『螺旋階段のアリス』 | 加納朋子 | 文藝春秋社 | 2000/12 | ♪:☆☆☆★ | 作品紹介 | 連作短編7篇 |
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リストラ同然に会社を追い出された男が、人生の晩年に選んだ道は、私立探偵を開業すること。 子供の頃から憧れていた探偵稼業。 いざ始めてはみたものの、客足はさっぱりで一人うたた寝をする毎日。 ある日....ふと、うたた寝から目を覚ました彼の目に、非常階段に立つ 桜色のワンピースを着た少女が映る。猫を追って迷い込んだという彼女は、探偵助手を名乗り出る......。 『螺旋階段のアリス』・・・安梨沙との出会いと、始めての依頼。 『裏窓のアリス』・・・浮気を”していない”という調査の裏に隠された、ホントの事。 『中庭のアリス』・・・失踪したという犬を捜す依頼の影には..... 『地下室のアリス』・・・会社の地下書庫でなる奇妙な電話。 『最上階のアリス』・・・旧友からの依頼と夫婦という関係。 『子供部屋のアリス』・・・託児依頼も受ける、仁木探偵事務所。 『アリスのいない部屋』・・・”一人の女の子”という夢。 | 感想 | 市村安梨沙 | ||
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』
が好きな人....アリスフリークならば、よりいっそう楽しめそうな、連作短編です。
といってもアリスとは全く違いますが。 仁木と安梨沙がアリスフリークなので、事件(なのかな)をアリスで例えることが多いので。 私はあんまり『アリス』を正確に覚えていない(ドラマ版のが印象強いし、今からアリスを借りるのも、 買って読みかえるのも照れくさいし...)んですが、そんなにつっこんだ事は書いてないので、 すんなり読めます。 事件?を解決しながら、安梨沙の持つ悩みと、仁木順平が持つ悩み。 少しずつそれに触れていって、最後にきちんとまとまってる辺りが好感度高いです。 .....贅沢をいえば、続編を望む。 蛇足なんですが、この本の読後に「アリスか.....最近やたら目につくなぁ..... そいえば、物語の中でアリスはどうやって家に帰たっけな?.....あ.....」・・・・ 「それはオズの魔法使いだ.....」....記憶ってあてにならないです(笑) またNHKでアリス再放送して欲しいです。あれは面白いと思う。 極端な話、当然ながらアリスは外人なんで演じる方は常にブロンド少女なんですが、 ある意味、日本人で演じて、原作そのままでもいいと思ったりもします。 『アリス』というブランドはそういうものだとも思うけど......誰かやってくれませんかね。 私的には日本人的なありすイメージは、若い日の(今も若いけど)栗山千明、 最近だと黒川芽似。ショートカットだとありすじゃない(なんとなく)んで、短髪は除外。 | 感想(ネタバレ) | アリス・リデル | ||
シャイでロマンチストな若者”だった”。そして今も本質的に変わらない仁木順平。 夢をみていたから、目覚めようと思った市村安梨沙。 家族や組織に縛れたくない....そう思った二人が、螺旋階段をかいして出会う.......ここに痺れました。 申し訳ないですが、シチュエーション・マニアなんで(汗) 螺旋は双子のイメージを彷彿させるし(DNAは二重螺旋ではなく、双子螺旋というべきだと思う) 似たもの同士が巡り合うにはまさに絶好かも。 ミステリ的には、正直たいしたこと書いてないような気もするし、 ストーリー自体もそれぞれの物語だけだと普通の短編かも。 それでも全体を読んで心地いい....最初から気になっていた「順平の家庭ってどうなってるの?」 「安梨沙って何者?」などが、少しずつ説明されていく構成が勝利だと思います。 二つの意志を最後にまとめた(まとめたという言い方はオカシイかも)鞠子さん の手腕も..... ......下世話なことで、本来ここに書く事もためらわれるのですが、私は下世話な人間なんで 「魔法にかけられたような夜」...が気になります。物語の流れからして、個人的には否定したいのですが、 やはりそうなのでしょうか?時間で解ける便利な魔法.....表現的にどうしても.......... かつての「アリス」、鞠子さんは、実はそこまで知っていたのかも。 仮にそれこそ茉莉花さんが全てを認可してくれていたとしても......それは「アリス」ではない。 女性からみた「アリス」。幻影でも空想でもない、実在のアリス....そんな事を考えさせられる純朴?な物語。 | KeyWord:仁木順平 | 性格は選べると思う、あとは何気 | ||
「人間は、なりたいものになることが出来る。きっとなれる。途中で諦めたりしなければ」 「探偵は極力寡黙であるべきだ。 ひらひらの美少女を相手に、ふかふかの猫について談笑するなどもってのほか。 ......そうじゃないか」 | KeyWord:市村安梨沙 | んなこたあない | ||
「箱は開けてみなきゃ、中身はわからない。 電話は出てみなきゃ、相手はわからない......少なくとも旧式の電話はね。 人の心だってそうよ。こうして.....ノックしてみないと、わからないの」 「私、時々思うんですけど。 男の人の知識って、わざわざ人生をつまらなくしてばかりいるんじゃないかしらって。 この可愛い笑顔が、この嬉しそうな顔が、よりによって神経のけいれんですって。 誰がそんなことを言ったの?きっと男の人ね」 |