花村萬月さん


『笑う山崎』 花村萬月 1994/3 祥伝社 ♪:☆☆☆★★
作品紹介 連作短編八篇
「山崎に逆らったら生きていけない」
.....都心から少し離れた、繁華街の闇社会を牛耳る男、山崎。
ぱっと目は優男ながらも、その仮面のような表情は人を恐怖させ、 時に圧倒しながらも、その不思議な魅力に従う人間も多い。

矛盾しているようで何か一貫性を感じさせる男でもある山崎。
サディスティックな一面に、時折浮かぶ別の一面。
暴力の世界で生きる男、山崎という不思議な人間。
『笑う山崎』・・・マリーとの出会い。まず鼻骨を砕くようなパンチをお見舞いする。
『山崎の憂鬱』・・・一つの死闘と、血の繋がらない娘。
『山崎の帰郷』・・・山崎を襲う刺客、そして楯。
『炙られる山崎』・・・取り調べ、珍しく饒舌な山崎。そして報復。
『走る山崎』・・・山崎の影に怯える男。
『山崎の情け』・・・死を覚悟した者、それに与えるべき情け。
『山崎の依存』・・・一つの解答と難題。
『嘯く山崎』・・・山崎のうたううた。
感想 笑えないさい
浅田次郎さんや、東直己さん以外で、あまりこういった作品を読む機会がなかったのですが なんとなく読みました。
某雑誌に連載されている(2001年5月現在)『犬・犬・犬(ドッグ・ドッグ・ドッグ)』 という漫画が気になり、原作が花村萬月さんだった為ですが。 花村さんの作品の中でも評価が高いような気がするこの作品をば。

・・・感想は.....ありきたりですが「歪んだ愛」。同時に真摯な愛でもあるのですが。
山崎はサディスッテクで、残酷な男です。はっきりいって悪人です。 インテリ?だけに奸知に長け、同時にそれを行使することに何の躊躇いもみせない。
彼の中では「ボーダー」が綺麗に整理されていて、まるで一つの プログラムがあるかのような......でも無いような気もするのですが。

まあ、一つ強く思うことは、山崎という男は「真の暴力」にも屈しない....... そもそもそういう概念を持たない。 持っていたが失くしたか、はじめから持っていなかったか。
私は「失くした」方だと思うのですが。
感想(ネタバレ) 観察者
あまし関係ないようで気になることが。一つ。
山崎には生殖能力が無いようですね。
なんでそれを自分で知ってるのかは知りませんが、おそらく実体験から 不審に思って調べたのでは無いのでしょうか。
この辺りを大学中退あたりと勝手に思考して、その辺のエピソードなんて 読みたい感じもします。
KeyWord:『山崎』 たぶん、何かをさがしている。悪人だが。
「意志、だ。いいことを教えてやろう。人間に必要なものは、意志だけなんだ」

「存在するすべてのものに価値がある。それは俺も認める」

「ああいった奴らを見ると、心の底から殺意を覚える。
 人と接するときに必要なものは羞恥心。それだけだ。
 .....見ず知らずの他人に、自分の幸せを平然と誇るような恥知らずに欠けている心だ」

「いま、俺は他人に依存することを覚えた。それらは虚構だ。
 擬似家族的な関係といったところだ。
 いいか。河原でいちゃつく男と女は、自分らの嘘に気づいていない。
  しかし、俺と、俺の擬似家族たちは、自分たちが虚構であることを心の底で自覚している。
 だから、だからこそ、最後まで嘘をつきとおす。嘘を全うする。嘘を真実であると信じる。
  俺たちは、じつは宗教団体なのさ。
   だから、嘘に命をかける。嘘の殉教者にさえなる。
......そう、嘘に命をかけている。
 川辺で囁く者たちは、自らの虚構に気づかぬばかりか、嘘をついているという自覚もない」



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