『瞬間移動死体』 | 西澤保彦 | 講談社 | 1997/4 | ♪:☆☆☆★ |
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作品紹介 | 瞬間移動したい | |||
何よりも面倒なことが嫌いで、楽をしたい。 恋愛さえも疎ましいと思っていた私が、屈折と受取られながらも愛した妻に殺意を抱く・・・ 面倒なことは嫌いだが、殺人なんて私には簡単なことだ。何故ならば、 私は世間の人々がいう「テレポーテーション」が可能なのだから。この能力がとんでもない欠陥ばかりで、 いわゆる人生でいう「楽」をする為にはあまり役にたたない能力だったのだけど、人を殺すとなれば、 鉄壁のアリバイを築ける筈、だろう。 | ||||
感想 | そこまで刹那に強く「瞬間移動したい」と思ったことないようで | |||
犯人は・・・実はバレバレ。西澤さんの作品を読んだのはこれが始めてで、他にも
『ナイフが街に降ってくる』なんかを読んだのですが、犯人?という意味でならば、
中盤から理屈抜きでなんとなく判りますし、理屈もつけられると思います。推理ではなく、理屈ですが。 この設定、そして人物の入りやすさが好きかな。どーも数作読んだ限りでは、男が情けなくて女が強い物語が多いような気がするのですが、 この作品なんてその典型かも。いや、全くいい傾向ですね。 PS:本人は「欠陥だらけ」なんていってますが、使いようによっては物凄い能力。 作品読みながらも「いや、ああ使えば金銭的にも・・・」「・・・という事もある」「・・・にも」 などと妄想・邪推ワールド。ふと気がつくのは、作品中の主人公の善良さ。善良といっていいのかは判らないけど、敢えて。 作家にはなれないけども、この人って、とても恵まれているのでは? でも本人が意識しない限りは幸福ってのは感じられないし、持てる能力も意味ないんだなぁ、などとも思いました。 星里もちるさんの『危険がウォーキング』をまた読みたくもなった、あまし関係ないけど。 |
『複製症候群』 | 西澤保彦 | 講談社 | 1997/7 | ♪:☆☆☆★ |
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作品紹介 | CLONE SYNDROME | |||
宇宙から降ってきた(笑)謎の物体、それは円形状の壁のようなもので、通り過ぎることなど出来るのですが、触れた瞬間、自分のコピーを生み出してしまうという
困る・・・というか面倒な特性を持っていた。 世界中に何万と降り注いだソレは「ストロー」と呼ばれる。 その一つに巻きこまれた高校生達と教師一人。そして連綿と築かれるように顕れる死体。 特殊な空間で浮き彫りにされる其々の想いとは? | ||||
感想 | 浮き彫りにしないでもいいとも想う | |||
SFじゃありません。設定はSFですが、ミステリ。つーかドラマ(ドラマってどんな意味だかよく知らないですが) 笑劇的な設定だとは想うのですが、心理的にはクライシス。 限定空間で、推理?・・・私はしていないのですが、パーツどさどさ散りばめ状態なんで、展開は読めます。 でも、これって、いい意味で納得ということです。 実際、読んでる時は其処まで(ながらで読めば別でしょうが、一気読みしました)あまり意識しないし、 しても心の中に閉まっておきます。登場人物が悩んでいれ素直に悩む、みたいな。 終わり方も納得ですが、よくある感想でエピソードが・・・という奴です。 エピソードは勝手に妄想・摸索するべきだと想うのですが、なんとなく。 | ||||
KeyWord:網野砂男 | てきとうにみんなではんだん | |||
「何をもってして、その人が寿命をまっとうしたと判断するんだね?」 |
『ナイフが町に降ってくる』 | 西澤保彦 | 祥伝社 | 1998/11 | ♪:☆☆☆★ |
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作品紹介 | 迷惑な男と、さらに迷惑な女 | |||
「何かに疑問を抱くと、納得できるまで時を止めてしまう」という、本人以外には迷惑にならなそうな能力も、 「近場にいる人間を一人、巻き込んでしまう」ので、本人以外にも多少迷惑だった。 目の前にいた人間の胸に、何処からとも泣く屹立したナイフ。 くだんの時間を止めてしまう困る人物・末統一郎は、今回、巻きこまれた少女・真名に、 巻きこんでしまったことを詫びつつも、あまり悪いなどとは生来か境遇による環境なのか思っていなかったが、 町で起こっている連続殺傷事件と、真名のせいか、事件に納得するどころの問題でなくなっていく。 | ||||
感想 | 「あたしみたいに、性格の悪い女、実はけっこう好みなんでしょ。え?」 | |||
ミステリってジャンルは幅広く「殺人」があれば、なんでもミステリ・・・ってのは違うと思っていて、
それならば、戦争モノとか、歴史モノとか、色んなものがミステリで。 なんつーか「ミステリ=謎」みたいな解釈で、謎解きは勿論、謎を掲げるものがあれば何でもミステリ とくくっていいとも思っています。ミステリーというと違うけど「ミステリ」ならば。なんとなくですが。 実行犯は証拠だけみれば早々と割れますが、その豪快な・・・からして、なんつーか「3人目」をずっと想定していました。 最初から「二人」といっているのに。 それは、末さんに対して中盤から抱く「気づけよ・・・」といった、感覚にも似てるのかも知れませんのですが。 ズボンをおろし、街のアーケードで蹂躙を重ねる姿が印象的過ぎて、却ってそれで文章的にカモフラ?したみたいに感じますけど、 きちんと細部に匂わすのはありますし。 唯一つだけいえば、性格が悪いから好きなのではなく、善悪拠所ないものなのでは、特に本当は19歳なのに 30歳とかいわれる(つーか30歳ですが)人が思うところには。 | ||||
KeyWord: | ||||
「謎の解明というのは、この場合、なんていうのかな、言葉の綾であってさ。事実を究明するのが問題ではないんだ。 僕が自分なりに納得できれば、それでいいわけであって」 「な、なんか凄くいい加減・・・」 「極端な言い方をすれば、出された答えが真実でなくてもいんだ。 たとえ嘘であっても僕が納得してしまえば、それは解明されたことを意味する。 逆に、たとえ客観的にそちらが真実であっても、僕が納得しなければ解放されない。時間はずっと停止したままで・・・」 「なんて唯我独尊的なシステムなの。あんたって、自分の考えが世界で一番正しいと信じてるわけ。 そんなつもりはなくても、得手勝手な仕組みであることに、違いはないわ」 「これは単なる体質なんだよ。それ以上でも、それ以下でもない。 お酒を飲んだら顔が赤くなるとか、腐ったものを食べると下痢をするとか、そういうい現象と同じレベルの摂理なんだ。 思想的なドグマなんて次元で論ずるべき問題じゃない」 |
『黄金色の祈り』 | 西澤保彦 | 講談社 | 1999/3 | ♪:☆☆☆★★ |
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作品紹介 | きんいろのいのり | |||
自分とは何だったのだろう? 自分は何。 今は曲がりなくも・・・そうは言えないかも知れないが生きている自分。 .....誰だって、そんなことは思う。言葉にはしない。する必要もないまでも。 ワタシも、ずっとそんな事を願っていたような。今更ながら、そう想う。 憧れて焦がれて、否定して嫌って。 その時浮かんだ、何か心に引っかかる、針のようなものを、ワタシはもう覚えていない・・。 | ||||
感想 | ||||
これって・・・西澤さんの?でも、多いに脚色はしてるようにも想いますがですけけど。FANなんだ多少エコヒイキで。 ただ、一つの意味でいうなら、これって読者に対するラブ・レター。 悪い言い方をすれば懺悔録なのかも知れませんが、これってふぃくしょんです。 そもそも、この物語で悪人は・・・自分にとって、必死だった時も、そうでなかった時も、 その混濁を含めて、全て自分なんだよ・・・と、一応は生活に不自由しなくなった、 甘い考え満載なんですが。結局わかることとかって少ないから。 だから、だるい時こそ、人は永く生き続けることを想うべきだと想わせる一作。 | ||||
KeyWord:ワタシも、かつては少女A | やめてください | |||
「そうよ。ただの身勝手よ。だから彼は、あなたのようにはなれなかった」 |
『異邦人 - fusion』 | 西澤保彦 | 集英社 | 2001/1 | ♪:☆☆☆★ |
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作品紹介 | あなたの、重ねましょう | |||
恒に悼まれない気持ちでいた気がする・・・郷里に帰る途中、鏡で見上げた私の顔は、
以前に私が知っていたような、既視感を与えた。ワタシの顔なのに。 何十年も前の事だけども、血縁が無い私の姉は、当時は誰にも理解などされない同性愛者だった。故に 誰にも依存せずに生き様とする姿は眩しく、今も瞳の奥に焼きついている。 ・・・その耀きを奪ったのは自分なのだろうか? 父が死んだ。殺された。 それだけではなく、家の為に。もしかしたら、 血が繋がらない姉は、私の為にに家に帰ってきたのではないだろうか、 ずっと自分で築いてきたもの全てを棄て。・・・それを罪とは思わないけども、肉欲さえ覚えていたのに。 刻を越えて、ワタシは、かつて父が死に、姉の不遇の人生を作った日に、時を「滑りこんだ」でいた。 | ||||
感想 | ||||
ジェンダーネタかな・・・。 章が「夢のつづき」とかになってるんで、なんだか、ホントに陽だまりで夢をみているような・・・ 都合のよさ。日溜り。 影の心地よさがない、ひだまりにいたら、飽きると思うような感覚を覚えるのですが。 |
『』 | 西澤保彦 | / | ♪: | |
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感想 | ||||
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