゆき 光源社 1998/10 ♪:☆☆☆★★
作品紹介 「燔祭」の青木淳子、彼女のその後の物語.....
「私は、装填された一丁の銃だから」
 誰だって思う事、こんな力を持ってたら使ってみたくなる
 でも出来ればこの力、正しい意味で使いたい、だから貴方に協力したい」

「鳩笛草」内の短編「燔祭」の強力な発火能力者(ファイアースターター)青木淳子。
宮部みゆきさん自身が「この人はどうなるのか書いてみたかった...」という
彼女のその後の物語....

法で裁ききれないない悪を、自らの価値観と正義で裁いていた青木淳子。
その炎に焼かれれば、死体は炭化し、証拠を残さない。

男がリンチされる現場に出くわした彼女は、「突然、意味も無く襲撃され恋人を浚われた」 息絶えた男の最後の言葉に、恋人の救出と復讐を誓った時、彼女の運命は大きく流転しはじめる....

淳子の前に現れた謎の男達。
「力」の為に、自分一人の道を選んできた彼女が、自分以外の能力者に出会った時....

PS:宮部さんが、S・キング『ファイアー・スターター』を好きなのは超有名。
感想 念動発火能力者 -パイロキネシス-
淳子は自分なりに使命感を持っていたのだと思います。 どうして自分にこんな力があるのか.......だから、私は.......のような。 彼女自信の信じる正義の為とはいえ、人を殺しているのだから自分は幸せになってはいけない...... そんな気持ちも確かにあったのでしょう。 でも自分と同じ、似たような力を持つ人々に出会った時には、やはり一人きりではいられない..... 彼女は一人でいる時間が長すぎたのかも知れません.....哀しい話ですよね.....。

この物語の決定的な悲しさの原因となったのは「正義」...の相違だと思います。
といってもこの物語中の加害者は言語道断ですが....

@法の正義、では裁けない許せない悪を、 A青木淳子は自分なりに裁いて来ました。
淳子と共にレイプ殺害された妹の復讐をしたB一雄は、 その後も行動を続ける淳子とは疎遠になっています。 そしてC......この物語の大筋でも四つ.....

大罪を犯しながらも笑って暮らすような側にも恋人や家族があり、 事実、淳子は隠れている彼らを追う為に、その家族や恋人とも会話をしていますが、その決意は揺らいでいません。
そして確信を持った時に「燃やして」来たのですが.....
最終的な結論に、正義の中の利害も見え隠れしているように感じました。
感想(ネタバレ) ......
最初読んだ時には、かなり救いが無い物語.....という印象でした。
実際そういう部分もあるのですが.......本当に終盤まで淳子の「これから」を信じてましたから。
でも淳子を知る人、そして、後を継いで...という訳じゃないでしょうが、 続いていく人もいる...淳子はもういませんが、同じ世界感。 法で裁けない悪を裁く警察内部の秘密組織ガーディアンのその後と。 そして、淳子をお姉ちゃんと呼んでくれたあの娘をもう一度見てみたいです。
KeyWord:青木淳子 ファイアー・スターター
「私は、装填された一丁の銃だから、
 誰だって思う事、こんな力を持ってたら使ってみたくなる。
 でも出来ればこの力、正しい意味で使いたい、だから貴方に協力したい。」

「あたし、あの人を、連れて行かなくっちゃ」
KeyWord:伊藤信江 うん、なんか、だってそうじゃない
「あたしだって浅羽たちに殺されかけた時、知らない人に助けてもらって命拾いしたんだよ。
 だのに、困ってる人を放っておいてさ。それも浅羽のことで困ってる人をさ。
 そういうのを恩しらづっていうんじゃないの?」
KeyWord:衣笠巡査部長 下の名前忘れた...
「幸福というのは、いつだって点なんです、なかなか線にはならない。
 それは真実も同じですがね。」
KeyWord:倉田かおり See You Next?
「泣いていたのね」

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