宮部みゆきさん #02


『火車』 宮部みゆき 双葉社 1992/7 ♪:☆☆☆★★★
作品紹介 彼女は・・・
突如失踪した関根彰子という女性。
その婚約者に頼まれて彼女を探す事になった休職中の刑事。

しかし「彼女」は、自らの意思で失踪していたのだった......。
「彼女」はなぜ関根彰子を名乗っているのか?本当の関根彰子は今何をしているのか?

戸籍や履歴、全てにおいて嘘をついてまで、どんな親しい友人にも心から頼らずに、 たった一人で生きてきた「彼女」。本当の「彼女」とは?
徹底的に足取りを消した彼女を追っていくうちに判っていく、社会の少しの矛盾。 それと闘っている人達、そして彼女もそれと闘っていたのかも知れない。 現代社会を切る、宮部さんの現代ミステリーの傑作。
感想 ひのくるま
テンポの良さ、柔らかく切りこむ作風...宮部ミステリーの集大成って感じです。
昔の社会ならば諦めたり、現実を認識できたことが、かりそめの夢が見られる今の社会では、 少し弱く、誠実な人が傷をおってしまう.... 登場人物それぞれがなんだか心に引っかかる、再読して尚ラストで鳥肌が立ちました。
感想(ネタバレ) 新城喬子
序盤、現代のローン制度やクレジット制度について言及してる部分を読んでる時は そうでも無かったのですが、最後まで読み、尚且つ再読してこそ真価と深みを味わえる作品です。

初めに読んだ時は「ちょっと待ってよ!ここで終りなの!?だって...」 と戸惑いを感じたラストでしたが、今は断言できます、あれでいいのです。
新城喬子.....この物語は、彼女で始まり、 彼女を追い続けて、どんな時も彼女が見え隠れした。 だけど、実際には彼女は一度も登場しない、満足なセリフすらも無い。
最後の最後、彼女に触れた瞬間........そこで終るからこそ、この物語が印象深いと思います。 彼女が何を語るのか、どういう反応をするのか.....

蛇足ですが、謎を残して終り、評価が大きい作品の代表作に 「柔らかな頬(桐野夏生)」がありますが、こっちは消化不良です(笑)
KeyWord:関根彰子 「彼女」と彰子
「あたし、幸せになりたかっただけなのに」
KeyWord:本田郁美 自分が思ってるよりも強い人
「たぶん彼女、自分に負けてる仲間を探してたんだと思うな」
KeyWord:本間俊介 「彼女」を探して...
「俺はなぜ新城喬子を探しているのだろう?ただの習性だろうか。
 行きがかり上とはいえ、和也に同情しているからだろうか。好奇心だろうか。

   そう・・・強いていうなら、最後の説かもしれない。好奇心だ。会ってみたいのだ。
 新城喬子という人間に。そして聞いてみたいのだ、彼女の声を。
 なぜこんなことをしたのだ、と尋ねたときの、彼女の答えを...。」
KeyWord:宮城冨見江 都会で生きる人を、蛇に例えて...
「蛇が脱皮するの、どうしてだか知ってます?
 皮を脱いでいくでしょ、あれ、命懸けなんですってね。すごいエネルギーが要るんでしょう。
 それでもそんなことやってる。どうしてだかわかります?

 一生懸命、何度も何度も脱皮しているうちに、
 いつかは足が生えてくるって信じてるからなんですってさ。今度こそ、今度こそ、ってね。
 べつにいいじゃないのね、足なんか生えてこなくてもさ、蛇なんだからさ。
 立派に蛇なんだから。
 だけど、蛇は思ってるの。足があるほうがいい。足があるほうが絶対幸せだって.....」



『震える岩』 宮部みゆき / ♪:
作品紹介
感想
KeyWord:
「」



『地下街の雨』 宮部みゆき 集英社 1994/4 ♪:☆☆
作品紹介 短編7篇
『地下街の雨』・・・地下街で感じた、地上でふる雨と差し伸べられる傘。
『決して見えない』・・・初老の男に声をかけられた。彼は「運が悪い」というのだが...。
『不文律』・・・無理心中した一家。周囲の人の言葉からその真相を探れば。
『混線』・・・悪戯電話をする男に聴かせる話。
『勝ち逃げ』・・・故人となった伯母の人生の秘密に触れる一通の手紙。
『ムクロバラ』・・・運のない男が叫ぶ連続殺人犯「ムクロバラ」という魔。
『さよなら、キリハラさん』・・・家の中から音が消えた。その意外な真相。
感想 ネクタイは武器(謎)
表題作『地下街の雨』や『勝ち逃げ』などが好みです。
『不文律』も面白い。
KeyWord:デカ長 正月が忙しすぎるからだ
「世の中には、神も仏も確かにいる。
 だが、あんたが必要としているときには、みなさん、必ず休暇をとっておられる」



『模倣犯』 宮部みゆき 小学館 2001/3 ♪:☆☆☆★★
作品紹介 The COPY CAT
公園で発見された、切断された人間の手首。
それは、世間を震撼させる恐るべき犯罪・・・かつてない連続殺人事件の幕開けにすらすぎなかったー。
感想 相対
個人的には『火車』以来の宮部さんの社会派ミステリ(何だそりゃとも毎回思いますが)の傑作だと思います。 ちなみに、私は『理由』はあまし好きくないので。

ただ、社会派ミステリにありがちなことなのかも知れませんが・・・読んでいて、凹みます。
少なくとも私は凹みました。
面白いですし。読んでいて続きが気になりますし。でも・・・凹みます。

「これは、こうなんだよ」「だって、こうなんじゃない」「これは、こうなんじゃない」って、色々な思いが凄い伝わってきます。
それは、そんなに珍しい意見でも、特異なことでもないのかも知れませんが、普段は決して意識しないし、 してはいないと思います・・・だって、してはいられないでしょう?
そういったものが、あるのだとはなんとなく知っている、ような気がしている。 でも普段はそんなことは私には関係ない、と思ってる・・・それを前面に突き出された時に感じる、 戸惑いみたいなものを感じました。

多くの人物が登場し、関わっている本作品ですが、大多数は「第三者」としての立場しょう。
彼らは涙を流し、同情し、時に自らの利害を越えて行動をしますが、結局はそれは・・・。

どちらかから見て、明かに間違ったことでも、相対的にみれば、決してどちてともいえない、いいずらい部分も 確かにあるのではないか、でも同時にそうだとはいえないのではないか?
それは、善悪や道徳観念を超越した真実・・・理念や想像が抱える矛盾なのでしょうが。

・・・事件そのものよりも、塚田真一という人間がキニナッテ仕方ない物語でした。

PS:社会派ミステリ、読んだ後に胃にもたれるような感覚を受けますが(そうでないのもあります)が、 『模倣犯』は、お腹一杯のもたれです。上手く消化できませんでした。
なんか、やるせないような、どんよりとした感覚を読後に感じます。面白いのですが・・・この場合の 面白いってのは、また普段使う面白いとは違った意味だとも思うのですが。
KeyWord:ピース CAT
「本当の悪は、こういうものなんだ。理由なんかない」
KeyWord:『模倣』 売れないライター
「人間て、そんなに独創的な生き物じゃないよ。みーんな何かを真似っこちして生きているんだよ」
KeyWord:水野久美 もう一人の、手首の第一発見者
「それは間違いよ」
「今、塚田君が考えていること、間違いよ」



『』 宮部みゆき / ♪:
作品紹介
感想
KeyWord:
「」



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